婚活において、よいご縁を引き寄せられる法則は決断すべきときを見誤らないことです。決断力と行動力のある人がチャンスをつかめるのです。これは婚活だけではなく、仕事においても人生においても当てはまるのではないでしょうか。判断ミスが大きなチャンスや幸せを逃す結果になることがあります。
好条件を振って、好きになった人を選んだけれど…
斉藤まりこさん(38歳、仮名)は結婚相談所での婚活を始めて、半年がたちました。数十名とお見合いしましたが、ピンと来る相手にはなかなか巡り合えませんでした。しかし、1カ月ほど前にお見合いした山本洋一さん(45歳、同)とは、お見合い後に仮交際に入り、楽しくデートを重ねていたようでした。山本さんは上場企業に勤める、年収800万円の好条件の男性でした。
「山本さんは条件的にもフィーリング的にも、これまで、お見合いしてきた人たちの中では一番よいです。相談所にいる男性たちって、経歴が立派で年収があっても、女性慣れしていなかったり、話し下手だったりする人が多いから、山本さんみたいな人は本当に貴重です」
そんなことを言っていたまりこさんでしたが、週末に友達に誘われて、イベント業者が主催する婚活パーティーに参加しました。そこで、吉本智さん(41歳、仮名)とマッチング。吉本さんは小さいながらも会社を経営しており、コミュ力もあって、とてもすてきな男性でした。2度、3度とお会いしていくうちに、まりこさんはどんどん、吉本さんに引かれていき、私にこんな連絡を入れてきたのです。
「先日、パーティーでお会いした吉本さんとお付き合いするようになったら、山本さんへの気持ちが冷めてしまいました。山本さんには『交際終了』を出して、吉本さんとの関係を大切にしていこうと思います」
気持ちはもうすっかり、吉本さんに向かっていました。しかし、彼はイベント業者主催のパーティーで出会った男性。どこまで結婚に本気なのか分かりません。もしかしたら、気軽に遊べるガールフレンドを探しているだけかもしれませんし、何より、プロフィルに書かれていた情報が本当のことなのかどうかも分かりません。
ただ、まりこさんはすっかり気持ちを奪われていたので、私の言葉は届きませんでした。結局、仮交際中の山本さんには「交際終了」を出しました。
ところが、そこから1週間後、まりこさんから、「ちょっと、お電話で相談したいことがあります」と連絡が入ってきました。それはこんな相談でした。
「実はこの間、食事の後に吉本さんからホテルに誘われて、男女の関係になったんです。だけどそれからというもの、毎日来ていたLINEが来なくなって、2日後とか3日後に来るLINEの内容がすごくシンプルになっていたんです。それで不安になったから、昨日、思い切って電話で聞いてみたんです。『私のことをどう思っているの?』って。
そうしたら、『好きだけど、結婚とか今は考えられない』って。『まりちゃん、結婚を前提に男の人と付き合いたいみたいだから、このまま、僕らがお付き合いしていたら、まりちゃんを傷つけちゃうんじゃないかと思う』と言われたんです」
冷静に判断すれば、男性がこの関係を終わりにしたがっているのが伝わってきます。しかし、まりこさんは彼から言われた「好きだけど」という言葉にすがっていました。
「今は結婚を考えられないけど、私のことは好きなのだから、このまま関係を続けていれば、いつかは結婚を考えてくれるようになるのでしょうか」
私ははっきりと、まりこさんに言いました。
「結婚を今、決断できない人は3カ月後も1年後も結婚を決断しませんよ。彼との関係は終わりにして、次の新しい出会いに向かった方がいいですよ」
結局、吉本さんからは連絡が来なくなり、会うこともなくなって、まりこさんはまた、お見合いを始めました。ただ、失恋からは立ち直っておらず、お見合いに気持ちが入らないのか、今も苦戦中です。また、お断りを出した山本さんのような好条件の男性とはなかなか、お見合いが成立せずにいます。
石橋をたたき過ぎて幸運を逃す
内田まなみさん(35歳、仮名)は太田正義さん(38歳、同)からのプロポーズを受けて、成婚退会をしていきました。
