埼玉から群馬へ通じる国道17号のバイパスは、途中で2ルートに分かれ、JR高崎線から離れたルートの改良が進んでいます。しかし、高崎線沿いの地区も変貌しつつあります。
田んぼの中に巨大構造物がドーン、ドーン… 高崎線沿い
埼玉県北部、本庄市や上里町の利根川に近い田園地帯に、巨大なコンクリート構造物がポツポツとできてきています。中には、道路を覆うトンネル(函渠)だけがポツンと立ち、異様を放っている箇所もあります。
田園地帯のど真ん中にできた函渠(乗りものニュース編集部撮影)。
これらは、国道17号バイパス「本庄道路」の橋台や擁壁などの構造物です。
まだ確保できた道路用地に柵をしているところが大部分で、道路の全貌を追える段階にはありませんが、交差する道路や河川をまたぐ土台となる構造物を先に作っているというわけです。
「本庄道路」は群馬県側から先に一部開通しています。2022年には、築およそ90年を経た県境の「神流川(かんながわ)橋」が架け替えられましたが、これは「本庄道路」の一部で、現在は埼玉県側でプツリと途切れ、国道17号現道へ切り回されています。
旧・神流川橋は群馬側が切断され、神流川のなかで老朽化した姿をさらしています。新たな神流川橋は「本庄道路」の暫定2車線区間という位置づけであり、今後、将来の下り線となる橋を建設する際には旧橋が支障するため、撤去される予定です。
そして、神流川橋から埼玉側も、少しずつ建設が進んでいます。構造物ができ始めているのは、国道462号までのI期区間およそ5.6kmです。
そこから先のII期区間およそ6.1kmは、2022年に事業化されたばかりで、まだ具体的な構造物はできていません。II期区間は深谷市内で既存の国道17号「深谷バイパス」に接続する見込みです。
「群馬」が優先された国道17号バイパス
この「本庄道路」が事業化されるまでには紆余曲折がありました。というのも、東京から通じる国道17号バイパス計画のなかで、どうしても“優先度が低い”区間だったからです。
国道17号といえばJR高崎線沿いの主要街道というイメージがありますが、バイパスのルートは熊谷市内で2手に分かれます。一つが、そのまま高崎線沿いに深谷市までを結ぶ「深谷バイパス」、もうひとつが、北へ分岐して高崎線沿いから離れ、群馬県伊勢崎市・前橋市・渋川市までを最短距離で結ぶ「上武道路」ルートです。
この上武道路は地域高規格道路「熊谷渋川連絡道路」に位置付けられ、将来的には(東京の首都高から)自動車専用道を群馬まで延ばす想定で、かなり広い用地をもってつくられています。
一方の高崎線沿いの深谷バイパス以西は、もともとバイパス計画がなく、上武道路の開通後は国道17号を県道に、という案もあったそう。本庄市の吉田信解市長がウェブサイトでこう説明しています。
「(県道移管を)阻止しようと、当時の市では職員が交通実態を調べ、深谷バイパスを通るトラックの比率や車両の台数は上武道路と変わらない、という調査結果をもって、深谷バイパス、本庄市の国道17号の現道また建設予定の本庄道路は、長野方面と首都圏を結ぶ国土形成上重要な役割があると県へ報告しました」
結果として国道17号の県道移管は回避され、2003年に本庄道路のI期区間は事業化されたものの、II期区間の事業化は2022年に。東京から群馬に至る国道17号バイパス群のなかでも最後の事業化となりました。
2022年に開通した新・神流川橋。本庄道路の一部だ(乗りものニュース編集部撮影)。
本庄道路に並行する国道17号の現道は、2車線かつ市街地で信号も多く、通過交通とロードサイド店を利用する生活交通などで埼玉県平均の1.4倍の交通が集中し、慢性的な渋滞が発生しているといいます。
歴史的経緯で“後回し”にされた高崎線沿いの国道17号にも、ようやくバイパスがその姿を現しつつあります。