1月1日に発生した能登半島地震、2月から3月にかけて相次いでいる千葉県沖を震源とした地震など、今年は改めて地震災害への危機感を抱く機会が特に多いですが、地震に関連して、SNSなどではいわゆる「地震雲」が話題になることがあります。「地震雲」は、地震が発生する前にみられることがあるといわれている、通常とは異なる形状をした雲を指す言葉ですが、「本当に存在するの?」といった疑問の声も少なくありません。
実際のところ、「地震雲」は実在するといえるのでしょうか。気象予報士のきりたんさんに教えていただきました。
「絶対にない」とは言い切れないが…
Q.そもそも、雲の種類はどのくらいあるのですか。
きりたんさん「気象の専門機関である『世界気象機関』では、形状や雲が現れる高さなどによって10種類に分類しています。
最も高い位置に発生する高層雲は『巻雲(けんうん)』『巻層雲(けんそううん)』『巻積雲(けんせきうん)』の3種類、中層雲は『高積雲(こうせきうん)』『高層雲(こうそううん)』『乱層雲(らんそううん)』の3種類、そして下層雲は『積雲(せきうん)』『積乱雲(せきらんうん)』『層雲(そううん)』『層積雲(そうせきうん)』の4種類です。
並べてみると、同じ漢字が使われている名前が多いことに気付くかもしれませんが、雲の名称によって、特徴をある程度推察することができますよ。例えば、『入道雲(にゅうどうぐも)』とも呼ばれる『積乱雲』には『乱』の漢字が使われていますが、雨や雷を発生させる雲として有名です」
Q.“地震が起こる前触れ”といわれている、いわゆる「地震雲」は本当に存在するのでしょうか。
きりたんさん「SNSなどでしばしば話題に上がることも多いのですが、画像を見てみると、特徴的な形のものはほとんどが飛行機雲などを写しているものが多い印象です。
『地震雲は絶対にない』とは言い切れませんが、少なくとも現段階では、『地震の予兆として雲が影響を受ける』とは証明されていません。特に雲の研究は、気象学の中でもまだまだ発展途上の段階で、解明されていないことも多い領域です」
Q.雲の形や大きさを見ることで、どんなことに役立つと考えられますか。
きりたんさん「先述のように、雲の中には『今後、天気が崩れるだろう』『雨が降るだろう』などと予測できる種類のものがいくつかあります。積乱雲や乱層雲などが近くに発生して、こちらに近づいたり大きく成長していたりするようであれば、天気が崩れる前に『屋内に避難する』『その場から離れる』といった対策ができると思います」
* * *
地震の前触れとして「雲や空が不思議な色になる」といった現象は都市伝説のように語られていますが、現状は「関連性はない」というのが答えのようです。一方で、雲の特性を知っておくと天気が変化する予兆として活用できるので、特に天気が崩れやすい夏場は積乱雲などを観察してみましょう。
オトナンサー編集部