外出時に転んだり、調理中に包丁で手を切ってしまったりするなど、日常生活ですり傷や切り傷を負ってしまうときがあります。その際、すぐに消毒液を患部に付ける人がいますが、問題はないのでしょうか。消毒液の正しい使い方について、薬剤師の真部眞澄さんに聞きました。
傷の治りを遅くする可能性
Q.そもそも、市販の消毒液の役割について、教えてください。どのようなときに使うとよいのでしょうか。
真部さん「消毒液は、ばい菌への感染が疑われる場所で負ったすり傷、切り傷に使用するものですね。以前はすり傷や切り傷を負ってしまったら、まず消毒液での消毒を行うのが適切とされていましたが、現在は傷口を流水で洗ってから乾燥させずに、被覆材で覆って治すという、湿潤療法(モイストヒーリング)の方が治癒効果があるとされています。そのため消毒液は、すり傷と切り傷ができた際にどうしても必要というものではなくなりました。
もし優先的に使うことがあるとすると、外出時にけがをしてしまったとき、周囲に清潔な水がなく傷を洗えない場合や、ばい菌への感染が疑われるすり傷、切り傷を負った場合に洗浄と殺菌を兼ねて使用するという方法が考えられると思います」
Q.一部のケースを除き、「すり傷や切り傷を負ったときは消毒液を使用してはいけない」という話を聞きますが、本当なのでしょうか。
真部さん「これは本当で、主な理由は3つあります。1つ目は消毒液が細菌だけでなく、傷を修復してくれる作用のある正常な細胞にもダメージを与えてしまうことです。
2つ目は傷や炎症がある場合に、血管から組織にしみ出し傷の治癒を助けてくれる、透明で淡黄色の滲出液(しんしゅつえき)の成分を、消毒液が壊してしまうことが挙げられます。
3つ目は細菌は再付着するものなので、消毒液を使ったとしても持続的な殺菌効果は得られないということです。
このような理由から、すり傷や切り傷を負ったら消毒液は使わず、傷口を流水で洗って、乾燥させずに保護する湿潤療法をお勧めします」
Q.もしも間違った方法で消毒液を使った場合、体にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。
真部さん「これには主に、4つの影響が考えられます。1つ目は、傷の治りが遅くなってしまうことです。消毒液は正常な皮膚細胞を傷つけ、乾燥を招きかさぶたができやすくなるんですね。かさぶたがあることにより、かさぶたの下の皮膚細胞の再生が遅くなり、傷の治りが遅くなってしまいます。
2つ目は、傷跡が残りやすくなることです。乾燥やかさぶたによって皮膚再生の遅れを招いた結果、瘢痕(はんこん)が目立ちやすくなってしまうんですね。
3つ目は、感染リスクの増加です。最初のうちに消毒液で殺菌したからと安心して、その後のケアを怠りがちになると、再付着した細菌によって感染が長引いてしまうリスクが高くなってしまいます。
4つ目は、皮膚への刺激で炎症やかぶれを招くリスクです。アルコールやヨード系の消毒液は皮膚への刺激が強いので、炎症やかぶれが起きる可能性があります。特に敏感肌の人や子どもは特に注意が必要です」
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すり傷や切り傷を負ってしまったら、消毒液を使いたくなってしまいがちですが、まずは流水で洗うことが絶対条件だといいます。現在は、この湿潤療法が傷治療の主流となっているとのことで、消毒液は、ばい菌に感染するリスクがありそうな場所で負傷した場合や、外出先で負傷し傷口を水で洗うことが困難な場合にのみ、使用するのがお勧めとのことです。
オトナンサー編集部
