台鉄集集線が全線で運行再開
台湾中部の南投県には、台湾最大の湖「日月潭」と、台湾最長の河川「濁水渓」があります。この濁水渓に沿って日月潭付近の山間部へと線路を延ばすのが、台湾鉄路公司(台鉄)の支線「集集線」です。途中駅は源泉、濁水、龍泉、集集、水里で、濁水駅は唯一の交換駅、集集駅は木造駅舎が出迎えます。
車埕駅に到着。駅は2面2線のシンプルな構造。手前の線路はほとんど使用していない。駅と公園施設との間に柵などの境界がないのは日本と異なるところ(2026年7月、吉永陽一撮影)
集集線は日本統治時代の1921(大正10)年に、山間部の電源開発の貨物専用線として開通し、翌年から旅客営業を開始しました。当初は台湾電力株式会社の専用私鉄「外車埕線」でしたが、1927(昭和2)年に台湾総督府鉄道へ買収されて集集線となりました。
集集線は、1999年9月21日に発生した、集集鎮を震源とする台湾中部大地震「921大地震」によって壊滅的な被害を受け、集集駅の木造駅舎も半壊しました。また、2021年8月に発生した土砂災害によって、集集~車埕間が不通に。さらには復旧作業中にトンネル部付近で新たに土砂崩れが発生し、2024年からは6か所あるトンネルの補修工事も行われたため、濁水~車埕間で長期間にわたりバス代行運転が行われていました。
そして2026年6月25日、全線で運行が再開されました。待ちに待った再開によって、台湾内外の観光客が多く訪れるようになり、日中の列車は満員乗車になるほどの人気路線です。
二水駅を発車。唯一の交換駅、濁水では上下列車の交換があります。二水~濁水間がタブレット閉塞、濁水~車埕間がスタフ閉塞のため、ホーム内で運転士と駅員による通票の授受が行われます。
濁水から車埕までは、大地震と土砂災害によって2度も不通を余儀なくされた区間です。濁水駅の先で、草木に埋もれて赤く錆びた線路が右手に延びています。その先に傾いた高圧鉄塔が見えました。921大地震の爪痕で、現在は公園として整備されています。
集集駅に到着。木造駅舎は大地震で半壊しましたが、地元の人々を中心に再建を望み、日本統治時代の面影を残しつつ2001年に復元されました。集集駅を発車し、補修工事が完了したトンネル群をくぐり、終点の車埕駅へと到着。彰化から約1時間半の道のりは短く感じますが、集集線は台鉄の支線で最も距離が長いのです。
車埕駅周辺は山に囲まれ、奥地の観光地や周辺の散策を楽しむ人々でにぎわいます。かつての車埕駅は日月潭などへ軌道がつながり、山地で伐採された木材が集積する場所でした。駅構内は広く、何本かの側線と木材積み込み施設が残っています。この側線跡を活かして台鉄の貨車群が保存されており、なかにはここでしか見られない貴重な貨車も見られます。
大河に沿って山間部へと分け入っていく線路は、自然災害と隣り合わせですが、観光客の歓声が車内にこだまします。台北駅や高雄駅からは高鉄(新幹線)経由でアクセスしやすく、台中駅から日帰り圏内であり訪れやすい支線です。これから秋にかけて過ごしやすくなり、行楽客もより増えることでしょう。
