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旬のイクラ&すじこにも「アニサキス」? 安全に食べるには? 注意点&調理法を専門家が解説

オトナンサー

食べ物

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イクラやすじこにもアニサキスが潜んでいる?
イクラやすじこにもアニサキスが潜んでいる?

 魚の内臓には、「アニサキス」と呼ばれる寄生虫が潜んでいることがあります。生きたまま食べてしまうと、食中毒の症状を引き起こすため注意が必要です。ところで、秋はサケが旬を迎えますが、SNS上では、「イクラやすじこにもアニサキスが付着している」という内容の情報も見掛けます。イクラやすじこにもアニサキスが付着していることは、本当にあるのでしょうか。

 イクラやすじこにアニサキスが付着しているケースや対処法などについて、魚食の普及活動や水産物の消費拡大に取り組む、一般社団法人大日本水産会・魚食普及推進センター(東京都千代田区)の早武忠利さんに聞きました。

加熱、冷凍でアニサキスが死滅

Q.そもそも、イクラとすじこの違いについて、教えてください。すじこの筋を取り除いたのがイクラということでしょうか。

早武さん「その通りです。すじこは卵巣膜の房に入った筋が付いた状態、イクラはバラバラになった状態です。

そもそもイクラはロシア語で『魚卵』という意味で、サケの卵だけでなく、キャビアなども含まれます。一方、日本では、一般的にサケのおなかから取り出した房に入った筋付きの卵の状態をすじこ、それをバラバラにした状態のものをイクラと呼んでいます。

ちなみに皆さんが食べるすじこには、大きく分けて2種類あります。『生すじこ』は秋に日本近海で取れる『シロザケ(秋サケ)』から取り出されたすじこで、鮮魚と同じように冷凍されていない状態です。ほぐした後、しょうゆなどで味付けして食べるのが一般的です。

『冷凍すじこ』は、海外産のサケを中心に1年中食べられる冷凍の商品で、味付けや塩漬け後、冷凍された状態で流通していることが多いです。1年中イクラやすじこ丼が楽しめるのも、旬を閉じ込めた冷凍イクラや冷凍すじこがあるためです」

Q.市販のイクラや生すじこ、冷凍すじこにアニサキスが付着しているケースは、比較的多いのでしょうか。

早武さん「可能性はゼロではありませんが、過度に心配する必要はありません。それぞれについて考えていきましょう。

まず、アニサキスを含む寄生虫は全て、加熱や冷凍により死滅します。そのため、冷凍すじこや冷凍イクラは、冷凍されているのでアニサキスによる食中毒の心配がないことをまず覚えてください。

一方でサケのおなかから取り出された生すじこは内臓の一部なので、アニサキスが付いている可能性が全くないとは言い切れません。ただ、イクラに付着するアニサキスは一般の人でも見つけやすいため、比較的容易に取り除くことができます。ましてやプロの鮮魚店や工場で作られた生イクラの場合、確実に除去されているので心配無用です。安心してください。

少し気を付けたいのが、自家製のイクラです。自分の手で『旬の食べ物を楽しみたい!』『生すじこからイクラを作ってみたい!』という人におススメのイクラ作りがあります」

Q.では、自宅で生すじこをイクラに加工する場合、アニサキスによる食中毒を防ぐためには、どのような作業が必要なのでしょうか。

早武さん「生すじこをイクラに加工する方法はさまざまです。私自身、10年以上、生すじこをお湯の中でバラバラにして作り続けてきましたが、これから紹介する方法を始めてから、時間の無駄だったと後悔しています。

皆さんにはそんな無駄を味わってほしくないので、家庭でも確実に安全で、ラクチンな方法を紹介します。加工工場や鮮魚店で行われる効率的な加工方法と、仮にアニサキスがいたとしても確実にやっつける方法です。手順は次の通りです」

(1)すじこの筋・薄皮と卵をバラバラにする
100円ショップなどで売られている網を丼の上に載せた後、その上に生すじこを置き、上から円をかくように押さえつけると、卵がバラバラに丼に落ちていきます。『卵が割れそう』とヒヤヒヤするかもしれませんが、サケは産卵後に卵を川底の石で隠すので、ちょっとやそっとの力では潰れません。卵の弾力から生命力を感じることができる素敵な体験にきっと驚くでしょう。

