気温の低下とともに風邪をひく人が増えてきたのではないでしょうか。10月以降、インフルエンザが流行しており、体調を崩したときにそれが風邪なのか、インフルエンザなのか分からないことがあります。そもそも、風邪とインフルエンザの症状には、どのような違いがあるのでしょうか。インフルエンザにかかったにもかかわらず、風邪だと思って受診しなかった場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
風邪とインフルエンザの違いや、これらを見分ける際のポイントなどについて、オンライン診療サービスを行うクリニックフォアグループの監修医で、内科認定医、糖尿病専門医の渥美義大さんに聞きました。
全身の倦怠感がある場合はインフルの疑い

Q.そもそも、インフルエンザになると、どのような症状が出るのでしょうか。また、インフルエンザにかかっても症状が軽い“隠れインフルエンザ”のケースがあると聞きますが、本当なのでしょうか。
渥美さん「インフルエンザの典型的な症状は、38度以上の急な発熱、全身の倦怠(けんたい)感、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状です。一般的な風邪と異なり、発症のスピードが非常に速いことが特徴です。
一方で、いわゆる“隠れインフルエンザ”と呼ばれるケースもあります。ワクチン接種を受けていたり、免疫がある程度働いていたりする人の場合、高熱が出ず、喉の痛みや強い倦怠感だけで経過することがあります。『熱が出ていない=風邪』と判断せず、全身のだるさ、関節痛、悪寒などが強いときは、インフルエンザの可能性も考えることが大切です」
Q.風邪とインフルエンザの症状の違いについて、教えてください。それぞれ、どのような症状が出るのでしょうか。受診の目安はありますか。
渥美さん「一般的な風邪はくしゃみや鼻水、喉の痛みなどのいわゆる感冒症状の組み合わせが中心で、発熱もそこまで高熱には至りません。
一方、インフルエンザは、38度以上の高熱に加えて、全身の痛みや強いだるさといった全身症状が急速に現れます。受診の目安としては、症状が出てから12〜48時間以内がお勧めです。その理由は、『発症から12時間以上経過するとウイルス量が増え、検査の精度が高まること』『タミフルやゾフルーザなどの抗インフルエンザ薬は発症48時間以内の服用が最も効果的であること』の2点です。高熱や全身の痛み、倦怠感がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう」
Q.では、インフルエンザに感染しているにもかかわらず、風邪だと思って受診しなかった場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
渥美さん「放置して対策を怠ってしまうと、職場や家庭内で感染を広げてしまうリスクが高まります。また、治療が遅れることで、肺炎や脳炎などの重症化につながることもあります。
仕事などで対面受診が難しい場合は、オンライン診療の活用も選択肢の一つです。必要に応じて早期に検査や治療につなげられます。
流行時期には、インフルエンザ陽性者との濃厚接触歴、高熱などの症状から医師がインフルエンザと推定診断した場合には、抗インフルエンザ薬が処方される場合があります。市販の抗原検査キットの結果も参考にする場合があります。症状や状況によっては対面での検査を案内する場合もあります」
Q.このほか、インフルエンザと新型コロナウイルスとでは、症状にどのような違いがあるのでしょうか。
渥美さん「どちらも発熱や倦怠感、喉の痛み、せきなどの症状がみられるため、症状だけで区別するのは難しいのが現状です。
一般的に、インフルエンザは高熱や全身の痛みが急に出るのに対し、最近の新型コロナウイルスは症状の立ち上がりがやや緩やかで、喉の痛みやせき、嗅覚・味覚の異常が目立つ傾向にあります。
ただし、いずれも発症初期は似た症状のことが多いため、自己判断せずに受診や検査を受けることが重要です」
オトナンサー編集部
