「指定校推薦は楽」は本当なのか?(画像はイメージ)
大学入試が後半戦を迎えました。私立大学の試験や、2月下旬以降に行われる国公立大学の個別試験(2次試験)に向けて、追い込みの勉強をしている受験生は多いと思います。
ところで、大学入試には学校推薦型選抜の一種として、大学が指定した高校の生徒にのみ出願資格がある「指定校推薦」という推薦制度があります。指定校推薦は基本的に一般入試よりも2~3カ月ほど早く合否が決まりますが、ネット上では「指定校推薦は楽」「指定校推薦で入学した人よりも一般入試で入学した人の方が優秀」といった声があり、指定校推薦で大学に合格した子を持つ親の中には、不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
指定校推薦に対する厳しい風潮の背景や、指定校推薦で合格を勝ち取った子どもに負い目を感じさせないために親ができるサポートなどについて、探究型学習に特化した民間学童保育「ユレカアフタースクール」(東京都江東区)校長で、教育アドバイザーの鶴原頌太郎さんに聞きました。
指定校推薦は競争がシビア
Q.毎年、大学受験のシーズンになると、ネット上では「指定校推薦で入った人は楽でいいね」「指定校推薦で入った人はダメだ」などの声が上がります。そもそも、「指定校推薦は楽」といった風潮に対してどのように感じますか。
鶴原さん「『指定校推薦は楽』だといわれる最大の理由は、『当日の試験一発勝負ではないから』でしょう。しかし、今の大学入試を、かつての偏差値一辺倒だった時代の価値観で測ることはできません。
まず、近年は入試方法が多様化しています。大学側の評価基準も学力試験だけではなく主体性、思考力、対話力を重視するようになり、大学入学者の約半数が推薦入試を経ていると言われるほどです。そして、指定校推薦は大学と高校の信頼関係で成り立つ正規の入試制度です。高校側も『この子なら大丈夫』と確信できる生徒しか送り出しません。
具体的には、1年生から3年生の評定平均が高く、欠席、遅刻、早退の日数が少ない、なおかつ部活動や委員会活動、課外活動でも実績を上げている生徒が選ばれることになります。一時の詰め込みではなく3年間自分を律し続ける自己管理能力と、受験に使わない科目を捨てることなく全教科に力を注ぐ誠実さが必要であることが分かると思います。
さらに、大学から通知された指定校推薦枠は1~3人と限られていることが大半で、ある意味一般入試以上にシビアな競争になることもあります。『自身の成績が悪いと来年の推薦枠がなくなる』というプレッシャーを背負いながら、入学後も学び続ける覚悟も必要です。
このように、瞬発力を図る『一般入試』と、長期間の信頼と実績を積み上げる『指定校推薦』に、『優劣の差』はなく、評価の物差しの違いにすぎません。『一般入試で入学した人の方が優秀』といった外野の声で、子どものポテンシャルを下げてしまうのは、あまりにもったいないことです」
Q.指定校推薦で大学に合格した子どもに負い目を感じさせないために、親ができることはありますか。
鶴原さん「入試の形に優劣がないと分かっていても、感受性が豊かな時期の子どもにとって、周囲の何気ない言葉は重く響くものです。
まず、『周囲の言葉に子どもが傷つかないよう、心配する』親の優しさが、子どもの救いになると思います。そして、指定校推薦合格という、中だるみが許されない継続的な努力を通じて成し遂げたことを、手放しで褒めてあげてください。
2月、3月と最後まで戦う『一般入試組の友人』を尊重する姿勢を見せることも大切です。推薦が正当な入試制度でも、態度次第では周囲から反感を買ってしまう可能性もあります。相手に配慮することで『先に合格した者としての、責任感と準備がある』という意識が生まれ、お互いに励まし合えるでしょう」
Q.ちなみに、指定校推薦で大学入学が決まった場合、子ども自身が暇になると思います。親は入学までの間、どのように過ごさせるべきなのでしょうか。
鶴原さん「推薦入試でも一般入試でも、入試後、入学後の自分をどう律するかに尽きます。周りの人が勉強している中で『自分だけ何もしていない』という罪悪感も、入学後のエネルギーに変えることができます。例えば、『一般入試組との差が出やすい英語を学び続ける』『大学の専攻分野についての文献を読んでおく』『生活リズムを崩さないよう起床時間を一定にする』『慣れない通学に備えて軽い運動を続ける』などがお勧めです。
また、多くの大学では、総合型選抜、推薦型入試などで早くから入学が決まった入学予定者に向けて『入学前課題』が出されます。これは大学での学びに対する不安を解消する、入学後の学びに触れるといった目的によるものです。大学生活への期待とともに、子どもが学習をポジティブに捉えられるよう、見守ってあげてください」
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「指定校推薦は楽」という意見は、表面的な見解に過ぎないことがよく分かりました。指定校推薦で合格を勝ち取るためには、入学時から推薦を受けるタイミングまでの約3年にわたって、高い評定を維持し、自己を管理し続ける必要があるとのことです。指定校推薦で大学に合格した子を持つ親は、日々の努力を心から褒めて子どもの自己肯定感を守りつつ、現在も必死に勉強する一般入試組の人に配慮するよう伝えることで、合格者としての責任感と大学入学への意欲を育みましょう。
オトナンサー編集部
