アメリカ海軍は2023年11月29日、原子力空母「エンタープライズ」の解体方針がようやく決定したようです。同艦は世界最初の原子力空母であり、最初に解体される原子力空母でもあります。
後続艦を合わせると100年単位のプロジェクトに
アメリカ海軍は2023年11月29日、世界初の原子力空母解体のための方針を決定したと、複数の防衛系メディアが報じています。
世界初の原子力空母「エンタープライズ」(画像:アメリカ海軍)。
今回、解体の対象となるのは世界初の原子力空母である「エンタープライズ」になります。この一大事業に際し、アメリカ海軍はバージニア州アーリントンに原子力空母の解体に関する新しいプログラム室を設立し、そこで全体的な管理を行うそうです。
その解体の場所は、軍の施設ではなく、自国の民間造船所に送ることが決定。現在アメリカ海軍は原子力空母や原子力潜水艦の整備・解体に対応できる軍施設を全米で4か所保有していますが、原子力空母のような大型の艦を数年単位で置いておける施設がないということで、民間へ委託するという判断になったようです。
「エンタープライズ」は2012年以来、バージニア州のニューポートニューズ造船所に長らく停泊していましたが、曳航され、民間の解体施設に送られることとなります。取り出された原子炉については、ワシントン州の「トレンチ94」と呼ばれる海軍原子炉廃棄場に輸送されるようです。
同艦は原子炉を8基も有しているということで、なかなか解体方針が決まっていませんでした。一時期は記念艦にする計画もありましたが、この原子炉のため断念。民間企業に委託する方針はあったものの、原子力空母の解体は前例がなく、どれだけ厳重にやるかによっても費用はまちまちのようです。アメリカ国内の報道によると、最も安く見積もってもおおよそ7億ドル(約1000億円)が解体費用にかかり、期間は5~15年になる見込みです。
さらに、2025年からはニミッツ級原子力空母の退役も始まる予定です。ニミッツ級の原子炉は2基ですが、計10隻が就役しており、「エンタープライズ」で解体のノウハウを蓄積しておかないと、これらの艦が全米の海上に留め置かれることになってしまいます。
一部報道によると、こうした原子力空母の解体事業に関して海軍プログラム室の担当者は「今後1世紀に渡り作業が待っている」と発言しているといいます。