筋トレをする人の食事に欠かせない存在ともいえる食材「ブロッコリー」。鶏むね肉とセットで食べるイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし、「筋トレをしている人はどうしてみんなブロッコリーを食べているの?」と疑問に思ったことはありませんか。
数ある野菜の中でもなぜブロッコリーが“筋トレの味方”として人気となり、“定説”となったのでしょうか。その理由について、現役のプロボクサーでもある管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
他の野菜と比較して「高タンパク質」
Q.そもそも「ブロッコリー」とはどんな野菜ですか。
岸さん「ブロッコリーは食物繊維やビタミン類、鉄分、カリウム、葉酸、カルシウム、マグネシウムなど、多くの栄養素がバランスよく含まれている野菜です。中でもビタミンCはレモンの約2倍、カリウムはタマネギの約2.5倍、食物繊維は小松菜の約2倍、タンパク質はニンジンの約7倍の量が含まれています。タンパク質は、野菜の中ではかなりの含有量で、100グラムあたり4.3グラム含まれます。
また、特徴的なのは『ジインドリルメタン』と『I3C(インドール-3-カルビノール)』という成分が含まれていることです。これはアブラナ科の野菜に含まれる成分で、男性ホルモンの『テストステロン』を増強するとともに、女性ホルモンの『エストロゲン』を抑える働きがあります」
Q.なぜ、筋トレをする人たちの間でブロッコリーが人気なのでしょうか。また実際、筋トレ中に食べる野菜として「お勧め」といえますか。
岸さん「先述したように、他の野菜と比較して高タンパク質なことが挙げられますが、加えてビタミンやミネラル、食物繊維が満遍なく含まれ、栄養価が高いことも好まれる理由でしょう。糖分を分解するビタミンB1、脂質の分解をサポートするビタミンB2、筋肉の合成をサポートするビタミンB6、高強度の運動で不足しやすい鉄分、骨の形成に重要なマグネシウムやカルシウムもしっかり含まれており、筋トレを行う人には非常にお勧めの食材といえます。
筋トレ中は同時に減量を行うことも多いので、低カロリーで栄養価が高く、かさも大きいブロッコリーは満腹感にもつながり、少ない量で多くの栄養素を摂取できるため、引き締まった体づくりに効果的です。
また、先述したように、ジインドリルメタンとI3Cは男性ホルモンのテストステロンを増強します。テストステロンには筋肉の細胞内を修復する働きがあるため、テストステロンが増えることで筋肉が発達しやすい状態になり、筋肉の細胞の修復を早めて『筋肥大』を進められるという点が、ブロッコリーが人気である最も大きな要因かもしれません」
Q.筋トレの効果を上げやすいブロッコリーの食べ方や、注意点を教えてください。
岸さん「まず前提として、筋トレを行う適切なタイミングは『食後』です。食後は筋肉に栄養が吸収されやすく、エネルギー不足による筋肉の破壊を防ぐことができるなどの理由があるためです。しかし、食後すぐは消化不良を起こしやすいので、消化が完了する食後2~3時間がベストなタイミングといえます。
ブロッコリーは栄養価の高い食材なので、毎日の食事にタイミング問わず取り入れていただきたいですが、筋トレ効果のためには、栄養成分を効率よく吸収し、筋肉がつきやすい状態に整えるために、筋トレの2~3時間前に摂取するのがお勧めです。
ブロッコリーを食べる際は、栄養素が体内で効率的に使われるために、さまざまな食材と組み合わせましょう。野菜の中ではタンパク質の含有量が多いですが、ブロッコリーのタンパク質は植物性なので、よりアミノ酸スコアが高く、吸収率も高い動物性タンパク質と一緒に食べることで、ブロッコリーに少ないアミノ酸を補うことができます。
また、ビタミンDやビタミンB12はブロッコリーにほとんど含まれない栄養素なので、栄養素を充足させる意味でも肉や魚、卵、キノコ類などもバランスよく摂取するようにしましょう。ビタミンB群やC、カリウムなどの水溶性の栄養素は、長時間水に触れたり、高温で長時間加熱したりすると損なわれてしまいます。電子レンジや蒸し器などを使って、新鮮なうちに、なるべく短時間で加熱するようにしましょう。
また、油に溶けやすい性質のビタミンKやE、βカロテンは、油を使って調理すると栄養素の吸収率がアップします。カロリーは上がってしまいますが、油を使って炒めたり、油入りのドレッシングを使用したりするなど、吸収率を上げる食べ方がお勧めです」
オトナンサー編集部