チャンピオンズリーグ(CL)第6節、バイエルン・ミュンヘン対トッテナムの一戦が現地11日に行われ、ホームチームが3-1で勝利を収めた。両者決勝トーナメント進出を決めている中で、エースをスタメンから外して挑んだ。特にトッテナムはこれまで出場機会に恵まれない選手を起用したが、ドイツ王者を前になす術なし。防戦一方の展開となった。(文:松井悠眞)
エースを外した両チーム
チャンピオンズリーグ(CL)第6節、バイエルン・ミュンヘン対トッテナムの一戦が現地11日に行われ、ホームチームが3-1で勝利を収めた。両者決勝トーナメント進出を決めている中で、エースをスタメンから外して挑んだ。特にトッテナムはこれまで出場機会に恵まれない選手を起用したが、ドイツ王者を前になす術なし。防戦一方の展開となった。(文:松井悠眞)
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トッテナムのホームで行われたチャンピオンズリーグ(CL)第2節の直接対決は、バイエルン・ミュンヘンが7-2という圧倒的なスコアで勝利を収めた。トッテナムにとってこの試合はリベンジマッチと言ってもいいだろう。しかし結果は敗北。またしても散々な内容となってしまった。
バイエルンはリーグ戦2連敗中、直近5試合を見ても2勝3敗と負け越している。そのため順位は7位まで沈み、首位との勝ち点差が7まで開く危機的状況だ。しかしCLでは全勝しており、文句なしでグループステージ突破を決めている。
一方のトッテナムはモウリーニョが就任して以降調子を上げて、公式戦5試合を戦い4勝1敗と立て直した。CLでは3勝1分1敗で2位。こちらも決勝トーナメント進出を決めている。
この試合は勝敗に関わらずバイエルンの首位通過が決まっているため、両チームともにエースをスタメンから外した。特にトッテナムはこれまで出場機会に恵まれていなかった選手が多く起用された。
バイエルンは4-3-3のシステムで、最終ラインは左からDFアルフォンソ・デイビス、ハビ・マルティネス、ジェローム・ボアテング、バンジャマン・パバールで形成。中盤はMFヨシュア・キミッヒを底に置き、MFフィリッペ・コウチーニョ、チアゴ・アルカンタラを配置した。前線3枚は左からFWキングスレー・コマン、イバン・ペリシッチ、セルジュ・ニャブリを並べた。
一方のトッテナムはお馴染みの4-2-3-1のフォーメーションで、最終ラインを左からDFダニー・ローズ、トビー・アルデルワイレルド、ファン・フォイ、カイル・ウォーカー=ピータースで形成。中盤の底はMFエリック・ダイアーとMFムサ・シソコのコンビで、その一列上に左からMFライアン・セセニョン、クリスティアン・エリクセン、ジオバニ・ロ・チェルソを配置した。ワントップにはFWルーカス・モウラを置いた。
試合は90分間通してバイエルンが主導権を握る。幅を取った攻撃で相手を左右に揺さぶり、相手のDFラインにずれを生み出そうとする。トランジションの部分でも切り替えが早く積極性を感じた。
一方のトッテナムは中央を固めてサイドを捨てるような守備陣形。しかしそのディフェンスが機能をしたということはなかった。また消化試合ということもあってか、同チームは前半の開始直後はアグレッシブに前線からプレスをかけたが、次第に重心が後ろに下がってしまう。攻撃面でもボールをキープできる選手がおらず、すぐに奪われてしまうためリズムを作ることが出来なかった。
試合を掌握したバイエルン
このような状況の中で先制点を奪ったのは、やはりホームチームだった。13分にニャブリが左サイドでフリーになっていたコマンにスルーパスを供給。それをコマンが落ち着いて決めた。
先に得点を奪われたトッテナムは右サイドから攻撃を組み立てる。そして19分にロチェルソのパスがDFに当たり、そのこぼれ球をセセニョンが流しこんだ。早い時間に追いつくことが出来たトッテナムだが、その後目立ったチャンスは数回しか作ることが出来なかった。
そして23分にバイエルンに悲劇が襲う。ここまで主力として活躍をしてきたコマンが左膝を負傷したのだ。少しゾッとするような形で膝を負傷してしまい、本人も「やってしまった」という表情を浮かべた。大怪我に泣かされ続け、今季こそと意気込んでいた選手なだけに怪我の具合が心配だ。そして同選手の代わりにトーマス・ミュラーが投入された。
そのミュラーが44分に追加点を奪う。左サイドのデイビスのシュートがポストに当たり、跳ね返ったボールをミュラーが流し込んだ。
そして63分にコウチーニョが、自らが得意としているゾーンから3点目を奪う。その後もバイエルンは攻撃の手を緩めることなく相手ゴールに迫り続ける。データサイト『Who Scored』によると、バイエルンはポゼッションが69.9%:30.1%、シュート数は24本:7本、そのうち枠内シュートが11本:5本。パス本数は695本:298本、パス成功率は88%:70%と内容でも圧倒した。特にシュート数は3倍以上も放っており、パス本数とパス成功率でも大きく上回っている。
明らかになった力の差
両者絶対的エースを温存して挑んだが、力の差が顕著に現れてしまった。バイエルンはレバンドフスキが不在でもやるべきことが出来ていた。ボールサイドのウインガーがやや中央寄りにポジションを取ったことで中央の枚数が厚くなる。そのため逆サイドの選手がフリーとなり、そこにボールを供給することが出来た。実際に先制点の場面はその形からの得点であった。
また狭いスペースでもしっかりとパスを繋ぐことが出来る技術の高さも見られた。そのためバイタルエリアでもパスを簡単に繋ぎ、狭いエリアから広いエリアへのパスもスムーズに出すことが出来た。また2列目の選手が流動的にポジションを変え、次から次へと裏を狙う選手達で溢れていた。全体的に見てもバイエルンの選手達の方が優れていたと言える。
中でも左SBのデイビスは輝きを放っていた。持ち前のスピードを武器に左サイドを支配していた。またそれだけでなく果敢にボックス内に侵入していく姿を見せた。ウォーカー=ピータースとのマッチアップでも相手に仕事をさせることはなく、完全に押さえ込んだ。
一方のトッテナムは前述した通り、全体的に重心が後ろにあったため攻撃時に人数をかけることができず、前線からのプレスも連動性が見られなかった。またプレスをかける選手がおらず、プレスをかけても簡単に抜かれてしまう。それが原因で、中央にはスペースができ簡単にドリブルでバイタルエリアまで侵入させてしまった。
それだけでなくメンタル面でも劣っていた。消化試合ということでモチベーションを保つことが出来なかったのかもしれないが、この試合は新体制後最も酷い試合になったと言っていいだろう。前線から行く積極的なプレスは見られず、ずるずるとラインを下げてしまう。リーダーシップを執る選手が誰もいなかった。負けるべくして負けたとい試合内容であった。
トッテナムは前回対戦で、フルメンバーで挑んだにも関わらず大差を付けられて敗戦した。やはり両者の間には目に見える「差」というものが存在している。この2戦でそれを痛感する試合となった。
(文:松井悠眞)