三浦半島と房総半島を結ぶ「東京湾フェリー」の苦境が長引いています。事故により1隻が長期離脱となり、思うような輸送力を発揮できない状況です。
「2時間に1本」が続く東京湾フェリー
三浦半島の久里浜(神奈川県横須賀市)と房総半島の金谷(千葉県富津市)を結ぶ東京湾フェリーの窮状が続いています。2024年3月に「しらはま丸」が入港時に突風にあおられ岸壁に衝突して以降、「かなや丸」1隻での運航を余儀なくされています。
東京湾フェリー「かなや丸」。1隻での運航が続いている(乗りものニュース編集部撮影)。
7月現在、東京湾フェリーは1隻がドック入りする期間に適用する「Bダイヤ」、おおよそ2時間に1本の運航となっています。輸送力が半減しているため、特別クルーズや「マザー牧場日帰りフリープラン」などの企画券の販売も中止に。収益的にも「3割から4割減」だといいます。
とりわけ、ゴールデンウイーク前には「大変混雑が予想されますので、アクアラインまたは鉄道等公共交通機関のご利用をおすすめします」「お車は最大6時間以上(3便待ち)、二輪車は最大8時間以上(4便待ち)、徒歩のお客様、旅客定員規制のため予めターミナル内にて整理券を配布」などと案内したほど。
7月の日曜日の午後に利用した際は、それほど長蛇の列はなく、次の便に乗船することはできましたが、「あの時(GW)は警察とも連携しながら、混雑回避のため『なるべく来ないで』と言わざるを得なかった」と東京湾フェリーは振り返ります。
ではなぜ、これほど「しらはま丸」のドック入りが長引いているのでしょうか。
「ドックに空きがないんです。いまはどのドックも、年間のスケジュールを立てて動いているので、イレギュラーな修理が入るときに調整が難しい。今回はたまたま(関東の)ドックが空いていて修理に入ることができました」(東京湾フェリー)
長期ドック入りのもう一つの要因は、部品の納入などのスケジュールです。「今回は舵もイチから作り直しました。関連するパーツも新規です」とのこと。
このピンチのなかで、「励ましのお言葉もいろいろいただきました」といいます。
そもそも、東京湾フェリーは1997年に東京湾アクアラインが開業して以降、クルマで東京湾を横断する手段としては主流ではなくなっています。現在、アクアラインが普通車800円(上りの一部時間帯除く)で渡れるのに対し、フェリーの自動車航送運賃はその6倍以上の4900円(普通車、1名分の運賃含む)、さらに乗員1名につき大人1000円かかります。
それでも愛される東京湾フェリー、現在はどう利用されているのでしょうか。
フェリーは楽しい「第二アクアライン」!?
「いまは観光でのご利用が大多数で、金谷発と久里浜発では7:3の利用割合です。昔は久里浜発の方が多かったのですが、アクアライン開通以降は逆転しました」――東京湾フェリーはこう話します。
房総観光の帰り、移動手段をアクアラインではなく船にしてみよう――と考えて利用する人が多いとか。金谷発の便では団体ツアーと思しき観光バスも数台利用していました。
「アクアラインの混雑を避ける目的の方もいらっしゃいます。アクアラインが混みだす午後から夕方を避けて、お昼すぎにフェリーへ乗る方が増えています」とのこと。しかし、Bダイヤでは金谷発13時15分の次が15時20分となるため、その点でも需要を取り切れていないことが伺えます。
金谷の出港時(乗りものニュース編集部撮影)。
フェリーの所要時間は約40分。客室でソフトクリームを食べたりお酒を飲んだりしながら過ごすこともできますが、巨大なコンテナ船や自衛艦なども行き交う浦賀水道(東京湾)の“船銀座”っぷりを船から間近で楽しめるのは、フェリーならではの魅力でしょう。40分の船旅は、甲板でずっと過ごしていても飽きないかもしれません。
東京湾フェリーによると、「しらはま丸」はスケジュール通りであれば、8月には戻ってくるとのことです。