火力発電の燃料に使われる石炭や液化天然ガス(LNG)などの輸入価格が高騰している影響で、昨年から電気代の値上げが続いています。特に、暑くなる7月以降は、冷房をよく使うようになるため、電気代がより高くなることが予想されます。そこで、夏に備えて、今から節電方法を確認するのもよいかもしれません。
「部屋の照明を小まめに消す」「待機電力を抑えるため、家電のコンセントを小まめに抜き差しする」という節電方法が有名ですが、電気代を抑える上で本当に効果があるのでしょうか。電力・ガス比較サイト「エネチェンジ」などを運営する、ENECHANGE(エネチェンジ、東京都千代田区)広報マネジャー、中田都季子さんに聞きました。
照明やエアコンはつけっ放しの方が得な場合も
Q.電気代をできるだけ抑えるために有効な取り組みについて、教えてください。
中田さん「まずは、家電の使用方法を見直しましょう。夏や冬であれば、『エアコンの使用時間や温度設定を工夫する』『冷蔵庫内の設定温度を季節ごとに見直す』などが節電につながります。また、10年以上前に製造された家電をエコ家電に買い替えるのも、節電に効果があります。
電気の契約アンペア数や電力会社を変更するのもよいでしょう。契約アンペア数を変更する目安は、子どもが独立して夫婦2人世帯になったときなど、ライフスタイルが変化したときです。また、2016年の電力小売り全面自由化によって、さまざまな事業会社が電力事業に参入するようになり、地域の大手電力会社よりも安い料金単価で電気を提供する会社が増えました。当社の電力・ガス比較サイト『エネチェンジ』のようなサイトを活用すると、安い電力会社を簡単に見つけることができます。
ただし、最近の燃料価格の高騰により、新規申し込みを一時的に停止する会社や、経営難により小売り事業から撤退する会社が出ています。さらに、燃料費調整額の見直しとして独自燃料調整費制度を導入したり、料金単価そのものの値上げに踏み切ったりする会社もあるので、切り替えを検討する場合は、慎重に選ぶ必要があります」
Q.電気代を抑えるために、部屋の照明を小まめに切る人や、家電製品の使用ごとにコンセントを小まめに抜き差しする人がいるようですが、効果はあるのでしょうか。
中田さん「照明の種類(LED、蛍光灯、白熱灯など)にもよります。蛍光灯の場合、点灯直後に最も電気を使うので、短時間部屋を離れる程度であれば、小まめに照明を消したりつけたりするよりも、つけっ放しの方が電気代の節約につながります。台所によく設置されているグロースターター形の蛍光灯(点灯までに数秒かかるタイプの蛍光灯)の場合、小まめに消したりつけたりすると、蛍光灯そのものの寿命が短くなってしまいます。
家電は、電源プラグをコンセントに差し込んだ状態だと待機電力がかかります。待機時の使用電力量が多い家電は、テレビやエアコン、ブルーレイレコーダー、DVDレコーダー、パソコンです。長時間使用しないのであれば、電源プラグは抜いた方がよいでしょう。ただし、テレビやレコーダーの録画予約機能を使用している場合、電源プラグを抜くと予約データが消えることもあるので、注意が必要です」
Q.夏から秋にかけて、エアコンを使用する機会が増えますが、「外出時は電源を切るべきか? つけっ放しにするべきか?」「除湿と冷房とでは、どちらの方が使用電力量が少ないのか?」といった話をよく聞きます。エアコンは、どのように使うとよいのでしょうか。
中田さん「エアコンは、次の2点を意識して使うとよいでしょう。
(1)1時間程度の外出であれば、つけっ放しにすること
真夏の日中などは、1時間程度の外出であれば、つけっ放しにする方が使用電力量を抑えられます。エアコンは、外気温と室内温度(設定温度)に差があるほど電力を多く使用するからです。
(2)除湿よりも冷房の方が、使用電力量が少ない
除湿方法にもよりますが、再熱除湿方式のエアコンの場合、冷房の方が、電気代が安く済みます。再熱除湿方式は、気温を下げずに湿度だけを下げる方法で、エアコンが室内の湿った空気を吸収後、適温に調節してから送り出すため、その分、電力を多く使用します。この機能は、上位機種のエアコンに比較的多く付いています」
2人暮らしだと30アンペアでは不十分?
