国による高速道路料金の見直しは、車種区分にも及びそうです。そのなかで焦点となっているのが、割安な「軽自動車等」の料金。二輪車と軽自動車の区分ですが、普通車を含め、それぞれが道路に与える影響の「差」が変化しています。
5車種区分の一番下「軽自動車等」が焦点
国が高速道路料金の広範な見直しを検討しています。2021年3月10日(水)に開催された有識者会議、第49回国土幹線道路部会において、その概要が改めて示されました。平日朝夕の割引、深夜割引など、各種割引制度の効果と課題が議論されましたが、その見直しは「車種区分」にも及んでいます。
焦点となっているのは、普通車に比べて割安に設定されている軽自動車と二輪車の「軽自動車等」料金です。現在の車種区分は、大きさにより5車種に設定されていますが、「軽自動車等」は最も下位の料金で、普通車に比べ2割安くなっています。
全国的な高速道路料金の車種区分も見直される見込み。写真はイメージ(画像:写真AC)。
これは1989(平成元)年から30年以上変わっておらず、その間に「軽自動車等」が占める割合は、当時の4.7%から14.6%と3倍に増加。この割合は、「中型車」や「大型車」よりも多くを占めるといいます。
しかも最近の軽自動車は以前より大きく重くなり、規格として「普通車とあまり変わらないものとなっている」(委員会資料)のに対し、普通車と二輪車、軽自動車と二輪車の差は拡大し、道路に与える負荷にも大きな差が生まれているとのこと。こうした状況を踏まえ、「軽自動車等」の車種区分の見直しを検討する必要があるとされています。
料金負担の3つの考え方にそぐうか?
高速道路料金は、車両の長さと速度から時間的に道路を占有する度合いに応じた「占有者負担」、車両の大きさ・重量などから建設・管理に係る費用の影響度合いに応じた「原因車負担」、高速道路を利用することによる走行・時間による便益に応じた「受益者負担」という3つの考え方をもとに決められています。
もともと、いわゆる5ナンバー車である小型自動車と軽自動車は同一の区分(3ナンバーの普通乗用自動車は割高)でしたが、1972(昭和47)年、料金徴収業務の煩雑化を避ける観点から、軽自動車・小型自動車・普通自動車を「普通車」として同一とした3区分に変更。しかし車種間の不公平感が大きいとの批判から、「普通車」は現在の「軽自動車等(二輪車・軽自動車)」「普通車(小型自動車・普通乗用自動車)」「中型車(普通貨物自動車・マイクロバス)」に細分化されたという経緯があります。
国土交通省道路局によると、この中で二輪車については、軽自動車と比べても道路に与える影響が小さいことなどから、料金を下げるべきという要望が各方面から寄せられているといいます。そして、数も増え車両も大きくなった軽自動車については、前出した3つの料金負担の観点にそぐうかどうかが、議論のポイントになりそうだということです。
軽自動車と普通車で同一だった首都高の料金も、いまではNEXCOと同じ5車種区分になり軽自動車は割安(乗りものニュース編集部撮影)。
委員からは、高速道路のETC専用化も検討されるなか、「料金徴収のために車種区分を簡素化する必要がなくなり、通行する車両の特徴に応じて、施設への負荷等をベースに柔軟に車種区分を変えていくべきではないか」といった意見のほか、「軽自動車の車種区分を普通車並みにすることについて議論する場合は、地方経済への影響も考慮しなければいけない」といった声も寄せられています。
国土交通省道路局によると、今夏にも部会で新たな高速道路料金の方向性を取りまとめるということです。なお、これに先行し、いわゆる「首都圏の高速道路料金」については春にも具体的な方向性が示される見通しです。