8月20日放送の「徹子の部屋」(テレビ朝日系)、21日放送の「あさイチ」(NHK総合)に俳優の志尊淳さんが登場しました。そのどちらでも注目されたのが、過去のダイエットです。
4番・キャッチャーとして活躍した少年野球をやめるにあたり、大きくなりすぎた体を変えることを決意。志尊さんのお姉さんいわく、「一日中走っていて、ほとんど食べてもいなかった」という生活で、18キロの減量に成功しました。これがきっかけで、芸能事務所からスカウトされるようになったといいます。
「あさイチ」では、現在のスリムなスタイルが話題になり、MCの博多華丸さんがこんな指摘をしました。
「元キャッチャーでこれだけの脚、キープしているのは、あとはダレノガレ明美さんぐらい」
そう、モデルでタレントのダレノガレ明美さんもキャッチャー経験者。中学時代にソフトボールをやっていて、全国大会3位という実績の持ち主です。彼女もその後、肉体改造に挑み、芸能界入りにつなげました。「歩くだるま」とあだ名されるなど、ピーク時には70キロ近くあったという体重が、今は40キロ台前半だそうです。
身体能力や精神力を生かす
さらにもう一人、芸能界デビューに向けて、ダイエットしたという元キャッチャーの有名人がいます。岡田健史さんです。
高校時代は長崎の名門・創成館で甲子園を目指しましたが、最後の夏は県大会ベスト8で敗退。大学でも野球を続けるつもりで受験に取り組んでいた時期に、転機が訪れます。演劇部に誘われ、その活動に参加したのです。参加した理由は、
「野球の特待生として入学して、僕たちの代で何もタイトルを残すことができなかったので。何かできないかな、学校に対してと思った」(「A-Studio+」TBS系)
というもの。演劇では全国大会まで行くことができ、その過程で役者の魅力に目覚めました。もともと、女の子たちから「マスクを外してプレーしてほしい」と言われるほど、地元では有名なイケメンだった岡田さんは、中学時代からずっと芸能事務所に声をかけられていたとか。その事務所に自分から連絡を取り、ドラマ「中学聖日記」(TBS系)でデビューするわけです。中学生という役柄に合わせ、10キロ痩せて臨みました。
ほかにも、キャッチャー出身の芸能人としては、上地雄輔さんやELLYさん(三代目J Soul Brothers)がいます。上地さんは横浜高校で1学年下の松坂大輔投手(現・西武)とバッテリーを組みました。また、ELLYさんは青森県の古豪・三沢高校で4番・キャッチャーを務めましたが、最後の夏は県大会ベスト8で涙を飲むことに。そのとき、相手の光星学院で2年生ながら4番を打っていたのが坂本勇人選手(現・巨人)だそうです。
とまあ、芸能界にめじろ押しというべき、キャッチャー男子&女子。それぞれ、その経験によって培われた身体能力や精神力がそのパフォーマンスにも生かされているのでしょう。
ゲームを組み立てる「指令塔」
しかし、強みはそこだけではありません。野球はスポーツの中でも、ルールが難しく、駆け引きも複雑です。とりわけ、キャッチャーは高い知力が必要とされます。投手のリードはもとより、ただ一人、ダイヤモンドの外側にいて全体を俯瞰(ふかん)し、監督の意図をくんでサインプレーの指示をするなど、ゲームを組み立てる「指令塔」的なポジションです。
それゆえ、賢さとリーダーシップを併せ持つ人材が生まれやすいという特徴があります。頭を使う「ID野球」を提唱した野村克也さんはその代表でしょう。また、現役時代には巨人、監督としては西武の黄金時代を築いた森祇晶さんもいますし、選手会会長として経営者たちと渡り合った古田敦也さんもいます。
そういえば、万能アスリートとして知られる武井壮さんは、始球式で140キロの速球を投げるという目標のために、練習相手を上地さんに依頼しました。それまでは「松坂に乗っかった、元やってました(程度の)キャッチャーだと思ってた」そうですが、的確なアドバイスを受け、実際に球速がアップ。
「あの子は賢いからピッチャーのことよく見てる」(「たまむすび」TBSラジオ)
と、絶賛していたものです。
確かに、賢くなければ、おバカタレントからソロ歌手、俳優として生き残ることはできないでしょう。「盤上のアルファ~約束の将棋~」(NHKBSプレミアム)で無頼派の天才棋士を演じたときなど、なかなかのハマりっぷりでした。
賢さについては、岡田さんにも印象的なことがあります。昨年、「ノンストップ!」(フジテレビ系)に出演した際、役者の魅力に目覚めたときのことを振り返りながら、こう語ったのです。
「本当に何とも言えない感情になって、そのときの、当時の感情を言語化することが、僕の今の一つの目標でもあるので」
21歳(当時)の青年から「感情を言語化する」という言葉が出たことに、新鮮な驚きを感じました。野村さんが「ノムラの考え」という戦術書を使って頭と言葉で選手を指導したように、これもキャッチャー脳のなせることかもしれません。
それとは別に、キャッチャーは「女房役」とも呼ばれます。それこそ、「亭主」タイプの多い投手をおだてたりしながら乗せていく能力も求められるのです。ある意味、「オレがオレが」という男っぽさだけでは通用しないポジションです。
その点、志尊さんは特撮ヒーローの主人公役で世に出ながら、「女子的生活」や「半分、青い。」(ともにNHK総合)でフェミニンな役にも挑戦。ファッションや言動でその役になりきり、話題になりました。ジェンダーに対する意識が多様化する中で、この幅広さは強みといえます。
ジェンダーに限らず、今は多様化が進む世の中です。芸能人、そしてイケメンの世界も例外ではないでしょう。そんな中、肉体改造できるストイックさや頭も言葉も使える賢さ、さらには、男っぽさだけではないところもすてきに見せられるキャッチャー男子は注目の存在。まさに、これからの時代をリードしていく存在なのです。
作家・芸能評論家 宝泉薫
