イタリアのピアッジョ・エアロスペースでは、ユニークな翼構成とエンジン配置を持つターボプロップ機「アヴァンティ」シリーズを製造しています。このようなデザインを採用したメリットは、何なのでしょうか。
騒音低減の効果も?
2024年7月22日より、イギリスで世界最大の航空ショーのひとつとされる「ファンボロー航空ショー」が開催されました。前回の同ショーで異彩を放った航空機のひとつが、イタリアのピアッジョ・エアロスペースが製造するターボプロップ機、P.180「アヴァンティ(Avanti)」シリーズの最新派生型「エボ(EVO)」です。この機体は、通常の民間機とは大きく異なるルックスが特徴です。なぜこのようなデザインなのでしょうか。
P.180「アヴァンティ」(画像:Piaggio Aerospace)。
一般的なプロペラ推進の「ターボプロップ機」と「アヴァンティ」の大きな違いは翼構成とエンジンの配置です。、「アヴァンティ」シリーズ自体は1986年に初飛行していますが、このデザインは、前回展示された第3世代機、「アヴァンティ・エボ」に至るまで大幅な変更はありません。
通常、このクラスの飛行機は胴体中央部に主翼、最後部に水平・垂直尾翼を備え、エンジンはプロペラが機首側に配置されているのが一般的です。対して「アヴァンティ」は、胴体最前部に「カナード」とよばれる先翼、胴体やや後部に主翼、最後部に水平・垂直尾翼といった3対の翼配置を取ります。そして2基のエンジンは「プッシャー式」とよばれる、プロペラを後方へ向けて備えるスタイルのものが採用されています。
公式カタログによると「アヴァンティ」シリーズは、こういった独自設計により機体の抵抗を減らし、飛行効率を向上させることができるほか、プッシャー式エンジンの採用で、一般的なデザインの飛行機よりもプロペラと客室の距離を稼げるため、2割ほど客室内の騒音を抑えることができるとしています。
とくに「アヴァンティ・エボ」は、高速性を最大の特長としており、その速度はターボプロップ機としては最高クラスの745km/h(402ノット)にもなるそうです。
なお、ピアッジョ・エアロスペースは、今回のファンボロー航空ショーでの「アヴァンティ・エボ」展示について明らかにしていませんが、2024年5月に実施されたヨーロッパ最大というビジネス機の見本市「EBACE」では、同型機の救急救命仕様機を展示していました。