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線路幅1067 1372 1435mm… 半端な数字のワケ 高速化 地下鉄建設などと絡む鉄道の歴史

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日本の鉄道の線路幅は、多くが狭軌と呼ばれる1067mmですが、新幹線や一部の私鉄では標準軌の1435mm、路面電車などでは馬車鉄道由来の1372mmといったものがあります。いずれも中途半端に見える数字ですが、どのような理由からでしょうか。

日本は狭軌を多く採用 中途半端な数字はフィート、インチ由来

 日本の鉄道の線路幅は、JR在来線や多くの私鉄が1067mm、新幹線と、JR在来線のうち田沢湖線、奥羽本線の一部区間のほか、京急電鉄や阪急電鉄など一部の私鉄が1435mm、京王電鉄や都電荒川線、東急世田谷線などが1372mmと、いずれも一見「中途半端な数字」になっています。

Large 200507 gauge 01鉄道の線路(画像:PAKUTASO)。

 これは鉄道発祥の地であるイギリスが、線路の幅を決める際、当時使用されていた長さの単位であるフィートやインチで定めたことによるもので、これをメートル法に換算しているためです。

 フィート、インチで表すと、1067mmは3フィート6インチ、1372mmは4フィート6インチとなります。1フィートは12インチなので、6インチというのは2分の1フィートと考えれば、これらが「キリの良い数字」であることが分かります。

 同じように1435mmをフィートに換算すると、4フィート8と2分の1インチとなります。8インチは3分の2フィートですからキリがいいとしても、2分の1インチが中途半端です。これについては諸説あり、一説によると、元は4フィート8インチだったものを、カーブで列車がスムーズに走れるよう2分の1インチ広げた、とのことです。

 イギリスではこの1435mmを「標準軌」とし、それより狭い幅の線路を「狭軌」、広い幅を「広軌」としました。日本は最初の鉄道建設時に、狭軌である1067mmを採用しています。

 基本的に、線路の幅が広いほど、車体も幅の広いものを使うことができるので、輸送力は大きくなります。それゆえに、東海道本線の大きな輸送需要を救済するために建設された東海道新幹線は、1435mmの標準軌を採用しました。

 一方で狭軌は、より急なカーブを敷設できたり、用地買収が標準軌よりも容易になったりといったメリットがあります。

路線によって、色々な線路幅が存在する理由

 日本に鉄道を建設する機運が高まった時期に、イギリスでは狭軌ブームが巻き起こり、標準軌に比べて建設自由度の高い狭軌はいわば「流行の最先端」ということで、イギリスの植民地を中心に広く採用されました。

 この当時、すでに車両の大型化技術が確立し、線路の幅をあえて広くせずとも輸送力は狭軌で遜色なくできるという主張がイギリスでなされていました。一説では、同国の技術で建設される日本の鉄道も、その流れに乗って狭軌が採用されたとされています。

Large 200507 gauge 02京王電鉄に乗り入れるため、1372mmゲージを採用した都営新宿線。日本で1372mmゲージは少数派(2011年1月、児山 計撮影)。

 ところで、線路の幅は全国で統一されていたほうが車両の乗り入れなどで有利ですし、国を含む鉄道事業者がほかの鉄道事業者の路線を買収するような際も、幅を変更する手間がかかりません。たとえば狭軌の在来線に標準軌の新幹線電車が乗り入れるJR奥羽本線では、在来線用と新幹線用に3本のレールを敷設するなど、手間がかかっていますが、同じ線路幅ならもっと簡素にできたでしょう。しかし、日本の鉄道は結果として、多様な線路幅となります。

 日本の鉄道を建設、運営するための法律である「地方鉄道法」では、線路の幅は1067mmであることと決められていましたが、路面電車を建設、運営するための法律である「軌道法」はその制限を受けませんでした。1890年代になると日本で「電鉄ブーム」が巻き起こり、米国の都市間電車に範をとった鉄道会社が、この軌道法を根拠に、大きなモーターを搭載して高速運転が可能な1435mmの標準軌をこぞって採用します。

 さらに、馬車鉄道から電気鉄道になった東京都電などは、馬車鉄道時代の線路幅である1372mmのまま電車化しました。

直通先に合わせ… 都営地下鉄は3種類の線路幅が存在

 一方、鉄道建設を推進するため、簡素な規格で廉価に建設することを目的とした「軽便鉄道法」に基づいて建設された路線では、1067mmより幅の狭い914mm(3フィート)や762mm(2フィート6インチ)を採用するものも現れ、多種多様な線路幅となって現在に至ります。

Large 200507 gauge 03日本に残る珍しい914mm(3フィート)ゲージの、小岩井農場まきば園の軌道。馬の横の足幅に合わせて914mmが選択されたといわれる(2013年5月、児山 計撮影)。

 戦後建設された地下鉄は、直通先の鉄道の線路幅に合わせて建設されるのが通例なので、その線路幅は路線によってまちまちです。

 たとえば都営地下鉄において、浅草線は京急電鉄に合わせて1435mm、三田線は乗り入れ予定だった東武東上線、東急池上線に合わせて1067mm、新宿線は京王電鉄京王線に合わせて1372mmと、3つの異なる線路幅が見られます。また、浅草線と直通する京成電鉄は、京急電鉄に合わせて1372mmから1435mmに線路幅を改める大工事を行っています。

 このように一見、中途半端に見える線路の幅ですが、そこには鉄道の長い歴史が隠されているのです。

 なおフィート、インチを採用し、現在でもその寸法がそのまま使われているのは、線路の幅以外にもいろいろあります。たとえばJR在来線ホームの高さは、2020年現在760mm(約2フィート6インチ)、920mm(約3フィート)、1100mm(約3フィート6インチ)の3種類が使われています。さらに、多くの私鉄車両の車体幅は2744から2800mm(約9フィート)となっています。

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