Q.2人世帯の人が、契約アンペア数を30アンペアにするか40アンペアにするかで、迷うことがあるようです。30アンペアでは不十分なのでしょうか。
中田さん「家電をあまり使わないのであれば、30アンペアでも問題ありません。反対に、洗濯乾燥機や食器洗い乾燥機などを多用し、また、テレワーク用の部屋があるような広い家に住んでいる場合は、30アンペアでは不十分な場合があります。
アンペア数を見直す際は、冷蔵庫など常に使用している家電のアンペア数を確認するとともに、家電の同時使用台数が最も多い時間帯(夏や冬の朝など)における家電のアンペア数を計算してください。
家電のアンペア数の目安は次の通りです。
【家電のアンペア数】
エアコン(7アンペア)、42型の液晶テレビ(2アンペア)、冷蔵庫(2.5アンペア)、照明(1灯1アンペア)、電気ケトル(10アンペア)、ヘアドライヤー(12アンペア)、電子レンジ(15アンペア)、ドラム式洗濯乾燥機の乾燥時(13アンペア)
例えば、夏の朝にエアコンやテレビ、冷蔵庫、ヘアドライヤー、電子レンジを同時に使う場合、合計で38.5アンペアが必要なので、契約アンペア数は40アンペアか50アンペアにしましょう」
Q.電気の検針票に記載されている「基本料金」「電力量」「燃料費調整」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の内容について、教えてください。
中田さん「東京電力の検針票を基に、次のように説明します。
【基本料金】
電気の使用量にかかわらず、毎月支払わなければならない料金です。別荘のような、たまにしか使用しない場所であっても、毎月支払う必要があります。
金額は契約アンペア数によって変わります。東京電力の場合、30アンペアで858円、40アンペアで1144円、50アンペアだと1430円です。
【電力量】
電気の使用量に応じて支払う料金です。3段階料金制度を採用している電力会社もあれば、単一料金単価制度を採用している電力会社もあります。電気は使用量が多い家庭ほど料金単価も上がる仕組みになっています。『1キロワットアワー当たりの単価×電力使用量』で計算されます。
例えば、東京電力の『従量電灯B』のプランの場合、1キロワットアワー当たりの単価は次の通りです。
最初の120キロワットアワーまで(第1段階料金) 19円88銭
120キロワットアワーを超え、300キロワットアワーまで(第2段階料金) 26円48銭
300キロワットアワーを超過(第3段階料金) 30円57銭
標準世帯の月の電力使用量は260キロワットアワーと言われていますが、この場合、『120キロワットアワー×19.88円(1段階料金の単価)+140キロワットアワー×26.48円(2段階料金の単価)』で計算されます。
【燃料費調整】
電気をつくるために必要な火力発電に使う燃料(原油、液化天然ガス、石炭)の価格に応じて請求する料金です。3カ月前の3カ月間の平均額から算出され、例えば、6月の電気料金には、1月から3月の平均額が反映されます。日本は燃料の多くを輸入に頼っているため、料金は世界情勢などによって大きく変動します。
【再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ発電賦課金)】
電力会社が、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)で発電された電気の買い取りに必要な費用を賄うために、2014年から国民の電気料金に上乗せする形で請求している料金です。
毎年5月から1年間の買い取り単価が決められ、2022年は1キロワットアワー当たり3.45円となっています。月の電力使用量が260キロワットアワーの場合、年間1万764円を支払うことになります。ちなみに、2014年の開始時点での買い取り単価は0.75円(月の電力使用量が260キロワットアワーの場合、年間2340円)でした」
オトナンサー編集部