ほかの移動手段と比べて割高だと思われがちな東海道・山陽新幹線。しかし、きっぷの制度を駆使すれば、往復割引や乗継割引などのサービスがあるほか、ツアー商品や会員制の「エクスプレス予約」など、お得に移動できる方法があります。
あえて片道を601km以上に 遠くへ行くほうが安くなる
東京~新大阪~博多間を走る東海道・山陽新幹線は、乗車するために「運賃」と「特急料金」が必要です。現在、東京~新大阪間の「のぞみ」普通車指定席を利用する場合、運賃と特急料金の合計は大人1万4720円で、年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期は200円増し、2月や11月の月~木曜日などの閑散期は200円引きになります。
これに加えて、国鉄時代から新幹線には様々な割引制度が設けられているほか、最近は購入時期や乗車時間帯によってお得になったり、乗車回数に応じてポイントが貯まったりするなど、飛行機のようなサービスも増えています。そこで、こうした「東海道・山陽新幹線をお得に利用する方法」をいくつか見てみましょう。
往復割引
JRでは、片道601km以上の距離を同一経路で往復し、かつ往路・復路のきっぷを同時に購入する場合、それぞれの運賃が1割引になるという制度があります。これが「往復割引」で、もちろん新幹線にも適用されます。たとえば、東京~新大阪間は552.6kmで往復割引は適用されませんが、東京~姫路間は644.3kmであることから往復割引の対象になり、往復運賃が通常2万20円のところ、割引で1万8000円になります。往復割引は条件を満たせば、きっぷの購入時に自動的に適用されます。
東海道・山陽新幹線で使われているN700系電車(画像:写真AC)。
これを応用し、千葉~新大阪間を移動する場合を考えます。同区間の片道距離は600kmに満たないため割引が適用されず、往復運賃は1万8920円です。しかし、たとえば宝塚駅(兵庫県宝塚市)までだと片道距離は600kmを超えます。すると割引が適用されて往復運賃は1万7600円となり、「遠いところまで行くほうが安くなる」という現象が発生します。あえて千葉~宝塚間の乗車券を往復で購入し、新大阪~宝塚間は乗らないのです。少しでも安く移動したいときには有効な方法でしょう。
1回の乗車で元がとれる 普通車の値段でグリーン車に乗れる
「エクスプレス予約」
「エクスプレス予約」は、2001(平成13)年に始まった、東海道・山陽新幹線の会員制予約サービスです。会員になるためにはクレジットカードの登録が必要ですが、年会費(サービス利用料)1100円を払えば、東海道・山陽新幹線を年間を通じて割引料金で利用できます。その金額は、東京~新大阪間の普通車指定席で1万3620円と、通常料金より1100円お得。つまり、東京~新大阪間を毎年1回乗れば、年会費の元がとれることになります。
また、「早特商品」が設定されているのもエクスプレス予約の魅力です。乗車日の3日前までの予約で、長距離区間の「のぞみ」が割引になる「EX早特」や、乗車日の21日前までの予約で早朝や昼間の「のぞみ」が割引になる「EX早特21」などがあり、後者の場合は東京~新大阪間が1万1200円と、通常よりも3520円も安く乗車できます。
「エクスプレス予約」の専用ICカード(2018年5月、草町義和撮影)。
さらに、エクスプレス予約には「グリーンプログラム」があります。東海道・山陽新幹線を利用すると、乗車区間に応じて自動的にポイントが貯まるものです。たとえば、東京~新大阪間は1回あたり90ポイント。貯まったポイントは1000ポイントで「のぞみ」、800ポイントで「ひかり」、600ポイントで「こだま」のグリーン車が、距離に関わらず普通車指定席の料金で1回利用できます。東京~新大阪間を6往復すれば、1080ポイントが貯まるので、出張や移動の多い人が「たまにはちょっと贅沢を……」というときにぴったりです。
ほかにも、交通系ICカードで乗車できる「スマートEX」(会費無料)や、普通車指定席を利用できる6枚セットの新幹線回数券、山陽新幹線には、JR西日本のインターネット予約サービス「e5489」で購入できる割引きっぷ「eきっぷ」などがあります。
JR東海ツアーズが販売するツアー商品
「ぷらっとこだま」
往復割引など、JR自体が設定している割引制度のほかにも、新幹線をお得に利用する方法があります。その代表例が、旅行会社の設定するツアー商品。ツアーといえば、往復の新幹線とホテルなどがセットになっていることがほとんどですが、そのなかで一風変わっているのが、JR東海ツアーズが販売する「ぷらっとこだま」です。
「ぷらっとこだま」は、その名の通り東海道新幹線の「こだま」号に乗れるツアー商品です。発売区間は東海道新幹線の主要駅間となっていて、代金は東京~新大阪間で大人1万700円(通常期)と、かなり割安。さらに1500円を追加すれば、グリーン車の利用も可能です。駅の売店でお茶などと引き換えられるクーポンもついており、「『のぞみ』に乗るほど急がないので、のんびり安く移動したい」という人には、まさにうってつけといえるでしょう。
東海道新幹線の各駅停車「こだま」(画像:写真AC)。
「ぷらっとこだま」はインターネットや電話による購入も可能です。その場合は、郵送でチケットを送ってもらえます。JR東海ツアーズの店舗なら、乗車日の前日まで購入できるため、急な旅行にも対応できます。ただし、座席数に限りがあるので、予定が決まったら早めに購入するとよいでしょう。
トータルでお得に 新幹線の前後で在来線特急に乗る
新幹線の運賃や料金が直接安くなるわけではありませんが、旅行トータルでお得に移動する方法があります。
乗継割引
新幹線が開業すると在来線特急は運行区間の見直しが行われ、新幹線と並行する区間は運転取りやめとなることがほとんどです。つまり、新幹線と在来線特急を乗り継ぐことが前提になるのですが、特急料金は新幹線と在来線特急を分けて計算しますので、高額になってしまいます。そこで、このような場合に在来線特急の特急料金を半額にする制度があります。それが「乗継割引」です。
たとえば東京駅から米原駅(滋賀県米原市)まで新幹線で行き、そこから特急「しらさぎ」に乗り換えて福井駅へ行く場合は、「しらさぎ」の特急料金が半額になります。つまり、乗継割引は「新幹線をお得に利用できる」ものではありませんが、新幹線の前後で在来線特急に乗る場合は、「トータルでお得になる」というわけです。
東京~岡山間で寝台特急「サンライズ瀬戸」を、そのあと新幹線を利用した際に適用された乗継割引。特急料金が通常の半額だ(2014年9月、乗りものニュース編集部撮影)。
ただし、乗継割引を利用するためには、新幹線と在来線特急の特急券を同時に購入する必要があります。また、購入後に新幹線の特急券を変更したり払い戻したりするには、在来線特急の特急券を一緒に提示する必要があり、場合によっては乗継割引が適用されなくなります。さらに、東京・品川・小倉・博多の各駅で乗り継ぐ場合は対象外であるなど、いくつかの注意点があります。とはいえ、知っていて損のない制度ですので、ぜひ活用したいところです。