当初は疑いの目を向けられた中国製ステルス戦闘機J-20
今から15年前の2011年1月11日、それまで不鮮明な写真でしか存在が知られていなかった大型戦闘機が中国で初飛行しました。後に「J-20」と呼ばれるこの機体について西側では、本当に実用的なステルス戦闘機なのか、それとも技術実証を目的とした試験機に過ぎないのか、長いあいだ議論の対象となっていました。
中国最初のステルス戦闘機J-20は大型の機体であり、航続距離や搭載力を重視していると考えられる(画像:AVIC)
しかし、その疑問は2010年代後半に入ると急速に意味を失ってゆきます。2020年時点ですでに40から50機が生産され、実戦部隊へ配備が開始されていることが明らかとなりました。つまり焦点は「J-20が実用戦闘機なのか」ではなく、「中国がこれを何機運用しているのか」に移ったのです。
厄介なのは、中国がJ-20の保有数や年間生産数を公式には明らかにしていないことです。そのため衛星画像、部隊配備状況、航空機のシリアルナンバーなどを元に推測するしかありません。英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、2025年半ばの時点で約300機が少なくとも13個の人民解放軍空軍連隊に配備されていると推定しました。その後の分析では、2025年末のJ-20、J-20A、複座型J-20Sを合わせた運用機数は320から350機程度とされました。
さらに、製造体制も強化されており、年間生産能力は約120機という驚異的な規模に達しているとの推計も示されています。もし、この生産ペースが2026年も維持されているとしたら、J-20はいま何機まで増えているのでしょうか。
年間120機生産! J-20はどこまで増え続けるのか
2026年10月現在、単純計算するとJ-20の総調達機数はすでに400機を大きく上回り、500機に迫るのではないかと見積もられています。航空自衛隊の戦闘機配備数は320機なので、すでにJ-20だけでそれを上回っていることがほぼ確実であると考えられます。
J-20に続き中国が開発したステルス戦闘機J-35(画像:AVIC)
J-20に加えて中国では、比較的小型のJ-35の開発も進んでおり、空軍用の陸上型と海軍用の艦上型の生産・配備が今後本格化すると見られます。さらに名称不明の異形の大型三発機、推定名称J-36も目撃されています。
これらの新しいタイプの戦闘機とJ-20がどのようにすみ分けるのか、中国空軍がJ-20をどれだけ調達することを見込んでいるのか、詳細は不明ですが、年間120機あるいはそれ以上の生産能力が今後も維持されるなら、今日の「約400機」「約500機」という数字は、短期間のうちに過去の統計になっている可能性が極めて大きいといえます。
戦闘機の開発は極めて長い期間を必要とし、また量産開始後も最後の機体が退役するその日までアップデートが行われ続けます。従って戦闘機は最小限の能力を実現した時点でいったん区切りをつけて実用化され、その後完成度と能力を高めていくことになります。
J-20はすでに多くの機体が実戦配備されており、少なくとも中国人民解放軍空軍が実際の戦闘で使用できる能力を持つ戦闘機だと判断していることはほぼ確実と見られます。
中国は2011年に世界に姿を見せた、たった1機の試作戦闘機を、わずか15年足らずの時間で大規模な量産戦力へ変貌させました。いわゆる「第5世代戦闘機」を保有することと、第5世代戦闘機を大量運用できる航空戦力を構築することは別問題であり、それはJ-20より1年早く初飛行しながらいまだに本格的な配備にいたっていないロシアのSu-57を見ても明らかです。
2026年のJ-20をめぐる数字が示しているのは、中国が第5世代戦闘機を大量運用する国へ、すでに移ったという事実です。J-20は、もはや「中国にもステルス戦闘機がある」という事実を示すためだけの存在ではありません。
