建設に向けた動きが本格化している「豊住線」。運行形態やダイヤなどの想定が明らかになってきています。
江東区が「東京メトロの回答」明らかに
東京メトロ有楽町線の分岐線として、建設に向けた動きが本格化している通称「豊住線」。東京都江東区は2024年6月、この新線について、住民から寄せられた意見に対する東京メトロからの回答や、整備効果を明らかにしました。現時点で、どのような運行形態が想定されているのでしょうか。
東京メトロの車両(画像:写真AC)。
豊住線は、豊洲駅から東西線の東陽町駅を経て、半蔵門線・都営新宿線の住吉駅に至る約5.2kmの区間。全駅が江東区に所在し、途中の枝川駅(仮称)と千石駅(仮称)は新規の駅となります。2022年3月の鉄道事業許可を経て、2024年6月に都市計画決定が告示され、着工が待たれている状況です。
開業は2030年代半ばで、10両編成の電車が走る予定。東京北東部や埼玉東部などから臨海部へのアクセス性が向上し、現状で乗り換え2回・約20分かかる住吉~豊洲間は直通約9分に短縮されます。また、周辺路線の混雑緩和も期待されており、東西線のピーク1時間あたりの混雑率(木場→門前仲町)は約20%低減される見込みです。
江東区は現在、南北を縦断する鉄道路線がなく、バス輸送に頼る状態です。また、2つの新駅予定地は半径800m以内に駅がない鉄道空白地帯となっており、この課題もようやく解消となります。
今回、区は2024年2月に開催された「地下鉄8号線延伸に関する定例会」で、区から東京メトロへ伝えた「地域からの意見」に対する同社の回答を公表。それによると、豊洲~住吉間の運行本数は1時間あたり日中で約8本、朝ピーク時で約12本を想定しているそう。有楽町線本線の乗り入れ本数は今後検討していくとしています。なお、有楽町線の本線乗り入れについては、現時点では和光市方面のみとなる見込みです。
「住吉駅止まりではなく、錦糸町駅、押上駅まで乗換えなしで行けるよう、配慮していただけるとありがたい」という意見に対しては、「半蔵門線への乗り入れについては、現時点では具体的な運行計画はありません」と回答しています。
「有楽町線が枝分かれになることで、新木場方面の路線の本数が減少することを懸念している」という声には、「新木場行きの列車本数は減少を想定しています。具体的な運行本数は未定であり、今後、検討していきます」と明言されました。
「新駅の名称」に関する意見も
「豊洲駅の混雑が想定されるので、可能であれば駅の出入口を増やしたり、人の流れが良くなる駅構造としてほしい」という意見も。これに対しては「豊洲駅は、新木場方面のホームの増設とそれに伴う昇降設備の新設などを行い、混雑緩和を図れるように計画しています」としたうえで、「出入口の増設については、現時点では具体的な計画はありません」と回答しています。
「二つの中間新駅の名称は、より多くの区民の意見が反映される方法で決めていただきたい」との意見も寄せられました。東京メトロは駅名に関して、「既設線の駅名や地名(町名)および著名建造物名などから駅名を決定しています。なお、駅名決定までのプロセスについては、今後検討し、決定します」と述べるにとどめています。
現時点では、豊住線が住吉以北に直通する可能性は低いと言えますが、東京メトロと相互直通運転を行う東武鉄道は、2024年4月に公表した中期経営計画に、「地下鉄有楽町線延伸に伴う新たな輸送ネットワーク構築に合わせた検討」を推進する方針を盛り込んでいます。豊住線が開業すれば、東武伊勢崎線から豊洲方面に直通列車を走らせることも構造上は可能になると考えられるため、今後の動向が注目されます。