東武スカイツリーライン・日光線系統で、無料の列車種別としては大幅に停車駅の少ないことで知られた「快速」。急行よりも快速のほうが上位種別という、他の私鉄ではあまり見られない関係性が、東上線では健在です。
特急並みに次々と駅を通過した「快速」
東武東上線の快速。急行よりも多くの駅を通過する上位の種別(画像:写真AC)。
東武スカイツリーライン・日光線系統(以下、本線系統)で2017年まで運転されていた「快速」「区間快速」。2両ずつ分割・併結される専用の6050系電車6両にて浅草~東武日光・新藤原・会津田島間で運転され、無料の列車ながら急行よりも大幅に停車駅が少ないことで知られました。
下りは北千住を出ると、次の停車は17駅先の春日部でした。さらに、東武動物公園から栃木県の新大平下までのあいだは、1997(平成9)年に板倉東洋大前駅(群馬県板倉町)が開業するまで40km以上にわたりノンストップ。その速達性から、とりわけ栃木県の東武沿線住民に支持された列車です。
東武の本線系統からは消えてしまった「快速」ですが、東上線では健在です。
同線では停車駅の多い順から「準急」「急行」「快速」「快速急行」「川越特急」、そして有料の「TJライナー」となっています。私鉄では一般的に、急行のほうが快速よりも上位の列車ですが、東武の場合はなぜ、その関係が逆転しているのでしょうか。
これは、かつての東武の急行が今と異なり、有料列車だったことに起因します。一方で快速は、無料列車の最上位種別でした。
変化が起こったのは2006(平成18)年、東武本線系統のダイヤを東京メトロ半蔵門線への直通列車を中心としたものに変更したときです。有料列車を「特急」に一本化するとともに、半蔵門線直通の「通勤準急」を「急行」へと変更しました。これは、直通先である東急田園都市線の種別名に合わせたからです。
こうして、快速が急行の上位という序列が東武鉄道では生まれました。加えて2013(平成25)年には、東上線にも「快速」が新設されますが、これは本線系統に合わせた形で、やはり急行より上位の列車とされ、現在に至っています。
ちなみに関西の神戸電鉄も、急行より快速が上位の位置づけです。停車駅の多い順に「準急」「急行」「快速」「特快速」でしたが、2020年に快速が廃止されています。