JR三鷹駅から徒歩6分のところにある「探究学舎」。ここでは子どもたちの好奇心をくすぐるような、選りすぐりのテーマを集めた教室が開かれています。成績アップを目的としていない学び舎で子どもたちはどんなことを学んでいるのでしょうか。
子どもたちのワクワクに火をつけるのは、経験豊富で饒舌な講師陣。そこで一児の父でもある花岡太一先生に子どもたちが自分の「好き」に出会うためのコツを聞きました。全3回でお送りするインタビューの2回目です。
大人の声かけで子どもの意識はガラリと変わる
白熱の教室授業の様子。親も同じ教室で見ていてOK。
——「探究学舎」に参加するには、まずはどうすればいいのでしょうか?
花岡太一先生(以下、花岡) まずはオンラインの無料授業を体験してみるのはいかがでしょうか。1カ月に1度くらいの頻度で、その時期に開催する授業の第1章を無料で受けられます。
——現在人気の授業はどんな内容ですか?
花岡 最近は「生き物」系や「歴史」系の授業が人気があります。他には、「宇宙」や「元素」の授業が昔から人気がありますね。
——「元素」ですか、意外ですね。子どもには難しそうなイメージがあります。
花岡 大人の感覚だとそう思うかもしれません。しかし、身の回りにある“物”はすべて元素からできているので「これは何でできているんだろうね」という声かけをすると興味を示してくれる子が多いです。
——興味の入り口で止まってしまう子の場合、適切なサポート方法はあるのでしょうか?
花岡 まずは声かけをします。そこからその子に「なんでだろう」、「どうなっているんだろう」と疑問を持たせることも大事です。ちょっとした大人の工夫で入口に立つことができれば、そこからのめり込んでいくことがあります。一度火がつくと、そこからの進化はびっくりするほど早いですよ。
——探究学舎さんがおこなっている授業形態を知れば、「ぜひ我が子にも!」と思う親御さんが多いことに納得です。
花岡 「我が子に”学び”の楽しさを伝えたい」、「いろんなことに興味を持ってほしい」と思っている親御さんからの問い合わせは非常に多いですね。探究学舎は学校の学びとは違い、自分の「好き」を見つけるお手伝いができるので、興味関心が高まっているように思います。
探究心をより深める「クエスト」
縦横無尽に動き回りながら、芸人さながらのマイクパフォーマンスで子どもたちを引き込んでいく宝槻先生(探究学舎代表)。
——実際の授業はどのようにして進んでいくのですか? その場でワークなどもあるのでしょうか?
花岡 まず僕たち講師がスライドや動画を用意します。それをどうやって子どもたちに伝えるかは講師によって違います。ある先生はコント風に、またある先生はキャラクターを使って、語りだけで子どもたちをひきつける先生もいます。それぞれ味付け方法は違いますが、根底には「驚きと感動を届ける」という共通認識があります。
オンライン授業でもYouTubeを見るのとは違って体験要素を取り入れているので、その場でワークを出したりもします。たとえば「発酵」の授業では「家の中にある発酵食品を持ってこよう」と提案したり、「天気」の授業では雪の結晶を作ったりします。
——たしかにオンライン授業の場合、見ているだけで受け身の姿勢だとYouTubeと一見変わりないかもしれません。実際にワークをこなすとまるで教室にいるかのようなリアルさを体験できますね。
花岡 そうなんです。いかに子どもたちを巻き込んで学ぶかというところに工夫を凝らしています。さらに「クエスト(探究課題)」というものを用意しています。
——「クエスト」とはどういったものですか? ネーミングがゲームっぽいですね。
花岡 60分の授業の中だけでは足りないことや、さらに探究し続けてみようというときは「クエスト」という課題を設けます。
たとえばオンライン授業の時間内では、絵を描いたり、もっと調べたりする作業は時間がかかってできないので、そんなときは「クエスト」を用意します。このクエストはやってもやらなくてもどちらでもいいのが特徴で、やらなくても咎められることはありません。ただ、自宅でさらに深堀りしたい子にはもってこいのコンテンツです。
——クエストの評判はいかがですか?
花岡 自分の好きなテーマであれば「もっと知りたい」と思う感情は当たり前なので、「クエスト」が出ることでさらに探究心が深まります。また親御さんからも、お子さんが自宅で一生懸命クエストに取り組むので助かります、という声を聞きます。
「やっててよかった」と嬉しくなる瞬間
わかりやすいアウトプットをしていなくても、子どもの内側に響いていることがわかるとき、本当にうれしいと花岡先生。
——「探究学舎」はいわゆる受験のための学習塾ではないとのことですが、授業を受けていく過程でお子さんたちが変化していく様は、先生たちも顕著にわかるものですか?
花岡 変化がはっきりと出るお子さんの場合は、さらに探究しようとする強い思いから自分でノートをまとめてきたり、作品を作ってきてくれたりと、アウトプットしてくれるのでわかりやすいです。ただ、そういうことをしない子には刺さっていないのかというと、それはわからなくて。
変化が分かりにくい子の場合でも、内に秘めた思いがしっかりあり、その火が燃えている子もいるので、見た目では判断せず、会話や様子から感触を確かめています。やっぱり興味関心を示してくれると『ああ、やっててよかったな』と嬉しくなります。
——親御さんの思いとお子さんの思いにズレがあると感じることはありますか?
花岡 親御さんは我が子の「好き」がある程度はわかっているので、たとえば「天気」や「宇宙」などピンポイントで授業を申し込んでくれます。しかし、通っているうちにお子さんが別のものに興味を示す場合もあります。だからいろんな授業を受けてみて、そのお子さんの興味の対象がどこにあるかを一緒に見つけてほしいです。
ワークやクエストなど、子どもたちが喜びそうな工夫をこらしながら、子どもの「好き」をとことん探究する方法に感動。自分も子どもに戻って「探究学舎」に入りたいと思いました。次回、第3回では親が家庭でできる「探究心に火をつける方法」についても聞いていきます。
花岡 太一(はなおか たいち)
大学卒業後、家具メーカーに入社。物流・店舗マネジメント・商品部など11年間経験したのち、コーチングや心理学を学び、日本コーチカウンセラー連盟のプロ認定を取得する。また、カンボジアの孤児院で1ヶ月過ごした経験などを生かし、2021年1月に探究学舎に参画。趣味は海外旅行、卓球、ゴルフ。
探究学舎
東京都三鷹市にある、興味開発・探究型の学び舎。子どもたちに「もっと知りたい!」「やってみたい!」という驚きと感動の種をまき、一人ひとりの探究心に火をつける学習体験を届けています。授業のテーマは宇宙・元素・生命進化・戦国・経済など多岐にわたる。
https://tanqgakusha.jp/
(取材・文:安田ナナ、撮影:佐藤登志雄)