新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいますが、ワクチン接種日には、発熱していないか、自宅で事前に体温を測ることが求められています。一般的に家庭用の「体温計」では(1)脇に挟んで測る(2)口にくわえて測る――という2つの測り方が多いようですが、どのようなときに脇で測るのがよいのか、口で測るのがよいのか、使い分け方はあるのでしょうか。あるいは使い分けはなく、どちらでも好きな方で測ればよいのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
発熱の有無は脇で十分
Q.そもそも、なぜ、脇や口で体温を測るのでしょうか。
市原さん「人の手足や顔など、体の末端や表面の温度は気温など、外部環境の影響を受けやすいです。一方、体の内部の温度は脳や心臓などの生命にかかわる臓器の働きを保つため、安定しています。体の内部の温度を測れたらよいのですが、現実には難しいです。そこで、体の内部の安定した温度部位に近く、体温を比較的正確に測ることができる脇や口で測るのです」
Q.よく、熱があるかどうかを推測する手段として、おでこを触り、熱いかどうかを調べます。おでこで体温は測れないのでしょうか。
市原さん「手で触る方法ではなく、体温計を使って、おでこで体温を測る方法もあります。おでこで測る体温計は『赤外線体温計』といい、体から出ている赤外線をセンサーが感知して計測するものです。ただし、脇や口で体温を測るときと比べて誤差が大きく、安定しない傾向があります。比較的誤差が大きいとはいえ、動き回る乳幼児の体温を測るのに便利ですし、簡易的に発熱の有無を確認できるので、使う場所や対象によっては有用です」
Q.脇と口の使い分けはあるのでしょうか。あるいは、好きな方で測ればよいのでしょうか。
市原さん「まず、体温計の中には、どの部位で測るかが決まっている場合もあるので、脇用の体温計では脇で、口用の体温計では口で測定することを守ってください。一般的に、口で体温を測るのは女性が基礎体温を測るときです。発熱の有無を確認するために体温を測るのであれば、口ではなく脇で測ることで十分です」
Q.アニメの中で、熱があるときに体温計をただ口にくわえるだけで熱が測れる描写を見たことがあります。体温計をただ口にくわえるだけで測れるものなのでしょうか。
市原さん「口にただくわえるだけでは正確な体温を測れません。アニメの中で熱があるときの描写で、体温計を口にくわえるのは、脇に挟んでいるよりも分かりやすいからではないでしょうか。口で体温を計測するときは口の中ではなく、舌下(舌の裏側)の温度を測っています。体温計の先を舌の付け根に当てて口を閉じ、体温計が動かないように手で支えながら測定します」
Q.コロナ禍の現在は、発熱の有無を正確に測ることが普段以上に重要になっています。脇で体温を計測するとき、体温を測る前にした方がよいことや正しい測り方を教えてください。
市原さん「汗をかいていると正確に体温を測れないので、きれいにしてから、体温計を脇の奥まで当て、脇をしっかり締めて動かないように固定します。これは動くことによる摩擦熱の影響や、体温計がずれて、測定部位が変わることによる温度変化で、正しく測れない可能性があるためです。
検温中に動くと正確に測れないことがあるので、安静にした状態で測りましょう。また、食後は体温が上がりやすいので、食前の方が体温が安定した状態で測ることができます」
オトナンサー編集部