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元「私設空軍」持ち!? トランプ新政権の要人 米軍相手に戦闘機飛ばす驚愕の異次元マニアだった

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アメリカのトランプ次期政権でNASAの次期長官に指名された人は、趣味でジェット戦闘機を乗り回し、スペースXで宇宙まで行ったことのある大富豪でした。実際に会ったことのある日本人が解説します。

NASA次期長官はポケットマネーで宇宙遊泳した人

 次期アメリカ大統領に就任することが決まっているドナルド・トランプ氏は、新政権のNASA(アメリカ航空宇宙局)長官に、民間宇宙飛行の経験があるアメリカ人実業家のジャレッド・アイザックマン氏を指名しました。

 同氏は今年(2024年)5月、アメリカの宇宙開発企業であるスペースXのロケットで宇宙へ行き、民間人として世界初の宇宙遊泳を行ったことで話題にもなった人物です。実際に宇宙遊泳を経験した民間人を宇宙開発期間の次期長官の抜擢したのは、ある意味でトランプ次期大統領らしい人選ともいえますが、このアイザックマン氏の素性は日本ではほとんど知られていません。いったい、どのような人物なのでしょうか。

Large 241211 nasa 01アイザックマン氏が個人所有するMiG-29UB「ファルクラム」。左から2番目に立つのがアイザックマン氏(画像:Jared Isaacman氏のX〈@rookisaacman〉より引用)。

 彼は「シフト4・ペイメンツ」というカード決済会社の創業者兼CEO(最高経営責任者)で、その個人資産は約19億ドル(約2860億円)と推定される大富豪です。ただ、彼は元々宇宙だけでなく空への憧れが強かったようで、若くして起業家として成功すると、プライベートで航空機の操縦ライセンスを取得しています。

 興味の対象は一般的な民間機に留まらず、アメリカ国内で飛行している退役軍用機にまでおよび、さらに、ただ操縦するだけでは満足せず、その情熱から2010年には「ブラック・ダイヤモンドジェット・チーム」という民間アクロバットチームの共同設立者に名を連ね、自身もL-39「アルバトロス」というジェット練習機を操縦してエアショーに参加しています。

 このチームにはアメリカ海軍や同空軍の元パイロットが所属しており、機体もL-39「アルバトロス」だけでなく、T-33「シューティングスター」、さらにはMiG-17まであったとか。しかも全員民間人ながら、航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」のような6機編隊の本格的なアクロバット演技を行っており、アイザックマン氏自身、その中の4機編隊の右翼機として飛び回っていました。

民間版「ブルーインパルス」を創設して自らも操縦

 しかし、アイザックマンの空への想いは、エアショー参加などでは満たされませんでした。エアショーチームで集まった元軍人らを活用して、より大きな空のプロジェクトへと突き進みます。それは、退役ジェット戦闘機を活用したビジネス、民間アグレッサー会社の創設でした。

 2012年、アイザックマン氏は新たに「ドラケン・インターナショナル」(現ドラケン)を設立します。この会社の業務は、アメリカ空軍や海軍の戦闘機訓練において、自社が所有する戦闘機を飛ばして敵役や標的役を務めるというものです。

 アメリカ空軍や航空自衛隊にも訓練で敵役を専門に務めるアグレッサー部隊というものがありますが、それらに近しいことを民間会社が代わりに行おうというものです。すなわち、国/軍の下請け会社という位置づけで、民間アグレッサー会社というような存在です。

Large 241211 nasa 02「ブラック・ダイヤモンド・ジェット・チーム」のジェット機。前の4機編隊の右翼機をアイザックマン氏が操縦している(布留川 司撮影)。

 同社はニュージーランド空軍が退役後に保管していたA-4K「スカイホーク」や、チェコ空軍が保管していたL-159E「ALCA」、スペイン空軍から退役したミラージュF1などを購入、再整備したうえで運用を開始します。結果、この業務は時代の波に乗り業績を拡大、今では約150機もの戦闘機を保有するまでになりました。

 なお、アイザックマン氏は軍属パイロットとしての経験がないため、業務として軍の演習に参加することはできませんでしたが、同社が保有するA-4「スカイホーク」を使って、同機の操縦資格を取得しています。

 ちなみに、アイザックマン氏は2019年に「ドラケン・インターナショナル」の保有株式をアメリカの投資グループに売却したため、現在では同社の経営と業務から離れています。しかし、それは空の世界に興味がなくなったというわけではなく、個人として自由に楽しむための方針転換だったようです。

個人で東西の傑作戦闘機を複数所有

「ドラケン・インターナショナル」の経営から離れたあと、アイザックマン氏のビジネスは本業のカード決算会社のみとなります。

 しかし、プライベートとして空の世界を楽しむことは欠かさず、2020年にはロシア製戦闘機のMiG-29UB「ファルクラム」を自家用機として購入。この機体は元々マイクロソフトの創設者であるポール・アレン氏の財団が所有していたもので、アイザックマン氏は仕事の息抜きで週末に自分で飛ばして楽しんでいたとか。なお、今年(2024年)には北米のエアショーで、一般客を前に展示飛行も実施しています。

 また、最近は新たな戦闘機として、イギリスとドイツが共同開発した「トーネード」戦闘機も購入しており、再飛行できるよう修復作業を目下進めているそうです。これが実現すれば、世界で唯一の自家用「トーネード」になります。

Large 241211 nasa 03ドラケン・インターナショナルの元軍属パイロットと記念撮影に応じるアイザックマン氏(中央)(布留川 司撮影)。

 個人でジェット戦闘機まで飛ばすようになったアイザックマン氏は、その興味の対象を空からさらに上の宇宙に向けるようになります。

 2021年9月16日にはスペースXと組んで「インスピレーション4」という有人宇宙飛行を行います。これは民間人のみで実施された初の宇宙飛行で、アイザックマン氏は4名のクルーの司令官という超重要ポジションで参加。その後、今年(2024年)9月には「ポラリス・プログラム」で、冒頭に紹介した民間人初の宇宙遊泳も達成しています。

 アイザックマン氏の空や宇宙への関わりは、自身が実際に行うことを前提としており、それが彼のユニークな経歴につながっているともいえるでしょう。

 来年から始まるトランプ政権において、アイザックマン氏がNASA長官としてどのように活躍するかはわからないものの、明らかに歴代の長官とは異なる経歴を持っていることは間違いありません。ゆえに今回の人選によるNASAの動向には、アメリカ国内でも大きな注目が集まっている模様です。

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