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坂本龍馬は「お金に強い」唯一の幕末維新の志士だった!

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「龍馬のマネー戦略」(大村大次郎著)秀和システム
「龍馬のマネー戦略」(大村大次郎著)秀和システム

司馬遼太郎の小説や数々のドラマの主人公として取り上げられた坂本龍馬は、幕末維新の志士の中でも、とりわけ人気が高い。龍馬にロマンを感じる人が多いということだろうが、龍馬だけが「お金に強い」維新の志士だったとして、「マネー」の観点から龍馬の生涯にスポットを当てたのが、本書「龍馬のマネー戦略」である。

船舶事故の相手の大藩にふっかけて大金をせしめたり、関門海峡を封鎖して幕府の積み荷を没収したりと、海賊まがいの行為もしていたという。

だが、それは「自由と経済自立」という大きな目的のためだった。龍馬は明治維新直前に暗殺されたが、財政的な布石を打っていたため、明治新政府はスタートを切ることができたという。

日本で最初の株式会社「亀山社中」

著者の大村大次郎さんは元国税調査官。ベストセラーとなった「あらゆる領収書は経費で落とせる」など税金・会計関連の著作のほか、「信長の経済戦略」「家康の経営戦略」「お金の流れで読む日本の歴史」など、その著書には歴史に関連した「お金の話」も多い。本書もその中の一冊だ。

土佐藩を脱藩した龍馬は、江戸で勝海舟の知己を得て、勝が神戸に作った海軍塾の塾頭のような立場になる。この海軍塾の塾生の一部が、後年「日本で最初の株式会社」と言われる亀山社中や海援隊の中心メンバーとなっていく。

だが、長州藩が起こした「禁門の変」(1864年)の煽りを食って海軍塾が閉鎖される。しかも勝の失脚により、経済的な後ろ盾も失ってしまう。龍馬たちは薩摩藩の庇護を受け、薩摩藩の胡蝶丸などの船に乗っていたことが「維新土佐勤王史」に記されているという。

薩摩藩・家老の小松帯刀の信頼を得て、龍馬たちの事業が立ち上がる。亀山社中だ。船を自分たちで運用し、輸送業や貿易業を行っていこうという「商社の前身」のような結社だったが、給料は薩摩藩から出た。額は月3両2分で、当時の土佐藩の長崎留学生の手当が月8両だったので、食うには困らない額だった。大村さんは、さしあたっての目的は「仲間を食わせる」ために、亀山社中を作ったと見ている。

対幕府戦争のため西洋製の武器を調達しようとした長州藩は龍馬に頼る。薩摩藩名義で買った武器を長州藩に流した。本書にその一覧が記されている。ミニエー銃など4300挺、ゲベール銃(中古)3000挺、軍艦ユニオン号で合計13万100両。現在の貨幣価値で約65億500万円にものぼる。

龍馬が薩長同盟の仲立ちをしたことは間違いないが、否定的な見方をする歴史家も少なくないそうだ。これに対して大村さんは、「維新関係の資料を丁寧に読めば、龍馬が薩長同盟において重要な役割をしていたことはわかる」として、「木戸孝允覚書」を引用している。

龍馬は現代語訳すると、以下の内容を語ったと記されている。

「この期に及んで、藩の対面を考えている場合か! 私が薩長同盟に奔走してきたのは、薩摩と長州のためではない! 天下のためを思って働いてきたのだ! あなたたち薩長の要人は、会同して10日以上になるのに、なぜ誓約をしないのだ! 過去の恨みは捨て去って、なぜお互いの腹を割って話し合いをしないのだ!」

木戸が龍馬に叱られている内容から、大村さんは「龍馬が最重要の役割を果たしていたことは間違いないことである」と書いている。

龍馬ブームへの反動から、感情的に歴史を捻じ曲げようとする主張を愚かだと批判している。

土佐藩の偽金作りに関与「龍馬はリアリストだった」

これほど大きな取引を仲介したにもかかわらず、ほとんど報酬をもらっていなかったという。経済的に行き詰ったところに、土佐藩の支援を受け、海援隊を立ち上げる。その意味について、こう書いている。

「龍馬ら隊士たちは、平時は船団を率いて貿易業などをおこない、戦争になれば海軍となり土佐藩を助ける」
「土佐藩は、隊士たちに給料を払ったり、船を提供したりするなどの便宜を図る」

海援隊の会計係になったのが、三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎である。土佐藩の貿易を長崎でつかさどる土佐商会の事実上の責任者だった弥太郎が、海援隊の会計も取り仕切ることになったのだ。

二人は酒を酌み交わす仲で、弥太郎は明治維新以降、海援隊の船などを引き継ぎ、瀬戸内海の海運業を一手に引き受けることで、三菱財閥の基礎を築いたという。

この後、海援隊の運航する「いろは丸」が紀州藩の「明光丸」に衝突され沈没する事故が起こる。いろは丸の船体の額は4万両程度だったが、龍馬は武器などの積み荷の額を含めて7万両を紀州藩からせしめた。

いろは丸に武器が積み込まれた証拠はなく、「龍馬は積んでもいない物の賠償を請求したことになる」と書いている。

こうした行為のほか、龍馬が土佐藩に持ちかけた「偽金製造」計画についても詳しく触れている。当時、土佐藩だけでなく、偽金作りをしていた藩は十数藩に及ぶという。

幕府は「万延二分金」という金の含有量を従来の60%にした超劣化貨幣を大量に鋳造した。幕府だけが潤うのを見た諸藩も、これを真似ようとした。

その代表が薩摩藩だった。龍馬は薩摩藩が作った偽金を入手しようと密偵を送り込んだり、土佐藩が大坂の藩邸で、やがて国元で偽金作りをしたりした詳細が書かれている。龍馬に縁のある者たちが実行したという。

最終章の「明治新政府を支えた『龍馬マネー』」では、大政奉還の後、龍馬が福井藩から招いた由利公正が金穀出納所(のちの大蔵省)の責任者として、新政府の金策に当たった。明治2(1869)年の時点で、新政府は267万両の財政資金を得られた。現代の価値で約2000億円。「その金で、やっと戊辰戦争の戦費を賄うことができたのだ」。

「龍馬は、『勇気』や『大義名分』を語る前に、まず金の算段をする。戦争に勝つためには金がいる。その金をどうするかを考えなくては、戦争はできない」

お金に関して、きわめてリアリストだった龍馬の姿を知り、龍馬ファンがますます増えるかもしれない。

「龍馬のマネー戦略」
大村大次郎著
秀和システム
1650円(税込)

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