「国鉄の特急電車」といえば、「183系」「381系」「485系」「583系」を思い浮かべる人が多いかもしれません。これらの車両は形が似ているため判別は難しそうですが、よく見るとそれぞれに特徴があります。
パッと見て違いが全然わからない…え?全然違う?
JRの「183系」「381系」「485系」「583系」は国鉄特急の一時代を築いた車両です。このうち381系は、当時の面影を残したまま、2020年11月現在も伯備線系統での定期運用が残っています。
さて、この4つの車両、一見して見分けがつくでしょうか。いずれもいわゆる「往年の特急」を象徴する流麗な姿ですが、鉄道車両に興味がないとタイプを判別するのは難しそうです。
左から189系、381系、485系、583系電車(画像:photolibrary、恵 知仁撮影、画像AC)。
それぞれ様々な特徴がありますが、大きな外見の違いは次の5つになります。なお、改造車や製造年代によって、多少の例外はあります。
・その1:色が違う
まず、車体の基本色は、485系まではいわゆる国鉄特急の「クリーム色+えんじ色の帯」ですが、583系の帯は、えんじ色ではなく紺色になっています。
・その2:前照灯があるかないか
車両の「頭」を見てみましょう。運転台の上に、丸い前照灯が無ければ183系もしくは381系、あれば485系もしくは583系です。
・その3:屋根が高いか低いか、屋根に物が乗っているか
583系の大きな特徴は、寝台車であることです。最大3段の寝台スペースを確保するため、屋根は一様に運転台と同じ高さに揃っています。一方、583系以外は運転台だけが盛り上がっています。183系や485系は空調機器などが屋根に置かれていますが、381系はこれらの機器が床下に配置されているため屋根はパンタグラフ以外目立った設備はなく、シンプルな見た目です。
・その4:側面のボディラインが曲線か、直線か
車体側面のボディラインは、485系までの車両が丸みを帯びているの対し、583系では真っ直ぐになっています。理由は前項と同じく、制限いっぱいまでスペースを確保するためです。そのほか381系は、カーブで車体を傾斜させる(後述)ため、側面下部の絞りが183系と485系に比べ急になっています。
・その5:ドアの形、もしくは数が違う
583系で特徴的なのが、ドアの形状がバスで見られるような「折戸」になっていることです。これは、ドアを収納する「戸袋」と呼ばれるスペースを無くすためです。一方、183系に見られる大きな特徴が、1両あたりのドアが2つあることです(他の車両は1両あたり1つ)。
以上の外見的特徴から、多少の例外はあるものの、4つの特急形車両を識別することは可能となるでしょう。
外見だけではない、中身も全然違う!
4つの特急形車両は、目に見えない仕様にもそれぞれの特徴があります。
・その1:交流区間への対応の可否
183系と381系は、走行に用いる電気が直流の区間のみ走行できますが、485系と583系は、交流と直流どちらの路線にも対応しています。
・その2:振り子式車両かどうか
カーブの多い線区でのスピードアップを図るため、カーブ区間で車体を傾斜させ、従来車両より高速で通過できるようにした振り子式の仕組みを搭載したのが381系です。特殊な仕組みであることと、車体の傾斜により乗り物酔いになりやすいことから、以降の特急形車両でも導入は限られたものになりました。
・その3:車体の材質
381系の車体は軽量化のためアルミ合金、それ以外の車両は鋼鉄製です。
見た目が似ているのには理由がある?
特急形車両に限らず、在来線の車両も国鉄時代は外見が画一的でした。通勤電車は101系、103系が大都市圏を席巻し、非電化区間はキハ40系が日本全国を走っていました。これは国鉄の運営が各種法規によって細かく定められていたこともあり、新車ごとにユニークなデザインが行われにくかったこともあるかもしれません。
JR東日本初の新型特急形車両となった651系(2018年8月、乗りものニュース編集部撮影)。
1987(昭和62)年に国鉄が民営化され、JR旅客各社が企業ブランディングを意識し始めるのとともに、特急車両もデザインを重視して設計されるようになりました。「タキシードボディ」といわれたJR東日本の651系を皮切りに特急「スーパービュー踊り子」251系や、JR西日本の特急「サンダーバード」681系など、特急形車両は百花繚乱の時代を迎えるのです。