あなたは「カキ」を食べて食あたりを起こしたことがありますか。冬に旬を迎え、クリーミーで濃厚な味わいが楽しめるカキですが、食べる際の心配事として「食あたり」を挙げる人はやはり少なくないようで、「一度あたってから怖くて食べられない」「カキであたると本当に地獄です」など、「あたるとつらい」「大好物だけど食べるのが怖い」という痛ましい体験談が多く聞かれます。
しかし一方で、「家族でカキを食べると、いつも私だけあたるんだけど……」「カキ大好きだから、あたりにくい体質になりたい」など、カキにあたりやすい/あたりにくい体質について疑問を感じている人も見受けられます。
カキによくあたる人と、そうでない人は何がどう違うのでしょうか。内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんが解説します。
「毎回あたる」人はアレルギーの可能性大
そもそも「食あたり」とは、食べ物や飲み物に含まれていた細菌やウイルス、毒素が原因で腹痛、下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、発熱などの症状を引き起こすことで、医学用語では「食中毒」といいます。発症までの時間は細菌やウイルスの種類によって異なり、例えば「ノロウイルス」は食後24時間から48時間ほどで発症しますが、「黄色ブドウ球菌」は1~5時間と短めです。
カキによる食あたりの原因として考えられるのは、「ノロウイルス」「腸炎ビブリオ」「貝毒」「アレルギー」です。ノロウイルスや腸炎ビブリオによる食中毒は、加熱で防ぐことができます。
ただし、加熱の温度や時間には注意すべきです。カキの中心部が、ノロウイルスは85~90度で90秒以上、腸炎ビブリオは60度以上で10分以上、加熱を必要とします。なお、貝毒はプランクトンを介して貝の中に毒素が蓄積するのですが、これは加熱しても毒性が弱くならないため、要注意です。
カキによるアレルギーは、腸炎ビブリオやノロウイルスによる食中毒よりも早い、食後1~2時間で症状が出始めるのが特徴です。発疹などの皮膚症状、喉のかゆみなどが併発する可能性が高いですが、これらが目立たずに、腹痛や下痢、吐き気、嘔吐などの症状だけが出るケースもあります。
このように、カキによる食中毒の原因はさまざまであり、人によって症状が出たり出なかったりと個人差があります。「カキやオイスターソースを食べると、毎回あたってしまう」などの自覚があれば、アレルギーの可能性が高いといえるでしょう。判断が難しい場合は血液検査で調べることができます。
「カキにあたりやすい人」があたらないようにできる?
ノロウイルスや腸炎ビブリオといった感染症の「かかりやすさ」「かかりにくさ」は、その人の持っている免疫力によって異なります。「食事の栄養バランスが悪い」「不規則な生活をしている」など、免疫力が落ちるような生活習慣の人は、カキにあたりやすくなるといえるでしょう。また、免疫力が弱い子どもや高齢者もあたりやすいと考えられます。
体調が優れないときは食中毒にかかりやすくなっているので、カキをはじめ、食中毒の可能性があるものは食べるのを控えるのが賢明です。
中には「カキが大好物なのに、よくあたるからつらい」という人もいると思いますが、カキにあたりやすい人があたらないようにするのは、残念ながら難しいと思います。先述したような生活習慣を改善して、免疫力を高めることであたりにくくなる可能性はありますが、カキの食中毒は複数の原因が存在するので、確実とはいえないのです。
ただし、カキにあたるリスクを減らすためにできることはあります。第一に「しっかりと加熱をする」ことです。そして、生のカキを扱う際は、調理器具の管理や手洗いにも十分に注意してください。調理前のカキが付着した調理器具を介して感染する可能性もあるためです。
もし、カキにあたってしまった場合は、症状によって対応を判断しましょう。下痢があるものの吐き気がなく、水分が摂取できる状態であれば、小まめに水分を取り、自宅で安静にしておいて問題ありません。一方、嘔吐が続く場合は脱水状態を引き起こすため、危険です。必ず病院を受診してください。特に、子どもや高齢者は脱水の症状に気付きにくかったり、急に悪化したりすることがあるので、早めに病院に相談することが大切です。
オトナンサー編集部