神戸空港に飛来したことで大きな話題となった、胴体上部が大きく膨らんだ形状が特徴の激レア飛行機「ベルーガ」。この機は乗員が乗り降りするドアが一見して見当たりません。どこにあるのでしょうか。
旅客機「A300-600」がベースながら
ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスの貨物機で、胴体上部が大きく膨らんだルックスが特徴の「ベルーガST」が2024年2月21日と22日、神戸空港と関西空港へ飛来。一時はX(旧Twitter上)で「神戸空港」がトレンド入りするなど話題を呼びました。
しかし、空港の展望デッキで同機を見ていると、ある疑問が。民間貨物機のほとんどに装備されている「乗務員の乗降ドア」と思しきものが、見当らないのです。では、乗員はどこから乗り降りしているのでしょうか。
神戸空港に飛来した「ベルーガST」(2024年2月21日、乗りものニュース編集部撮影)。
「ベルーガST」は旅客機「A300-600」をベースとし、おもにエアバス製航空機のパーツを輸送する目的で作られました。特徴的なルックスは、翼などの長尺の荷物を運ぶため。最大で幅7.1m、高さ6.7mの大型貨物を積載できます。
とはいえその特殊な用途ゆえに、ベース機であるA300の貨物型とはまったく異なる特別仕様の機体に。「ベルーガST」のコクピットは通常のA300より低い位置に設置されているほか、垂直尾翼、水平尾翼の設計も、通常機とは異なるものに換装。ほとんどA300の面影はありません。
実はデッキからは見えません! 乗員乗降ドア
そうして誕生した「ベルーガST」は、通常の旅客機ベースの貨物機であれば胴体左舷にある乗員の乗降ドアが見当たりません。一方、右舷には小さなドアがあるものの、駐機中の同型機でここが空いているシーンも見られず、乗降ドアとして使用されていないようです。
実はこの機の乗員用乗降口は、胴体の下部、前脚の少し後ろあたりに存在します。ここにはハッチがあり、そこからハシゴが出てきて、パイロットなどはここから乗り込みコクピットへ向かいます。
そのような「ベルーガST」ですが、現在は、エアバス製航空機のパーツを輸送する業務を後継機である「ベルーガXL」にゆずり、新たなサービスを任されています。同機を利用して、一般顧客へむけ大型貨物の空輸サービスを行う事業で、今回の神戸空港への飛来もこの一環です。
なお、後継機である「ベルーガXL」はベース機が異なり、後発のモデル「エアバスA330」に改修を加えたものとなっています。ただし、この「胴体下部に乗員用乗降口を設置する」という仕様は、「ベルーガXL」にも引き継がれています。