250両以上調達された16式機動戦闘車、でも装備していない師団・旅団がある?
2026(令和8)年度は、陸上自衛隊の16式機動戦闘車の量産調達が始まってから10年という節目の年でもあります。
105mm砲を射撃する16式機動戦闘車(画像:陸上自衛隊今津駐屯地)。
16式機動戦闘車は、全長8.45m、全幅2.98m、全高2.87m、重量は26tある、8輪駆動の装輪装甲車です。
主武装には105mm砲を採用し、10式戦車に匹敵する正確な射撃能力を持つことから、「装輪戦車」とも呼ばれます。また、装軌式ではなく装輪式のため高速道路を自走して移動できるほか、航空自衛隊のC-2輸送機で空輸可能という優れた機動展開能力が付与されているのも大きな特長です。
防衛省は、試作車4両に続き、2016(平成28)年度予算で16式機動戦闘車の量産調達を開始、2025(令和7)年度までに255両が三菱重工業に発注されています。
「令和7年版防衛白書』によると、陸上自衛隊は2025年3月31日現在、16式機動戦闘車を約200両保有しており、教育用を除き、全国の偵察戦闘大隊や即応機動連隊へ順次配備が進められています。
ちなみに、この偵察戦闘大隊とは、従来の偵察隊と戦車部隊を統合した師団・旅団隷下の機甲科部隊であり、特に本州と四国では戦車が全廃されている(教育用を除く)ため、戦車に代わる攻撃としての役割が期待されています。
北は北海道の第2師団から、南は九州の第8師団まで、全国に配備されているため、各地の記念行事で頻繁に目にするようになった16式機動戦闘車ですが、実は2026年3月時点で偵察戦闘大隊を持たない師団と旅団が存在します。
その師団と旅団とは、北海道の第7師団と沖縄県の第15旅団です。
ただ、第7師団は、陸上自衛隊唯一の機甲師団であるがゆえに、16式機動戦闘車は配備されていないとも言えます。隷下には3個戦車連隊があり、師団に配備されている戦車の総数は150両以上。さらに師団長の耳目となるべき偵察隊(第7偵察隊)についても、偵察戦闘大隊ではないものの、その編成は隊本部と本部付隊、電子偵察小隊と第1~第3戦闘偵察小隊ならびに斥候小隊の5個小隊から成り、他の師団・旅団の偵察戦闘大隊より大きな規模を誇ります。
加えて、偵察隊にも数は少ないものの、90式戦車が配備されており、充実した火力を保有しています。
このように、戦車が配備されているからこそ、16式機動戦闘車が配備されていないと言えるでしょう。
沖縄にも「装輪戦車」を配備する計画あり
一方、沖縄の第15旅団は少々事情が異なります。こちらは、全国の師団・旅団で最も規模が小さく、やはり偵察戦闘大隊ではなく偵察隊(第15偵察隊)が隷属しています。
第6師団の16式機動戦闘車(柘植優介撮影)。
しかし、機甲偵察隊である第7偵察隊に対し、第15偵察隊は隊本部と本部付隊に偵察小隊と斥候派遣隊のみという小さな編成で、火力を持つ車両も87式偵察警戒車のみです。
この状況は、第15旅団の前身である第1混成団(1973年10月~2010年3月)の時代から、南西諸島の地理的な特性や政治的な配慮などにより、他の師団・旅団に比べ普通科や機甲科の部隊を少なくする一方で、高射特科部隊や航空隊を充実させるという特有の編成に起因しています。
このように他の師団・旅団に比べ部隊規模が小さく、第1混成団の時から戦車が配備されていなかった第15旅団ですが、今年(2026年)3月6日に閣議決定された「防衛省設置法等の一部を改正する法律案」にもとづき、1年後に実施される「第15師団」への改編によって、状況は一変します。
普通科連隊は現在の1個から2個に増強され、隊員数も1600名ほど増員されて約3900名へと拡充されます。また、2026年現在、西部方面隊の指揮下にある宮古警備隊(宮古島駐屯地)と八重山警備隊(石垣駐屯地)が第15師団に編入されるとともに、石垣駐屯地に電子戦部隊を新編。加えて与那国駐屯地にも電子戦部隊が追加されるなどして、両駐屯地とも定員をそれぞれ約70名と30名、増やす計画です。
これと歩調を合わせるかのように、第15偵察隊は第15偵察戦闘大隊に改編され、待望の16式機動戦闘車が初めて配備されます。これにより、第15師団の火力も、ようやく本州や九州、四国の師団・旅団と肩を並べるまでに向上する計画です。
こうすることで、沖縄県外からの島しょ部に対する侵攻や、ゲリラ・特殊部隊の攻撃など、あらゆる事態への対処能力向上の効果が期待されています。
運用上の制約や政治的条件などから、第15旅団に戦車が配備されることは、さすがにありませんが、「装輪戦車」と呼ばれる16式機動戦闘車の沖縄配備は、師団化とともに1つのエポックメイクな出来事になるのは間違いないでしょう。
