横浜市内で検討されていた新交通システム計画「(仮称)上瀬谷ライン」が正式に中止となりました。市は既に、代替となる「新たな交通」の整備を推進する方針を示しています。
新交通システム「上瀬谷ライン」事業廃止に
横浜市は、相鉄の瀬谷駅付近と上瀬谷地区の約2.6kmを結ぶ新交通システム計画「(仮称)上瀬谷ライン」の整備事業について、2024年4月に事業廃止等届出書を提出しました。市は既に、代替となる「新たな交通」の整備を推進する方針を示していますが、事業計画の変更に伴い、新交通システムの構想は環境アセスメントの対象事業ではなくなったため、消滅した形です。
横浜市臨海部で運行される新交通システム「横浜シーサイドライン」。同社は一時、上瀬谷ラインの事業者候補として挙がっていた(画像:横浜シーサイドライン)。
「上瀬谷ライン」は、2027年3月に「GREEN×EXPO 2027」(横浜国際園芸博覧会)の開催が予定されている「旧上瀬谷通信施設」と、最寄り駅になる相鉄線の瀬谷駅を結ぶ約2.6kmの新交通システムとして検討されていた路線です。
旧上瀬谷通信施設は、2015年6月にアメリカから日本へ返還された在日米軍の跡地。市はこの土地を、「農業振興地区」「観光・賑わい地区」「物流地区」「公園・防災地区」に分けて整備する方針で、新交通システムの整備により、大規模な土地利用転換に伴う新たな需要に応えることが想定されていました。
この構想をめぐっては、事業着手の前段階である環境アセスメントの手続きまで実施されましたが、事業予定者と目されていた、横浜市臨海部で新交通システム「金沢シーサイドライン」を運営する「横浜シーサイドライン」が参画に難色を示したため、いったん白紙となっていた経緯があります。
今後は「新たな交通」を整備へ
その後、事業スキームから再検討が行われ、市は2024年2月、「次世代技術(自動運転・隊列走行)を活用したバス」による新たな輸送システムを整備する方針を示しました。
この輸送システムは、瀬谷~上瀬谷間において、道路混雑の影響を受けないバス専用の道路を整備し、連節バス(車体を2台つないだバス)が最大3台で隊列走行するシステムを構築。将来的には自動運転技術を導入するとしています。瀬谷駅前には地下にバスターミナルを設け、そこから上瀬谷方面へシールドトンネルによる専用道を設ける計画です。
さらに、運転区間を延伸し 、南は泉区の立場駅(地下鉄ブルーライン)、いずみ中央駅(相鉄いずみ野線)、北は十日市場駅(JR横浜線)方面へつなげ、横浜市西部を南北に結び、複数の鉄道路線を連絡する交通ネットワークを構築する方針です。整備にあたっては、八王子街道と環状4号線の立体交差道路や既存の環状4号線を活用し、バスのネットワークを構築するとしています。
ただし、この「新たな交通」は国際園芸博覧会の開催後に開業する見込みで、万博の輸送については周辺駅から通常のシャトルバスの運行が想定されています。
自動運転・隊列走行バスの運行は民間事業者を想定。2024年度から基本設計に着手し、工事はエキスポ開催後の2028年度からを想定。2030年代前半の供用開始を目指すとしています。概算事業費は約466億円とされていますが、市の負担が半分程度になるよう国費などの導入について検討を進めるといいます。