「栄養が豊富」「積極的に食べた方がいい」といわれている食材は多くありますが、だからといって食べ過ぎてしまうと、逆に悪影響を及ぼしかねません。そんな「食べ過ぎ注意」の食材について、管理栄養士の岸百合恵さんにリスクや注意点を教えていただきました。今回の食材は、“筋トレの味方”としても注目される野菜「ブロッコリー」です。
原因は「シュウ酸」
ブロッコリーは食物繊維やビタミン類、鉄分、カリウム、葉酸、カルシウム、マグネシウムなど、多くの栄養素をバランスよく含んでいる野菜です。
中でもビタミンCはレモンの約2倍、カリウムはタマネギの約2.5倍、食物繊維は小松菜の約2倍、タンパク質はニンジンの約7倍の量が含まれています。タンパク質は、野菜の中ではかなりの含有量で、100グラムあたり4.3グラムも含まれます。
そして、特徴的なのは「ジインドリルメタン」と「I3C(インドール-3-カルビノール)」という成分が含まれていること。これらはアブラナ科の野菜に含まれる成分で、男性ホルモンの「テストステロン」を増強するとともに、女性ホルモンの「エストロゲン」を抑える働きがあります。
そんなブロッコリーですが、「栄養が豊富だから」といって食べ過ぎてしまうと、健康への影響や弊害があります。
まず、ブロッコリーは、他の野菜と比べると食物繊維の含有量が多いです。食物繊維の過剰摂取で便秘や下痢、おなかの張り、消化不良などの症状を引き起こす恐れがあるほか、栄養素の吸収を妨げてしまう可能性もあります。
ただし、現代人の食事では食物繊維の摂取量が不足していることの方が多いので、適量であれば積極的に食べていただきたい食材です。
また、ブロッコリーに含まれている「シュウ酸」は、摂取し過ぎると「尿路結石症」を引き起こす原因になります。ゆでることで、3分の1から2分の1程度のシュウ酸を取り除けますが、その一方でビタミンCやカリウムといった水溶性の栄養素も流れ出てしまいます。これらの栄養素をなるべく摂取したい場合は蒸したり、レンジ調理したりするとよいですが、ブロッコリーをたくさん食べるときはゆでることをおすすめします。
ブロッコリーにはカリウムも多く含まれていますが、通常の食事では、取り過ぎることはほとんどありません。ただし、腎機能が低下している人や、医師から注意を受けている人は「ゆでこぼし」をしたり、摂取量を控えたりする必要があります。
ブロッコリーで「体臭が強くなる」?
ちなみに、「ブロッコリーを食べ過ぎると、体臭が強くなる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。これにはブロッコリーをはじめとするアブラナ科の野菜に含まれる物質「コリン」が関係しています。
コリンは体内で「トリメチルアミン」という物質に変わり、それが増えると体臭が強くなります。しかし、これは通常では考えられないほどの量を食べた場合のことなので、ほとんどのケースでは問題ないでしょう。ただ、肝臓の機能が低下している人や、そもそもトリメチルアミンを分解できない体質の人に限り、注意が必要です。
ブロッコリーの摂取目安量は特に決められていませんが、厚生労働省は成人の野菜の摂取目安量を「1日あたり350グラム以上」、緑黄色野菜は「1日あたり120グラム以上」と設定しています。ブロッコリーは緑黄色野菜に分類されるので、他の緑黄色野菜と合わせて120グラム、さらにキノコや海藻も含め、全体で350グラムを目指すのがよいでしょう。
“食べ過ぎ”の明確な量は人によってさまざまなので、過剰摂取の明確な数値はありません。食べたときの体調や症状を見ながら、自分に合った量を探しましょう。ブロッコリーだけの話ではありませんが、一つの食材だけを摂取していると栄養が偏ってしまうので、全体のバランスが何よりも大切です。
オトナンサー編集部