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「相手の気持ち考えて」は逆効果! 子どもは他人の心を推し量れない、まず共感しよう

オトナンサー

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「サリーとアンのテスト」(C)松永夕露
「サリーとアンのテスト」(C)松永夕露

 わが子が友達のおもちゃをいきなり奪い取ろうとしたとき、こんな言葉をかけていませんか。

「お友達が嫌な思いをするでしょう! 相手の気持ちを考えて!」

「自分が同じようにされたらどう思う? だから優しくしないとだめよ」

 しかし、子どもには通じていないのです。なぜなら、自分ではない他者の気持ちを推し量る「心の理論」が、幼い子どもにはまだ育っていないからです。子どもは基本的に「自分中心」なので、自分の気持ちだけで突っ走ります。

想像力の発達を見るテスト

「マーブルチョコのテスト」(C)松永夕露
「マーブルチョコのテスト」(C)松永夕露

 心の理論に関する検査に、「サリーとアンのテスト」「マーブルチョコのテスト(スマーティ課題)」というものがあります。

【サリーとアンのテスト】

(1)サリーはかごを持っています。アンは箱を持っています。
(2)サリーは持っていたボールをかごの中に入れて、部屋を出ました。
(3)アンはそのボールをかごから出し、自分の箱に入れました。
(4)そこへ、サリーが帰ってきました。ボールで遊びたいと思いました。
(5)さて、サリーは、かごと箱のどちらを探すでしょうか?

 答えは「かご」です。この問題は、サリーの立場に自分を置き換えることができている場合に正解できます。

【マーブルチョコのテスト(スマーティ課題)】

女性「この筒の中に何が入っていますか?」(筒にはマーブルチョコの絵が描かれている)
子ども「マーブルチョコ」
女性「違います。ここには鉛筆が入っています(鉛筆を出して見せる)。ところで、太郎が来たら、何が入っていると答えると思いますか」
子ども「鉛筆」

 これは、心の理論が育っていないことで導き出される、間違った答えです。太郎の立場に立ってみたら、そこに鉛筆が入っている事実を知らないのですから、「マーブルチョコ」と答えるはずですよね。

 これらのテストは「自らの視点ではなく、相手の立場に立って物事を判断することができるか」を調べる発達検査の一つです。発達障害に代表される自閉症のある子どもは、社会性やコミュニケーション、想像力の発達の遅れがあるため、心の理論の獲得が遅く、小学生になってもこうしたテストに正解ができないことがあります。

時期が来ないと育たない「心の理論」

 私の息子は知的障害を伴う自閉症児です。19歳ですが、診断テストの正答率はかなり低いものでした。所見には、こう書かれていました。

「○○君(息子)は、目に見えた事実そのものは理解できますが、他者がどう思っているかということなど、他者の視点を理解することが難しい様子でした。また、話の文脈から状況理解をすることも難しく、相手が話している内容をそのまま受け取ってしまう傾向もみられました。○○君は状況を察することが難しいので、一つ一つ説明をすることが必要だと思われます。また、他者視点の弱さもあるため、周りがどう思っているかなどの説明が必要です」

 自閉症でなくても、4歳くらいまでは心の理論が育っていないといわれています。社会性がまだ育っていないので「相手の立場に立って」はハードルが高いのです。この時期は、いきなり友達のおもちゃを奪い取ったり、たたいたりしてトラブルが多発します。「早く集団に入れれば社会性が育つだろう」と勘違いしている親御さんもいますが、0歳から保育園に入れた子どもの方が、3歳から幼稚園に入れた子どもよりも社会性が早く育つわけではありません。時期が来なければ育たないものもあるからです。

 こんなときは、相手の気持ちがどうこうではなく、「欲しいときはかみついたり、たたいたりしないで『貸して』と言おうね」と代替案を示したり、まだ言葉を発していないなら「貸して」と手を出す動作を大人が見せて、まねさせたりしましょう。

「共感の言葉」から声かけを

(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

 親は親同士の人間関係を大事にしたいがために、友達のおもちゃを奪い取ったわが子に「ごめんねは? ごめんねは?」と謝罪させようとしたり、自分のおもちゃを貸そうとしないわが子に「意地悪しないで貸してあげなさい。『いいよ』と言いなさい」と許容の言葉を言わせようとしたりします。その親の言葉を受けて「ごめんね」「いいよ」と言ったとしても、子どもは両者とも納得していないのです。

 おもちゃを奪い取った子どもは「とりあえず『ごめんね』」と言えば済む」と思い、同じことを何度も繰り返します。一方、譲ることを強要された子どもは「自分の気持ちを押し殺してまで相手を優先しなくてはならない」と幼いうちから思うようになってしまいます。

「自分中心」に生きている幼児期は、自分の気持ちを大切にされる経験を通して、相手の気持ちも分かるようになっていきます。ですから、大人はこう言いましょう。

「おもちゃが欲しかったんだね(共感)。でも、いきなり奪うのではなく『貸して』と言おうね」

「今、遊んでいるから貸したくないよね(共感)。でも、貸してほしいんだって。あと一回遊んだら貸してあげようか」

 大切なわが子の心の成長のために、まず子どもの気持ちを理解していることを示す共感の言葉をかけ、「こうすればいいよ」と具体的な行動を示しましょう。親しい間柄のママ友でないとなかなか難しいかもしれませんが、こうした解決法を教えることで、子どもは望ましい行動を取りやすくなると思います。

子育て本著者・講演家 立石美津子

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