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ホームレスの実に4割が「今のままでいい」、そう考える背景には一体何が?ホームレスが答えた「現在の気持ち」とは

マイナビウーマン

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忙しい生活の中ではなかなか目に入ってこないものの、貧困は大きな社会問題の1つといえます。たとえば、ホームレスの存在は多くの子どもにとって遠い存在かもしれません。そこで、ホームレスについて知ることができる厚生労働省の調査をご紹介します。

1,169名のホームレスを対象に実態を調査

厚生労働省ではホームレス(※)の実態把握と自立支援を目的に、およそ5年ごとに全国で調査を行っています。本記事では2021年に実施された最新版の「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」の一部をご紹介。ホームレスの人はどのような気持ちで路上生活をしているのか、今後のことをどう考えているのか、という点に目を向けていきます。

なお、本調査は1,169名から有効回答が得られており、回答者の属性は男性が95.8%、女性は4.2%でした。最も多い年代は70~74歳(23.8%)、次いで65歳~69歳(20.0%)であり、60歳以上が7割となっています。

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※「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の第二条に規定された「ホームレス」をさし、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」。

関連記事▶【ホームレスの実態調査】今の路上生活になって「10年以上」が4割、高齢化が進む

路上生活になった理由

まずは、ホームレスが路上生活になった理由について見ていきます。

「仕事が減った」が約24.5%

最も多かった回答が「仕事が減った」24.5%、次いで「倒産や失業」22.9%となりました。自分から仕事を辞めたケースよりも、勤め先の経営状況などの影響を受けて職を失い、ホームレスにならざるを得なくなったケースが多いことがわかります。

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路上(野宿)生活をするようになった主な理由は何ですか?(複数回答)
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

コロナの影響も小さくない

では、ホームレスが職を失った背景に、新型コロナウイルスの影響はあるのでしょうか? 新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期にホームレスになった人を対象(※)に、路上生活になった理由のうちで新型コロナウイルスの影響があるものを聞いた結果を見てみましょう。

最も多かったのは「仕事が減った」で43.2%、続いて「倒産や失業」は21.6%となっています。新型コロナウイルスの影響は業種によっても変わってくるでしょうが、自身の仕事が何らかの影響を受け、その結果として路上生活に至ったというケースは決して少なくないようです。

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※調査時点で「今回の路上生活が3年未満」と回答した人を対象

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新型コロナウイルス感染拡大の影響について(複数回答)
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

周囲とのつながりは希薄化

職を失うということは社会との接点が1つ失われることでもあります。ましてや家も失うという状況に陥ってしまったホームレスの人は、社会的に孤立しているのではないかと懸念されます。周囲とのつながりについて、実際に聞いてみました。

「挨拶する相手がいない」人は28.2%

「挨拶をする相手がいるか」について質問した結果、「あてはまる」「ややあてはまる」を合計すると現在挨拶する相手がいる人は62.2%でした。いっぽうで「あてはまらない」と回答、すなわち挨拶する相手がまったくいないという人も28.2%と少なくありません。

また、これを路上(野宿)生活前の状況と比べると、「挨拶をする相手がいる」という人が減っています。ホームレスになって挨拶を交わすような相手がいなくなった人が、一定数存在しているようです。

ホームレスになる前よりも周囲とのつながりが薄くなっている状況がうかがえます。

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挨拶する相手がいますか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

「相談相手がいない」人は49%

同様に周囲とのつながりがどうなっているかという観点で、相談相手の有無についても見てみましょう。

困ったときに相談する相手がいるかどうかについて、現在相談相手がいない、もしくはいても少ない(「あまりあてはまらない」「あてはまらない」)という人が62.2%に及びました。多くのホームレスは相談相手がいないということがわかります。しかしこれは「挨拶」同様、ホームレスの人はもともと相談相手のいなかった人が多いというわけではありません。

路上生活前の状況ではどうだったかを見ると、相談相手がいる(「あてはまる」「ややあてはまる」)と回答した人が51.2%と過半数を占めています。したがってホームレスになってから、人とのつながりを失ってしまった人が多いといえます。さらに、「あてはまらない」の割合が大きくなり、相談相手がまったくいないという人が49.0%と約半数にまで増えています。

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困ったときに相談する相手はいますか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

今後の生活についてどう思っている?

ホームレスになって人とのつながりが減り、孤独になっている人が少なくないと想像されますが、その一方で今後の希望を聞いた回答を見ると、「今のままでいい」と思っている人が多いこともわかりました。

「今のままでいい」40.9%

今後、どのような生活を望んでいるかを聞いたところ、「今のままでいい(路上(野宿)生活)」が突出して多く、40.9%でした。「アパートに住み、就職して自活したい」が17.5%、「アパートで福祉の支援を受けながら、軽い仕事をみつけたい」12.0%と続いています。

また、過去の調査と比較すると、今のままを希望する割合は増加傾向となっています。

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今後、どのような生活を望んでいますか?
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

「今のままでいい」と思う理由

「今のままでいい」と回答した人466人にその理由を聞いてみると、「今の場所になじんでいるから」が29.0%で最も多くなりました。次いで「アルミ缶、雑誌集め等の都市雑業的な仕事があるので暮らしていける」が24.5%と続きます。

寝る場所が確保でき、ギリギリでもなんとか暮らしていけるため、それ以上を望まないということなのでしょう。路上生活を10年以上続けている人も多く(参照▶【ホームレスの実態調査】今の路上生活になって「10年以上」が4割、高齢化が進む)、ホームレスでの暮らしが長くなってもはや生活を変えたくない、あるいはそうした気力が下がっている――ということもあるのかもしれません。

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「今のままでいい」理由について
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

「なんとかなると思っている」が44.5%

ホームレスのままでいいと思っている人が少なくないことがわかりましたが、その裏にはどのような気持ちがあるのでしょうか。そこで最後に、「現在の気持ち」を尋ねた結果をご紹介します。

突出して多くを占めた回答は「なんとかなると思っている(少し希望をもっている)」で44.5%でした。次に多かったのは「あまり希望をもっていない」で24.7%。「希望を持っている」あるいは「悲観している」という人はいずれも1割以下であり、希望は多くないがゼロではないという人が多くを占め、それを前向きにとらえている人は「なんとかなる」と思い、後ろ向きに捉えている人は「あまり希望がない」と思うのでしょう。

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路上(野宿)生活をしている現在の気持ちについて
―厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」より

まとめ

ホームレスが現在の路上生活の状態に至った理由、周囲とのつながりの変化、今後の希望などについて見ていきました。ホームレスになると家や仕事だけでなく人間関係も薄くなり、社会とのつながりが弱くなってしまうことがうかがえます。それは暮らしにくい状態だと思われますが、「このままでいい」と思うホームレスも少なくないようです。ホームレスの支援ということを考えるうえでは、ホームレスがどのような気持ちで今の暮らしをしているのかを知ることも欠かせないのではないか、と思わせる結果でした。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果/厚生労働省
調査対象:ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第二条に規定するホームレス
※調査対象自治体は、東京都23区、政令指定都市及び令和3年1月調査(概数調査)で20名以上の報告があった市。
調査時期:令和3年11月
有効回答数:1,169名

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