航空自衛隊創設70周年の2024年は、沖縄県の那覇基地に所在する戦闘機部隊、第204飛行隊も発足60周年を迎えます。今回、国防の最前線で奮闘する部隊を密着取材しました。
発足60周年を迎えた南国のイーグル飛行隊
航空自衛隊は、今年(2024年)、創設70周年の節目を迎えます。航空自衛隊は防空のために全国を4つのエリアに分けていますが、そのなかで沖縄県の那覇基地に司令部を置き、おもに南西諸島の防空を担うのが南西航空方面隊で、その隷下にある唯一の戦闘機部隊が第9航空団です。
第9航空団には、第204飛行隊と第304飛行隊という2つの部隊が配置されていますが、前者は今年12月に発足60周年を迎えます。ダブルで節目の年を迎えることになった第204飛行隊を、那覇基地で取材しました。
那覇基地を離陸する第204飛行隊のF-15J戦闘機。那覇基地は民間の那覇空港と滑走路を共用しており、管制は国土交通省の航空管制官が行っている(石津祐介撮影)。
第204飛行隊は宮崎県にある新田原(にゅうたばる)基地で、1回目の東京オリンピックが開かれた1964年の12月に、F-104J「スターファイター」戦闘機を運用する飛行隊として新編されました。
それから19年後の1985年に、現在も飛行隊が運用しているF-15J「イーグル」戦闘機が配備されます。同年、F-104Jの運用を終了すると、第204飛行隊は新たに茨城県の百里基地で再編され、長年にわたり首都圏防空の任に就くことになります。
そして2005年の中期防衛力整備計画により、南西諸島方面の防衛態勢強化のために第204飛行隊は那覇基地へ移駐することになり、2009年には那覇基地初のF-15「イーグル」部隊として防空任務に就くことになります。
2016年1月には、南西諸島空域で多発する緊急発進(スクランブル)に対応するため、福岡の築城(ついき)基地から第304飛行隊が那覇基地で2つ目のF-15J飛行隊として移駐することとなり、2つの飛行隊を隷下に置く第9航空団が新たに発足しました。
翌2017年には、上級組織である南西航空混成団が南西航空方面隊へと昇格しており、第204飛行隊を取り巻く環境はこの10年で劇的に変わったといえるでしょう。
日本で最も忙しい戦闘機部隊
防衛省が2024年4月19日に発表した2023年度の緊急発進実施状況によると、緊急発進回数は去年1年間で669回を数えました。このうち中国機に対するものが479回と最多で、那覇基地に司令部を置く南西航空方面隊の緊急発進は401回を数えています。つまり1日あたり、1回以上の緊急発進が行われる計算となり、これが「日本で最も忙しい戦闘機部隊」と言われる所以です。
第204飛行隊も通常の訓練に加え、領空侵犯に備えて緊急発進のために待機する「アラート任務」に就いています。
今回、筆者(石津祐介:ライター/写真家)はF-15の複座型、F-15DJの後席に同乗し第204飛行隊の訓練に密着しました。
今回の訓練フライトを担当してくれた第204飛行隊のパイロット。向かって左から、江良(えら)3佐、宮田1尉、浦1尉、爲計田(いけだ)1尉(石津祐介撮影)。
訓練は、沖縄本島の北西側洋上に広がる訓練空域「ムース・ノース」エリアで、4機のF-15が参加して行われました。
通常の訓練は大きく3つに分かれます。ひとつは1対1で行う基本的な訓練。部隊に配属された新人パイロットは、まずこの1対1での戦闘訓練を行い、そしてタッチアンドゴーなど離着陸の訓練を繰り返します。
次が、対戦闘機戦闘訓練です。敵との戦闘を想定して行う訓練で、高度制限を設けるなど、パイロットの技量と経験に応じた安全確保をしています。
そして3つめが、対領空侵犯措置の訓練です。領空に接近する国籍不明機役を設定し、様々な機種、機数に対応できるように、多様なシナリオを計画し、訓練を行っているそうです。
前述したように、那覇基地は他基地と比べて緊急発進を行う回数が桁違いに多く、アラート任務の経験を重ねたパイロットたちは「日々、緊張感を持って任務にあたっている」といいます。
今回の訓練に参加したパイロットが、「訓練では失敗しても、実任務は失敗できない」と語っていたのが、筆者には印象に残りました。