ついに配備! 射程1000kmの新型ミサイル
防衛省は2026年3月31日、熊本県の陸上自衛隊健軍駐屯地に所在する第5地対艦ミサイル連隊に、最新鋭の長射程地対艦ミサイルである「25式地対艦誘導弾」を配備したと発表しました。
12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の発射試験の様子(画像:防衛省)。
25式地対艦誘導弾は、これまで「12式地対艦誘導弾能力向上型」という名称で開発が進められてきたものです。地上車両から発射して洋上の敵艦艇を撃破するための装備ですが、これまで陸上自衛隊が運用してきた同種のミサイルとは一線を画する性能を有しています。
たとえば射程に関しては、これまで配備されてきた中では最新の12式地対艦誘導弾が約200kmとされているのに対して、25式地対艦誘導弾は約1000kmに及ぶとみられています。
また、25式地対艦誘導弾では敵のレーダーによる探知を避けるためにステルス性を意識したデザインが取り入れられているほか、衛星経由で地上装置から飛翔中のミサイル本体に指令を送る「アップ・トゥ・デート・コマンド(UTDC)」が実装されており、目標が移動した場合でもそれに応じて飛翔経路を変更することができるとされます。
さらに、25式地対艦誘導弾をベースとする艦艇発射バージョン(12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型))および航空機発射バージョン(12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型))もそれぞれ開発が進められており、いずれも2028年度中に運用開始が予定されています。ちなみに、艦発型は海上自衛隊横須賀基地を母港とする護衛艦「てるづき」に、空発型は航空自衛隊の百里基地(茨城県)に配備予定のF-2戦闘機(能力向上型)に、それぞれはじめに搭載される予定です。
●「めっちゃ遠距離から攻撃能力」の中核
25式地対艦誘導弾は、防衛省が整備を進める「スタンド・オフ防衛能力」の中核をなす装備品です。スタンド・オフ防衛能力とは、日本に侵攻してくる敵部隊を早期に遠方で撃破するための能力のことで、シンプルに言えば「射程の長いミサイルで敵を遠距離から攻撃する能力」を指します。たとえば、日本の島嶼部に上陸した敵部隊や接近する敵艦隊を、九州や本州を含む安全な場所から巡航ミサイルなどで攻撃する、といった具合です。
日本において、スタンド・オフ防衛能力の整備がスタートしたのは、2018(平成30)年に策定された防衛大綱(「平成 31 年度以降に係る防衛計画の大綱について」、通称「30大綱」)と「中期防衛力整備計画(中期防)」においてのこと。中国の軍事力増強にともない、南西諸島を含めた日本の島嶼防衛能力の大幅な拡充が求められたことを受けて、スタンド・オフ防衛能力の整備が明記されました。
その後、2020(令和2)年12月に「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について」と題された閣議決定が行われ、ここで12式地対艦誘導弾能力向上型の開発が明記されました。そして2022年12月、いわゆる「安保関連三文書」が策定され、2027年度までに地上発射型および艦艇発射型のスタンド・オフ・ミサイル(長射程ミサイル)を配備することが決定されたのです。
この地上発射型のミサイルの一つが、25式地対艦誘導弾だったわけです。
25式は“序の口”? さらに高性能なミサイル開発へ
じつは、安保関連三文書ではスタンド・オフ防衛能力について、2段階の整備方針が示されています。第1段階は2027年度までの完了を目指すもので、こちらは敵を探知・攻撃するためのセンサーやミサイルなど、スタンド・オフ防衛能力を実現するために必要な体制の整備を一通り完了することを目標としています。
防衛省が公開した新地対艦・地対地精密誘導弾のイメージ(画像:防衛省)。
第2段階は2032年度で、こちらでは新型のスタンド・オフ・ミサイルの導入を含めた攻撃手段の多様化を目指すとされています。
じつは、この第2段階の整備方針の中に、25式地対艦誘導弾よりも高性能な地対艦ミサイルの導入が盛り込まれています。それが「新地対艦・地対地精密誘導弾」です。
このミサイルは2025年から開発が開始されたもので、従来のミサイルと比べて目標への誘導性能や貫徹能力に優れているといいます。その名の通り、このミサイルは洋上を進む敵艦艇だけではなく、敵の飛行場や港湾、指揮施設など地上の重要目標を攻撃することも可能です。
筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は、この新地対艦・地対地精密誘導弾の開発を担当している防衛装備庁に取材を行いました。まず、このミサイルは目標の識別や命中箇所の指定が可能であるなど、25式地対艦誘導弾に比べて誘導性能が優れているといいます。
「『新地対艦・地対地精密誘導弾』については、25式地対艦誘導弾と比較し、より精密に目標類別及び命中部位指定が必要な目標への対処等を可能とするものとなるよう開発に着手しているところです」(防衛装備庁)
また、先行する25式地対艦誘導弾の開発で得られた成果が、新地対艦・地対地精密誘導弾に活用されているかどうかについては、「一般的に」と前置きしたうえで、次のように述べました。
「一般的に、効率的かつ合理的な研究開発が行われるよう25式地対艦誘導弾に限らずこれまでの研究開発で得られた知見や成果を活用することとしていますが、個別の技術内容や、特定の装備品との技術的な継承関係については、運用や能力が推察されるおそれがあるため、お答えを差し控えます」
このように、まずは25式地対艦誘導弾によりスタンド・オフ防衛能力を整備したのち、より高性能な新地対艦・地対地精密誘導弾で能力強化をはかるというのが、防衛省の方針というわけです。
