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都内で家を買うなら来年以降? 2022年「地価暴落」問題のあっけない結末とは

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マンション価格暴落の可能性

 不動産には、マンション価格暴落の可能性を持つ「問題」がいくつもある、とされてきました。

 まずは「2020年問題」。これは本来、2020年に開催されるはずだった東京五輪を指したものでした。東京五輪までは好景気でマンション価格が上昇するものの、五輪が終われば暴落するという予測が出て、それを信じる人が増えました。

 ご存じの通り、東京五輪は1年延長。2021年8月現在、五輪後にマンション価格が下がる動きは出ていませんが、コロナ禍の問題が大きく、結論はなんとなくあやふやになっています。

首都圏の農地が宅地に変わった理由

 不完全燃焼に終わった2020年問題に続き、2022年問題もマンション価格暴落の引き金になるとされています。2022年問題とは生産緑地の問題です。

 生産緑地とは市街化区域、つまり住宅が建設できる場所に残った農地を維持しやすくするために生み出された制度です。

都内マンションのイメージ(画像:写真AC)

 一般的に、農地は市街化調整区域にあります。市街化調整区域は住宅などの建設が制限され、農家や農家に役立つ施設の建設しか認められない場所です。住宅の建設が制限される代わりに、固定資産税が安く設定され、農業を続けやすくなっています。

 ところが、首都圏では高度成長期に住宅地を増やす動きが出て、市街化調整区域の指定が外れ、市街化区域になる農地が増えました。いわば、農地をどんどん宅地に変えていったわけです。

 市街化地域に農地が残っていると、宅地並みの固定資産税が課せられます。そのため、農地を宅地にする動きが加速しました。

 さて農地と宅地で固定資産税はどれくらい違うのでしょうか。現在では、宅地の固定資産税は農地の数十倍とされ、場所によっては100倍近く高いこともあります。そのように高い固定資産税を払って、農業を続けることはできません。都市部に残った農地がどんどん消えていったのは当然だったのです。

生産緑地の放出で土地の価格が下がる?

 その後、平成バブル(1986~1991年とする見方が多い)が起き、土地をお金もうけの材料にした反省から、住宅地にも農地を残したほうがよいという考え方が生まれました。

都内の農地(画像:写真AC)

 結果、1992(平成4)年に生産緑地法が改正され、「保全する農地」つまり、農地を残しておくための方策がとられるようになりました。

 簡単にいうと、市街化区域で生産緑地の指定を受けると固定資産税が安くなり、生産緑地の指定を受けやすくしたのです。その結果、市街化区域でも農業を続けやすくなりました。

 生産緑地の指定を受けると、30年間は農地として利用しなければなりません。その期限が満了するのが2022年。2022年以降は、農地として利用しても固定資産税が高くなります。人によっては生産緑地の間、猶予を受けていた相続税の支払いも求められるようになります。

 それは大変なので、宅地として売り出されるケースが増えるだろうと予測する人が「住宅用地として売り出される土地が大きく増える」ので「土地の値段が下がる」と予想したわけです。

23区内で約428万平方メートルもある生産緑地

23区内で約428万平方メートルもある生産緑地

 生産緑地は日本全国に1億3000万平方メートル以上ある、とされています。どれほどの広さか想像もできませんが、東京23区内となればそこまで多くはありません。

 23区内の生産緑地の広さは約428万平方メートル。ずっと少なくなりますが、それでも、土地面積100平方メートルの建売住宅を建設すれば、4万2800戸も建設できます。総戸数100戸程度のマンションならば400棟以上建設できることになり、やはりスケールの大きな話です

 それだけの土地が宅地として売り出されたら、都心マンションも一気に値段が下がりそうですが、実際のところはどうなのでしょうか。

 残念ながら、その期待は薄いでしょう。というのも23区内のうち、生産緑地があるのは半数程度に過ぎず、

・練馬区
・世田谷区
・江戸川区
・杉並区

といった山手線外側エリアの区ばかりです。

山手線(画像:写真AC)

 山手線の内側には、生産緑地が1か所もありません。千代田区・中央区・港区といった中心エリアの3区はもちろん、文京区・新宿区・渋谷区・品川区・目黒区・豊島区・中野区といった都心ゾーンにも、生産緑地はありません。

 都心部のマンションが安く売られたらぜひ買いたい、と多くの人が願っても「生産緑地が放出されるので安い物件が出る」可能性はありません。

 その点、練馬区や世田谷区、杉並区では今も農地を目にします。それらが2022年以降、宅地になる可能性はありそうです。

 といっても、練馬区や世田谷区で見かける農地は、駅に近い場所にはありません。駅からバスで10分以上行ったような場所で見かけるのが一般的です。そのため、住宅地に変わっても、交通便利なマンションが出現するわけではありません。

 交通が多少不便でも、広い敷地で総戸数が300戸以上になるマンションなら人気は出ますが、総面積の数字が大きくても、生産緑地ひとつひとつはそれほど広くありません。せいぜい100戸クラスのマンションが建設できるような土地が主体です。

期限の延長で、大量放出の可能性はなし

期限の延長で、大量放出の可能性はなし

 以上の事実に加え、生産緑地が及ぼす地価への影響は小さいと考えられる理由がもうひとつあります。

 生産緑地は2022年の期限切れで大量に放出される、だから地価暴落を引き起こすという予測が出たのは2017年くらいからです。そのときに関連記事を読んだ人は間もなく生産緑地が大量放出される、と考えているかもしれません。

 しかし、生産緑地の事情は変わっています。2022年で30年目を迎える生産緑地の制度は、さらに10年間延長されることが決まっており、その後も制度が延長される見通しになっています。つまり、生産緑地がなくなる可能性は薄いのです。

 そして、生産緑地を所有する人たちの大半、おおよそ8割が農地を手放す意志がないとされています。つまり、生産緑地が大量に放出されることは、山手線の外側でも生じないことがはっきりしてきました。

都内の農地(画像:写真AC)

 2022年問題も実は問題にならなかったわけです。これは、地価下落を期待している人には残念な話でしょう。しかし農業の大切さが再認識されている現在、身近な農地が生き続けることは悪いことではありません。

 練馬区役所の人に先日聞いたところ、

「練馬大根(練馬区東南部原産の大根)は、今や欲しくても買えない幻の大根になっている」

とのこと。23区内で希少な生産緑地でつくられる野菜が人気を高めているのです。

 生産緑地はもはや宅地に変わる予備軍ではなく、希少な農地として大事にされる時代になっています。

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