(2)食塩水で洗って汚れや筋を取る
バラバラになった卵を塩分濃度1~3%の食塩水でざっと洗い、すじこに付着した汚れを取ります。ざるがあると便利です。卵に残っている筋は、指で取りましょう。

(3)お湯でアニサキスを死滅させる
慣れれば加工工場や鮮魚店のように、目視だけでも問題ありませんが、不安な場合は厚生労働省がお勧めする方法を基に、『中心部分が60度になるように1分間加熱』もしくは『70度以上で加熱』でアニサキスを死滅させましょう。

全てのイクラの表面に熱を行き渡らせるために、70度程度のお湯が入った鍋にイクラを入れた後、お湯の中でバラバラに泳ぐようにお玉でかき混ぜます。1分後、温度計でお湯の温度を測り、60度以上あればもう安心です。

90度など熱過ぎるお湯に入れると、イクラが割れてしまいます。また、房に入ったまますじこの塊でお湯に入れると中まで熱が行き渡らないほか、熱により筋が卵の周囲に切れて残り、筋を取る作業が非常に大変です。私を信じて、最初に網の上で1分程度の筋取り作業をしてください。

(4)冷やす
イクラをざるに取った後、氷水に入れて冷やします。その際、イクラが少し白くなるので、失敗だとショックを受けるかもしれませんが、イクラの透明感は味付けのタイミングで復活するので心配は無用です。そして意外に思うかもしれませんが、この段階のイクラを食べてもおいしくありません。この点も心配無用です。

(5)味付け
イクラの中に味がしみ込むことで、イクラが一気においしくなります。お好みで配合を変えてください。イクラと味付け液は、『3:1』もしくは『2:1』の割合になるよう調節しましょう。例えば、300グラムのイクラを味付けしたい場合、味付け液は100~150グラムです。味付け液を作るには、しょうゆ、日本酒、みりんを『1:1:1』の割合で混ぜた後、一度沸騰させてアルコール分を飛ばしてから、冷蔵庫で冷やします。

水分をしっかり切ったイクラを味付け液に浸した後、冷蔵庫で半日から1日ほど冷やせば完成です。アツアツのご飯にのせて食べてみてください。

作ったイクラは何日以内に食べ切る?

Q.生すじこから作ったイクラは、何日以内に食べ切るのが望ましいのでしょうか。

早武さん「イクラに味がしみ込んだら、できるだけ速やかに食べるのがよいでしょう。食べ切るのに3~4日以上かかる場合は、冷凍するのがお勧めです。冷凍しても解凍後に多少、弾力が変わりますが、菌が増える心配はありません。

冷凍イクラ製品の場合、窒素充填(じゅうてん)した後、真空パックで冷凍するためおいしさが1年以上保たれますが、家庭で調理したイクラを保存する場合は数週間で食べるのをお勧めします。食べるときは速やかに解凍して食べましょう。1食分に小分けして冷凍しておくと、食べるときに便利です。

生すじこからイクラを作る場合、先述の方法で熱を通すことである程度殺菌されるので多少長持ちします。より長持ちさせるために、味付け液のアルコール分を熱で飛ばさずに、そのままイクラに浸して食べる人もいます。ただし、その場合、食べた後に車を運転してしまうと酒気帯び運転に該当する可能性があるため、注意が必要です」

Q.店舗でイクラやすじこを購入する際の注意点について、教えてください。鮮度の関係で、できるだけ値引き品を避けた方がよいのでしょうか。

早武さん「人によって好みは異なると思いますが、私は生すじこの場合、卵の粒が大きいものを選びます。そして『まだ高いかな?』と考えている間に旬が終わって買えなくなることがあるので、多少高くても買うという『思い切りの良さ』が一番大事だと思っています。

しっかり冷凍、冷蔵されていれば、値引き品でも問題ありません。私も財布と相談しながら、生すじこの値引き品を買うことがあります」

Q.イクラやすじこは、どのような料理にして食べるのがお勧めなのでしょうか。

早武さん「生すじこは、イクラ作り一択です、イクラはイクラ丼、加工すじこは切ってそのまま食べるか、すじこおにぎりですね。油分と塩分は食欲の秋にはたまらないごちそうですね」

 普通の生活ではアニサキスによる食中毒の心配はなく、早武さんが解説した方法でイクラを作れば確実に安全とのことです。秋を感じながら、イクラ丼やすじこおにぎりを食べてみてはいかがでしょうか。

オトナンサー編集部

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