コンビニやスーパーのカップ麺売り場には、ラーメンの有名店監修のカップ麺が販売されていることがあります。もちろん、有名店の味とほぼ同じで、おいしいカップ麺も多いですが、中には「本当に有名店の味を再現したのだろうか?」と疑問に思うものもあります。普段は通えない有名店の味を求め、カップ麺を期待して購入したにもかかわらず、以前、その店で食べた味と異なったときの落胆は大きいものです。
有名店監修のカップ麺が実際の味と違っていた場合、返金を求めたり、詐欺で訴えたりできるのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。
「監修」に期待し過ぎは禁物
Q.ラーメンの有名店がカップ麺の監修を行うと、消費者やメーカーに対して、それぞれどのような法的責任を負うことになりますか。
藤原さん「消費者に対しては原則として法的責任がありませんが、例外的に、あまりにも違うものが販売される場合、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うことがあり得ます。『監修をする』といっても『メーカーがなるべく似せて製造する』ことが前提で、味の保証までしているわけではないのが通常と考えられます。ただし、本物とあまりにかけ離れたものを“監修済み”として流通させることは、消費者に対する違法行為と考えられます。
メーカーに対しても原則として法的責任はありませんが、例外的に、あまりにも違うものが販売された場合、債務不履行(民法415条)、および、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うことがあり得ます。理由は対消費者の場合と同様です。メーカーと有名店の責任の割合により、有名店の責任の大小も変わります。
例えば、有名店がメーカーでは気付かないような点について虚偽を述べ、製品を完成させて販売させた場合、有名店の責任が大きく、メーカーが気付いて対応できた場合、有名店の責任はそこまで大きくないと思われます」
Q.同じく、メーカーは有名店監修のカップ麺を販売すると、消費者や有名店に対して、それぞれどのような法的責任を負うことになりますか。
藤原さん「店側の場合と同じく、原則として、消費者に対する法的責任はありませんが、あまりにも違うものの場合、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うことがあり得ます。味の保証までしていなくとも、本物とあまりにかけ離れたものを“監修済み”として流通させることは、消費者に対する違法行為と考え得るからです。
有名店に対しては法的責任を負わないと考えられます。仮に本物とあまりにかけ離れたものであったとしても、有名店はその内容の確認をしているからです」
Q.ラーメン有名店の味と、その店の監修を受けたカップ麺の味が異なった場合、消費者はメーカーなどに返金を求めることはできるのでしょうか。
藤原さん「先述したように、例外的に、あまりにも違うものが販売される場合、損害賠償責任が生じることがあり得ます。ただし、損害賠償の金額は購入額全額ではない場合もあり得ます」
Q.訴える人は少ないと思いますが、詐欺で訴えることはできるのでしょうか。
藤原さん「なかなかないことだと思いますが、メーカーや有名店が、本物とあまりにかけ離れていることを前提にあえて、販売による利益を得ようとした場合、だまして、お金を取ろうとする行為に当たり、民事や刑事における詐欺に該当する場合もあり得ます。そうした場合は訴えが認められることもあると思われます」
Q.消費者も「有名店監修」とうたわれていても期待値をあまり高め過ぎない方がよいのでしょうか。
藤原さん「あまり高め過ぎない方がよいと思います。期待値を高めてしまうと、味のギャップが生じたとき、有名店やメーカーに対して無用な反発を抱くことになりますし、法的にも何らかの救済ができる可能性は低いからです。監修とは『なるべく似せて製造する』ことが前提となっており、味の保証までしているわけではないことをよく理解して食べた方がよいでしょう」
オトナンサー編集部
