旅客機の搭乗券には、座席番号や名前とともに座席グレードが記載されていますが、ビジネスはなぜか「C」の略称が記載されていることが多いです。なぜこのような略し方なのでしょうか。
発端は伝説の「パンナム」?
旅客機の座席グレードはおおまかに上位から「ファーストクラス」「ビジネスクラス」「エコノミークラス」に分けられるというのが一般的です。搭乗券には、座席番号や名前とともにこのクラスが記載されますが、ビジネスは「C」と記載されているのです。なぜこのような略し方なのでしょうか。
ANAの最新ビジネスクラス「The Room」(2019年、伊藤真悟撮影)。
ビジネスクラス草創期に大きなインパクトを与えたのが、かつてアメリカにあった大手航空会社パン・アメリカン航空(パンナム)です。当時、ファーストクラスとエコノミークラスの中間席を配置する流れは世界的なトレンドとなっており、例えばオーストラリアのカンタス航空は「1979年、世界で初めてビジネスクラスの航空旅行を導入した」と主張しています。
しかし1978年当時、世界最大級の巨大航空会社だったパンナムが「クリッパークラス」という新クラスを導入します。「クリッパー」は戦前にパンナムが運航していた飛行艇たちの愛称に端を発するもので、この単語は機体の愛称やサービス、同社機のパイロットと管制官のやり取りで用いられるコールサインなどで使用する、いわば代名詞的存在となっており、ビジネスクラスに相当する新座席にもその名前が付けられました。
ビジネスクラスの「C」の表記は、この「クリッパー」の頭文字「C」に由来する――というのが最も有力な説です。なおパンナムはすでに運航を終了しているものの、JAL(日本航空)やANA(全日空)など日本の航空会社でも2024年現在、ビジネスクラスの搭乗券は「C」で表示されています。
このほかにもパンナムは、例えば現代のスタンダードなパイロット制服の生みの親としても知られており、同社の影響力の大きさが「ビジネス=Cクラス」がスタンダードとなった一因かもしれません。