イラクがフランスから「ラファール」を購入するという報道がありました。しかも、普通に買うのではなく、自国で産出される石油をその代わりにするそうです。
石油で最新戦闘機をゲット!?
イラクがフランスのダッソー製の戦闘機「ラファール」を12機調達すると、2024年10月中旬ごろからフランスをはじめとした複数の欧州メディアで報じられています。約32億ドル相当の契約になるそうですが、この支払い方法が実は特殊です。イラクは自国で産出される「石油」によって支払う模様です。
ダッソー製の戦闘機「ラファール」(画像:フランス領ギアナ クールー市)。
つまり物々交換で兵器を入手しようという訳ですが、実はこのような契約方法を取るケースはほかの国でも過去にありました。
イラクと同じく産油国であるサウジアラビアでは、1985年にイギリスから「トーネード IDS」戦闘攻撃機を96機購入する際に、購入資金の代わりに相応の原油を供給するという取引をしたことがあります。
また、2006年にユーロファイター「タイフーン」を72機購入する契約を結んだ際も同様のことを行っており、この一連の取引は「アル・ヤママ武器取引」とも呼ばれます。
実はウクライナ侵攻中のロシアでも
最近でもロシアが物々交換を提案した事例があります。同国は2023年11月、パキスタン、エジプト、ベラルーシ、ブラジルなど、自国製兵器の購入国に対してヘリコプターや兵器の予備部品の返還を要請しました。理由は、2022年2月に開始したウクライナ侵攻で不足した装備品を補充するためです。
このときは、エジプトがMi-8およびMi-17ヘリコプター用のエンジン約150基を返還するという取引に応じましたが、この見返りとしてロシアは払い戻し金ではなく「小麦輸出の継続を確約する」と、小麦を資金の代わりとしました。エジプトは小麦の全輸入量の60%以上をロシアに依存しており、この確約はある意味お金よりも重要でした。
さらにロシアは北朝鮮に食糧と引き換えに兵器を購入した可能性も報じられており、この行動をアメリカ政府が「ロシアは物乞いをしている」と揶揄したこともあります。
また、実現はしませんでしたが、2017年にインドネシアがロシア製のジェット戦闘機Su-35Sを11機購入するため、特産のコーヒー豆や茶、パーム油といった農産物との物々交換で対応しようとしています。当時、ロシアはクリミア半島併合などの問題で西側諸国から農水産物の輸入を禁止していたことにより考え出されたプランでした。結局この計画は、インドネシア軍の兵器システムにロシア機が合わなかったため、実現しませんでした。
ロシアがベラルーシからエンジンの提供を求めたMi-26大型輸送ヘリコプター(画像:ロシア国防省)。
このように、物々交換で兵器をやり取りする事案は、世界的には結構発生しています。技術が進歩し、世界中が貨幣経済で動く現在においても、地元の特産品での物々交換は、お金では買えない魅力を持っていることがわかるでしょう。