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高規格道路とド並行になった「特急」勝ち目は…意外とある!? 今年で“昇格”30年 県都と県都を結ぶ

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準急「富士川」として運行開始

 静岡~甲府間を1日7往復する特急「ふじかわ」。富士川をさかのぼる身延線の特急列車として長い歴史を持ちますが、2021(令和3)年、身延線に並行して高規格道路「中部横断道」の静岡・山梨区間が全通しています。「ふじかわ」の現状を探るべく、実際に乗車してみました。

Large figure1 gallery2特急「ふじかわ」(安藤昌季撮影)

 「ふじかわ」の始まりは、1964(昭和39)年3月に富士~甲府間で運行を開始した準急「富士川」でした。同年10月の東海道新幹線開業に合わせて、1往復が静岡~甲府間の運行となっています。

 当時、静岡~甲府間の所要時間は2時間30分~2時間40分程度、車両は80系電車4両編成でした。身延線のトンネルに対応するためモハ80形300番台を種車とした低屋根改造が行われ、モハ80形800番台が登場しています。

 1966(昭和41)年に「100km以上走る準急は急行格上げ」となり、静岡発着は急行「富士川」、富士発着は準急「白糸」に変わります。この時、甲府行きは急行「富士川」より準急「白糸」の方が停車駅が2駅少なく、所要時間も短いという逆転現象が起こっています。

 1968(昭和43)年、「白糸」は急行「富士川」に統合され、静岡~甲府間は2往復に。翌年5両編成に増強され、80系最後の急行列車として話題となりました。

 1972(昭和47)年、165系電車が投入され、指定席も設定。10月から5往復に増え、1往復は三島発着となりました。この時、新宿~身延間に臨時急行「みのぶ」も設定され(1986〈昭和61〉年まで)、身延線優等列車は一気に充実します。

 なお、165系投入時点で静岡~甲府間の所要時間は2時間30分~2時間49分であり、準急時代とほぼ同じでした。これは身延線が峠越えや急カーブの多い路線で、速度向上に限界があったからです。

373系を投入し、スピードアップ

 1995(平成7)年には373系電車が投入され、急行「富士川」から特急「ふじかわ」に変わり、定期6往復・臨時1往復に増発。従来の急行「富士川1号」は静岡~甲府間2時間26分でしたが、ダイヤ改正後の特急「ふじかわ1号」は2時間12分に。さらに最速の「ふじかわ2号」は、甲府6時32分発・静岡8時31分着で初めて同区間で2時間を切り、表定速度も初めて50km/h台を超えて、61.7km/hに到達します。

 なお、現行の「ふじかわ2号」は甲府6時20分発・静岡8時42分着(2時間22分)です。これは鰍沢口、甲斐岩間、内船、清水に停車するようになったためです。

 身延線では、50km以内で630円(現行660円)、さらに2005(平成17)年から30km以内で310円(現行330円)の自由席特急料金が設定されており、短距離でも気軽に特急を利用できます。

 ダイヤの面では、1998(平成10)年に定期7往復化、2006(平成18)年に停車駅統一が行われ、現在の静岡~甲府間は2時間14~24分です。

 なお、中部横断道も走る静岡-甲府・竜王間の高速バスは、静岡駅~甲府駅間を1時間55分で結び、運賃も「ふじかわ」より2000円ほど安い2600円となっています。ただし土休日のみの運転で1日2往復です。JR東海は乗車1日前までに購入すると安くなる「ふじかわ早特きっぷ」(同じ区間で3470円)で対抗しています。

まずまずの乗車率で出発

 2025年8月の平日に甲府8時45分発の「ふじかわ4号」に乗車しました。甲府では「身延線ではSuica、PASMOが使えない」ことが案内されています。ここまでPASMOで来た筆者(安藤昌季:乗りものライター)は、いったん改札を出て、切符を買い直しました。朝の8時台でも甲府駅は駅弁を販売しており、2時間17分の道中に備えて購入しました。

「ふじかわ4号」は、新宿発の中央本線特急「あずさ1号」と接続します。10人程度が特急から乗り替えましたが、おそらく甲府駅周辺の利用客が大半なのだと思います。

 乗客は1号車指定席が14人、2号車自由席が23人、3号車自由席が18人で計55人でした。なお、2・3号車も車端部のセミコンパートメントは指定席で、甲府出発直前で3人、富士宮出発時で7人の利用客がいました。

 8時50分、最初の停車駅である南甲府に到着。5人乗車します。8時58分、東花輪に到着。ここは中央市の中心駅で全特急が停車しますが、快速・準急時代は通過していました。3人が下車し、2人が乗車します。

 甲府起点で、次の市川大門までは特急料金の安い30km以内だからか、区間利用も見られます。車掌が巡回し「無人駅で降りる場合は、切符を回収します」と声をかけていました。

 車窓は進行方向右側(西側)の方が、総じてきれいです。ただし天気が良い日に富士山を見たいなら、左側(東側)の方が良さそうです(それほど見える区間はありません)。

 中国風の駅舎がある市川大門に9時6分着。9人が下車し、2人が乗車します。急行時代は隣の市川本町に停車していましたが、特急化の時点で新駅舎となった当駅に変わりました。9時10分、隣駅の鰍沢口に連続停車。乗降はなし。9時17分着の甲斐岩間で1人下車。甲斐常盤で列車交換し、9時27分着の下部温泉で2人乗車。山深い区間を走り、景色に変化があって退屈しません。

ワイドビューの良さを堪能

 9時36分、身延に到着。3分間の停車で4人下車、2人乗車しました。列車交換した甲府行きの「ふじかわ1号」は乗車率40%ほどでした。9時53分、内船着。乗車1人でした。

 やがて車窓では富士川が寄り添うようになります。窓の大きいワイドビュー車両から眺める景色は雄大で、川を望む列車にしてはかなり上位の部類に入ります。トロッコ列車が似合いそうです。ただ、当日の富士山は雲がかかり、残念ながら見えませんでした。

 富士宮が近付くと建物が増えます。10時23分、富士宮着。30人ほどが乗車し、3両編成での人数を数えると77人でした。甲府出発時より増えています。富士まで30km以内、静岡まで50km以内で、特急利用が促進されているのでしょう。

 10時34分富士着。3分停車し、2人乗車、16人下車しました。ここで進行方向が変わります。

 富士~静岡間は乗車時間25分、最高速度110km/hで、表定速度は81.6km/hに達します。身延線の最高速度は85km/hで、制限速度45km/hの区間もあるなど、ゆっくりした走りでしたが、初めて特急らしい高速走行です。モーター音も高まります。

 速達性では高速道路に及びませんが、特急「ふじかわ」は区間利用客の需要に応えることで、健闘しているように感じられました。

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