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うつ病の21歳ひきこもり長女、医師から「障害年金」の請求勧められても応じず 母親の懸念を払拭した社労士の“的確なアドバイス”

オトナンサー

金融

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 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

 浜田さんによると、障害年金を請求した際に不支給決定を受けてしまった、つまり障害年金の請求が認められなかったというケースはよくあるといいます。「もし不支給決定を受けてしまったら、障害年金は再度請求することはできないのか」という不安を持つひきこもりの人の家族は多いことでしょう。実際のところはどうなのか、浜田さんがある家族をモデルに紹介します。

17歳のときに心療内科を初めて受診した長女

障害年金は不支給決定を受けても、再度請求可能?(画像はイメージ)
障害年金は不支給決定を受けても、再度請求可能?(画像はイメージ)

 21歳の坂下百絵さん(仮名)は高校3年生の春ごろに体調を崩してしまい、17歳のときに心療内科を初めて受診。現在も同じ診療内科へ月に1回通院しています。

 百絵さんはうつ病の診断を受けており、現在も就労の見通しは立っていません。そのため、医師から障害基礎年金の請求を勧められたそうです。

 しかし百絵さんは医師の提案に前向きになれず、いまだに障害基礎年金は請求していないとのこと。一体何があったのか。私の元に相談に訪れた母親からその理由を伺うことにしました。

 母親によると、百絵さんは「もし障害基礎年金を請求してそれが認められなかったら、もう二度と請求できないのではないか」という不安を口にしているそうです。

「実際のところ、どうなのでしょうか」

 母親は心配そうな表情で聞いてきました。

 そこで私は次のように答えました。

「障害年金は必要書類をそろえることができれば、何度でも再請求することができます。まずは障害年金の請求方法から確認してみましょう。請求方法は2通りあり、それぞれ次のようになっています」

(1)障害認定日による請求
初診日から1年6カ月が経過した日(障害認定日)に法令に定める障害の状態にあるときは、障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。

(2)事後重症による請求
障害認定日に法令に定める障害の状態に該当しなかった場合でも、その後病状が悪化し法令に定める障害の状態になったときは、請求日の翌月分から年金を受け取ることができます。

「仮に初回の請求をした結果、不支給決定を受けてしまったとしても、障害年金は何度でも再請求することができます。その場合は事後重症による請求の方になります」

 すると母親は疑問を口にしました。

「事後重症による請求は何回までできるのでしょうか」

「65歳になる誕生日の2日前までなら何度でも可能です。ただし不支給に至った理由によっては、再度請求してもやはり不支給になってしまうケースもあるのです」

 これを聞いた母親は、さらに不安な表情になりました。

不支給になってしまうケースは主に3つ

 再請求をしても、やはり不支給になってしまう主なケースは次の通りです。

(1)保険料の納付要件を満たしていなかった。
(2)初診日の証明が不十分だった。
(3)障害状態が法令に定める障害の状態に該当していなかった。

 私は保険料の納付要件から説明しました。

「少し難しいお話になりますが、障害年金では初診日の『前日』において、公的年金の未納が多過ぎると、そもそも障害年金の請求権利が発生しません。よって、その障害で初めて病院に行く『前に』保険料の納付や免除、猶予の手続きをしておく必要があるのです。なお、初診日が20歳前の公的年金に加入する前にある場合、保険料の納付要件は自動的にクリアすることができます」

「未納が多過ぎるとありますが、実際どのくらい多いと駄目なのでしょうか」

「保険料の納付要件には原則と特例があります。それぞれ次のようになっています」

(原則)
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済み期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。
⇒これを未納期間に置き換えると、上記の期間で未納が3分の1未満であること。

(特例)
初診日が2026年3月末日までにあるときは、次のすべての条件に該当すれば、納付要件を満たすものとする。
(1)初診日において65歳未満であること
(2)初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
⇒これを未納期間に置き換えると、上記の期間で未納が1つもないこと。

「何だか難しいですね…」

「保険料の納付要件をクリアしているかどうかは、年金事務所や市区町村役場の年金課で調べてもらえます。ご家族側でできることとしては『初めて病院に行く前に未納状態をできるだけ解消しておく』ことです」

 次に初診日の証明が不十分だった場合を説明しました。

「初診日の証明は、その障害で初めて受診した病院で書類を作成してもらいます。ただし、その病院が廃院している、5年以上前に終診しているため、その病院にカルテが残っていないといった場合、そもそも初診の病院で初診日の証明書を作成してもらうことはできません」

「その場合、何か別の方法があるのでしょうか」

「申立書を作成し、さらに初診の病院の診察券や領収書、おくすり手帳など当時の初診を証明できる証拠書類を添付することになります。それらが何もなければ、初診日の証明をすることはかなり難しく、障害年金が認められる可能性はかなり低くなってしまいます」

「再請求できるからといって、必ずしも認められるわけではないのですね…」

「そうですね。『保険料の納付要件を満たしていなかった』または『初診日の証明が不十分だった』ということで不支給になってしまったのなら、その後何度チャレンジしても結局は不支給になってしまうことでしょう。一方、『障害状態が法令に定める障害の状態に該当していなかった』ということであれば、将来の受給の可能性はゼロではありません。お嬢さまの場合、保険料の納付要件と初診日の証明はクリアできています。仮に不支給決定を受けてしまうとしたら『障害状態が軽かった』という理由になるでしょう。それならば、将来障害状態が重くなったときに再度請求し、障害基礎年金が認められる可能性はあります」

 私は最後に言いました。

「ここまで再請求の話をしてきましたが、そもそも初回の請求をしていないので、まずはそこから始めることになります。もしご家族だけで進めるのにご不安があるようでしたら、私もご協力することができます。ご安心ください」

「はい、どうもありがとうございます。長女は何度でも再チャレンジすることができると分かり安心しました。長女が請求する気持ちになったら、その際はご連絡差し上げます」

 母親はそう答えました。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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