近年、「iDeCo」(イデコ、個人型確定拠出年金)や「NISA」(少額投資非課税制度)という言葉を聞くようになりました。いずれも資産運用の制度ですが、何が違うのでしょうか。資産運用の基本的な知識のほか、親から資産を相続する際の対処法について、ファイナンシャルプランナーの齊藤颯人さんに教えていただきました。
NISAは元本割れのリスクも
Q.そもそも、資産運用でよく耳にする「金融商品」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
齊藤さん「銀行預金や株式、債券、投資信託、保険といった、金融機関などが提供する『お金に関係する商品』のことを指します。基本的には『お金を増やしたい』『お金に困りたくない』といった目的で利用されることが多く、どの商品においても『安全性』『収益性』『流動性』という3つの要素が運用に大きく関わります。
安全性は損をするリスクがあるかどうか、保証制度が手厚いかといった内容で判断します。収益性は文字通り収益がどの程度期待できるか、そして流動性は現金化のしやすさを表しています。例えば、高い収益が狙えるが損をする可能性もあるため安全性に懸念がある、というようにメリットとデメリットを併せて考慮する必要があるでしょう」
Q.積み立てで資産運用ができる制度である「iDeCo」「NISA」について、詳しく教えてください。
齊藤さん「どちらも資産運用として比較されがちですが、実はメリットや運用方法が大きく異なります。まず『iDeCo』は個人型確定拠出年金、つまり税制優遇の制度を利用しながら自分自身で運用する年金のことを指します。満60歳にならなければお金を受け取れないため、老後のライフプランや資産形成に向けて準備したい人に向いています。
一方、『NISA』は少額投資非課税制度のことで、もともと諸外国と比較して投資人口が少ない日本において、投資の促進や人口拡大を目指して設立された制度です。現状は『一般NISA』と『つみたてNISA』の2種類がありますが、2024年からは新しいNISA制度がスタートしました。
iDeCoと違い、NISAの商品はいつでも売却できますが、運用方法によっては元本割れのリスクがあります。言い換えれば、上場株式などの種類も豊富なため、積極的に投資で資金を増やしたい現役世代の人に向いていますね」
Q.ちなみに、両親が所有している家と土地を相続する人がいます。この場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
齊藤さん「実家や土地を譲り受ける場合は、所有者の名義を相続人に変更するための『相続登記』という手続きが必要です。手続きの内容は、相続が遺言書によるもの、法定相続分によるものなどによって異なります。
また、相続税の申告と納付も忘れずに手続きを進めましょう。多くの人が『相続税がどの程度かかるか』という点を気にするかもしれませんが、家や土地を相続する際に最も注意したいのは『その物件に資産価値があるかどうか』という点です。
家や土地を相続するということは、その場所の『管理責任』『納税責任』も相続するということです。不要な家や土地の場合、相続の判断は慎重に行いましょう」
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資産運用の方法はサービスや商品によってさまざまですが、それぞれメリットとデメリットがあり、自分がどのように運用したいかという点が重要になります。「知識がなくてどれを選べばいいのか分からない」と悩んでいる人は、資産運用のプロであるファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。
オトナンサー編集部