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世界に8機だけの激レア機「KC-767」日伊が小松で初邂逅! アメリカはなぜ採用せず? きな臭い背景も

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世界でも日本とイタリアしか導入していない激レア軍用機が、KC-767空中給油機です。アメリカ空軍も採用するだろうと目されていたものの、結果的にはナシになったとか。そんな希少機が日伊共同訓練で翼を並べるかもしれません。

初来日のイタリア空中給油機 実はレアもの

 2023年8月4日に航空自衛隊と共同訓練を行うために来日したイタリア空軍機。その中核となるのは最新鋭戦闘機F-35A「ライトニングII」ですが、その他の支援機でも注目すべき機体があります。ひとつが、KC-767空中給油・輸送機です。

 この機体は、ベストセラー旅客機として知られるボーイング767の派生型として開発された軍用モデルですが、母国アメリカでは採用されておらず、イタリアと日本しか導入していません。日伊それぞれ4機ずつ導入しただけなので、世界に8機しかないのです。

Large 230804 kc767 01航空自衛隊が運用するKC-767と、空中給油を受けるF-15J。機体尾部から伸びる棒状のものがフライングブーム(画像:航空自衛隊)。

 KC-767のベースに用いられているのはボーイング767-200ERです。機体後方下部には「フライングブーム」と呼ばれる装置があり、これを用いることで飛行しながら他の航空機に燃料を補給する、いわゆる空中給油が可能です。

 ただ、イタリア空軍のKC-767には独自装備が設けられています。それは、主翼端にある給油ポッド。この中には「ドローグ」と呼ばれる装置、いうなれば給油ホースが収納されており、燃料を貰う側の航空機に付いているプローブと呼ばれる受油装置に接続して、プローブアンドドローグ方式という方法で給油作業を行うことができます。つまり、この部分を見れば、胴体後部の国籍マークを見なくとも、日伊どちらのKC-767なのか判別できるといえるでしょう。

 ちなみに、イタリア空軍では末尾に「A」を付け、KC-767Aと呼称しています。航空自衛隊では単にKC-767としていますが、イタリア空軍機と構成が異なることから、海外などではKC-767Jと呼ばれることがあります。当初はボーイング社も日本向けはこの名称を使っていました。

 また、KC-767では空中給油任務だけでなく、機内に人員や荷物を積んで輸送機として運用することも可能です。機内には最大25tの積載能力があり、人員の場合は最大で192人、貨物の場合はNATO(北大西洋条約機構)規格の軍用パレット19個を搭載することができます。さらに、これら人員用の座席と荷物は状況に応じて自由に組み合わせて搭載することもでき、人員と貨物を混載して運ぶこともできます。

 今回のイタリア空軍の展開訓練ではどのような形態で飛行してくるかは不明ですが、人員だけでなく支援機材なども同時に運べるKC-767は、長期間の部隊展開にも支援機として最適なことがわかります。

本命のアメリカ空軍に採用されず激レア機に

 KC-767の初飛行は2005年で、このカテゴリーの機体としては比較的新しい方といえます。これまで紹介したように、能力的にも従来の空中給油機よりも多用途に使える高性能機といえるでしょう。しかし、なぜか現在採用しているのはイタリア空軍と航空自衛隊だけとなっています。なぜ、母国アメリカは採用していないのでしょうか。

 従来、空中給油機というカテゴリーにおいて数の上で最も多く運用されているのはアメリカ製のKC-135「ストラトタンカー」です。アメリカを中心にフランス、トルコ、シンガポール(現在退役済)、チリが採用しており、その生産数は約800機にもなります。

Large 230804 kc767 02アメリカ空軍のKC-135「ストラトタンカー」。KC-46Aと交代する形で退役が進んでいる(画像:アメリカ空軍)。

 しかし、KC-135の原型となったボーイング707は、初飛行したのが1950年代と古く、改良を続けているとはいえ、多くの機体で長期運用による老朽化が問題になっていました。さらに原型のボーイング707旅客機が製造ラインを閉じたことで、新規生産も難しい状況となっています。

 そこで開発元のボーイングは、KC-135の後継機として、より新しいボーイング767を改造した新型空中給油機を構想。こうして提案されたのがこのKC-767だったのです。

 KC-767を最初に導入したのはイタリア空軍で、その次が日本の航空自衛隊でした。しかし、それよりも大口の顧客として想定されていたのは、世界でもっとも多くの空中給油機を運用するアメリカ空軍でした。

 アメリカでは、すでに1990年代後半にはKC-135後継機について議論されるようになっており、2003年頃には100機のKC-767をリース契約で空軍が運用する案が持ち上がりました。しかし、このリース契約はボーイングだけの単独指名で進められたことから議会が問題視し、さらに導入に関連した調達スタッフの汚職問題まで発覚したことで、最終的に契約自体が白紙撤回されてしまいます。

 アメリカ空軍でのKC-767導入計画が頓挫する一方で、イタリア空軍と航空自衛隊の方はKC-767の導入を正式に決定します。なお、オーストラリアやイギリスもKC-767の導入を検討したことがあるものの、いずれも別の機体を採用しました。

 また、その後アメリカは新たにボーイング767ベースの空中給油機を再選定していますが、これはより高性能なKC-46であり、KC-767とは似て非なる機体となりました。こうした経緯から、最終的にKC-767は日伊の2か国だけが採用、わずか8機しか存在しない激レア機となったのです。

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