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「なんだコンテナか」実はミサイル発射機だった!? 現代戦における擬態 バレない以外のメリットは

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一見すると民間のISOコンテナにしか見えないミサイル発射機を、スウェーデンのサーブ社がユーロサトリ2024で展示していました。これには民間コンテナへの擬態だけではなく様々なメリットがあるそうです。

姿を隠すんじゃない。実態わからなくするんだ

 軍事の世界では、自身の姿形や存在を隠すために「カモフラージュ」という手法が使われます。一般的には自身を視覚的に周囲へ溶け込ませる迷彩塗装や、外側を偽装網で覆って姿を隠す方法などがよく知られています。

 しかし、これらとはまったく異なる、そしてある意味でユニークなカモフラージュがヨーロッパの軍事見本市で披露されました。

Large 240710 container 01陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(画像:陸上自衛隊)。

 2024年6月にフランスのパリで開催された安全保障関連の見本市「ユーロサトリ2024」において、スウェーデンのサーブ社は民間コンテナをベースにした地対地ミサイルのランチャー(発射機)を出展していました。

 これは、地対地ミサイルGLSDB(地上発射型小口径爆弾)の6連装ランチャーを、民間で広く使われているISO(国際標準化機構)規格の20フィート(約6m)コンテナに設置したものです。

 民間規格のコンテナのため、輸送は専用トラックであれば軍民問わず可能。射撃する際は、地面に置いてコンテナ上部のハッチと後部ドアを開放すると、中からランチャーが斜めに起き上がります。しかし、それらを収納しハッチとドアを閉じてしまえば、その外観は市井のコンテナとまったく同じになります。

 このランチャーの一番の特徴は、ランチャーを収納した状態では、その中身が何なのかまったく判別できなくなることです。姿そのものを隠すことはできませんが、「正体を隠す」という意味では極めて優れたカモフラージュだと言えるでしょう。

 メーカー担当者も「その対象物が正体不明であれば、軍隊では攻撃に使われる砲弾やミサイルといった弾薬には限りがあるので、それを攻撃するとは思いません」と説明していたことから、このカモフラージュのやり方は戦場での生存性向上に繋がると考えているようです。

ウクライナ戦争の教訓もバックグラウンドに

 なお、このような新しいカモフラージュを採用した理由については、現代の戦場において遠方から射撃を行う自走砲やランチャーシステムであっても、その生存性が低下していることを挙げていました。

「多くのアナリストたちが指摘していますが、戦場においてミサイルや火砲が射撃を行うと、相手は対砲レーダー(発射された物体の弾道を計測し、そこから逆算して発射地点を割り出す)などのセンサーを使って瞬時にこちらの発射位置を特定し、数分後にはその上空にドローンを飛来させることができます。ただ、このシステムであれば天井のハッチと後方のドアを閉めてしまえば、それが発射機であるかは誰も判別できなくなるため、相手から攻撃を受ける可能性を減らすことができます」

Large 240710 container 02「ユーロサトリ2024」に展示されたサーブ社のコンテナ型ミサイルランチャー(布留川 司撮影)。

 メーカー担当者は具体的な事例までは説明してくれませんでしたが、これは恐らく現在も続くウクライナ戦争での実例に基づくものだと推察されます。この戦争では、ドローンが大規模に投入されており、ロシアとウクライナの双方とも効果的に活用しています。

 戦場では新たな戦訓やノウハウが常に生み出されており、各国の軍隊や防衛産業はそれらに対応しようと新しい運用法の確立や新装備の開発を進めています。前出の新型ランチャーが民間コンテナによく似たデザインとなったのも、ウクライナ戦争での最新事情が元になっているのでしょう。

民間規格のコンテナにした理由はほかにも

 このランチャーには複数の派生型があり、そもそもの開発コンセプトは、GLSDB用のランチャーをさまざまな形で開発することにあるようです。

 前出のISOコンテナ仕様以外にも、剥き出しになったランチャーをトラックに積載する「ライト・ソリューション」と呼ばれるタイプがあるほか、軍艦に搭載するタイプのランチャーも開発する予定だといいます。

 また、ISO規格のコンテナを利用した理由は、カモフラージュ以外にもあるとのこと。物流業界の標準規格を採用することで、世界中のあらゆる種類のトラックで輸送できるようになるため、運用面での柔軟性が向上するほか、導入・運用面でのコスト削減が期待できるそうです。

 実際、ISO規格のコンテナを軍用機器のプラットフォームとして利用するアイデアは、サーブ以外にもアメリカ、中国、ロシアなど各国の防衛企業がこれまでにも発表しており、それらの多くはやはりカモフラージュ以外の目的として、輸送と展開の効率化を狙ったものばかりでした。今回の「ユーロサトリ2024」でも、ドイツのラインメタル社がISO規格のコンテナベースにしたドローン発射機のコンセプトを発表していました。

Large 240710 container 03陸上自衛隊輸送学校の10tトラック(PLS付)。荷台に民間輸送用の20フィートコンテナを搭載している(画像:陸上自衛隊)。

 軍事の世界では、戦闘車両といえば履帯式(いわゆるキャタピラ)の車両が定番でしたが、現在は陸上自衛隊の16式機動戦闘車や19式装輪自走155mmりゅう弾砲などのように、機動性を向上させる目的で装輪式(ホイール)の戦闘車両が増えつつあります。

 ミサイルについても、12式地対艦誘導弾や03式中距離地対空誘導弾の発射機のようにトラックタイプのものが増えています。それらを鑑みると、あらゆるトラックで輸送できるISOコンテナ式のランチャーというのは、かなり有用だと言えるのではないでしょうか。

 兵器もユニット化やモジュラー化が進んでいます。ひょっとしたら、機動性と効率化を目指して、このようなコンテナ式の発射機が数年後には各国の軍隊に普及しているかもしれません。

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