そんなまなみさんですが、以前、私にこんなことを言っていたのです。
「正義さんって、すごく真面目で誠実な人だけれど、ちょっと慎重過ぎるというか。ファッションビルのレストランフロアでお店を選ぶときも、一軒一軒、すごくチェックするんですよ。私はどこでもいいから早く入って食事したいなといつも思うんです」
その話を母親にしたとき、母親はまなみさんにこう言ったそうです。
「あなたが大ざっぱな性格なのだから、慎重過ぎるくらいでちょうどいいわよ。それに、慎重な人というのは仕事も慎重にするし、大きなミスをすることもないんじゃないの?」
それもそうだと思い直したまなみさんは太田さんとの結婚を決めたのです。ところが、成婚退会した2カ月後、まなみさんからこんな連絡が来ました。
「婚約は解消しました。私、太田さんと結婚したら、人生の運をどんどん逃すような気がしたんです」
慎重過ぎる太田さんは何をするにも考えて考えて、なかなか行動に移さないので、結婚に向かって何も決まらない。決まらないどころか、どんどん、いい話を逃している。そう言うのです。
結婚式を決めようとしていたときのこと。まだ、コロナも落ち着いていないので、親族だけでこぢんまりとやることにしました。そこで、結婚式場を見に行ったのですが、慎重な太田さんはなかなか決断できず、候補をいくつかに絞り、あれこれ検討していたようです。ところが、そうこうしているうちに第1、第2候補だった2件とも、予定していた日が別の人に予約されてしまい、式場探しは振り出しに戻ってしまったとか。
さらに、家を決めるために地域を絞って、不動産屋さん巡りを始めたときのこと。まなみさんが「ここがいいな」と思っていた、駅から徒歩10分の物件をこれもまた、太田さんが決められずにいました。揚げ句の果てにこんなことを言い出したというのです。
「やっぱり、実家の近くに借りた方が、子どもが生まれたとき、親に子育てのサポートが受けられるよ」
まなみさんのご実家は地方なので、実家の近くというのは太田さんのご実家を意味します。お姑(しゅうとめ)さん、お舅(しゅうと)さんから子育てのサポートは受けられても、気を使うし、大学時代から1人暮らしをしてきたまなみさんには賛成しかねる提案でした。
「正義さんのご実家の近くだと私の通勤時間が長くなるし、最初に決めた通り、お互いの会社の中間地点の地域に住みましょうよ。私、気に入っていた物件があったじゃない?」
そう言って、その不動産屋さんを訪ねると時は既に遅し。その物件はもう、借り手が決まった後でした。
「母は『慎重過ぎる人は仕事で大きなミスをしない』って言っていたけれど、そうなのでしょうか? 慎重過ぎる人って目の前にチャンスが来ても、考えている間にそのチャンスが通り過ぎてしまう。結局、幸運を逃していくと思うんです。決断のできない太田さんと結婚したら、私の人生は好転しない気がしました。結局、何も決まっていないので婚約は解消することにしました」
二兎を追う者は一兎をも得ず
秋山陽太さん(41歳、仮名)は藤田里絵さん(35歳、同)、太田美香子さん(40歳、同)の2人と仮交際をしていました。
里絵さんは看護師で、美香子さんは派遣社員でした。どちらの女性も明るく、優しい人だったのですが、秋山さんとしては、選ぶなら里絵さんかなと思っていました。その理由がこうでした。
「結婚後に僕が病気になって、一時的に働けなくなったとしても、看護師の資格を持っている里絵さんなら、仕事に困らないだろう。でも、派遣社員の美香子さんの場合、僕にアクシデントがあったら、共倒れになるかもしれない。それに、子どもを授かることを考えたら、35歳の里絵さんの方がいい」
そう思っていたようでしたが、4回目のデートの別れ際に美香子さんから、「私たち、真剣交際に入りませんか?」と言われたのです。これまで婚活を続けてきて1年、なかなか、真剣交際にまで進めた女性がいなかったので、これは願ってもないことでした。しかし、秋山さんは里絵さんを断って、美香子さんと真剣交際に入る決断がつきませんでした。そこで、美香子さんに言ったのです。
「お返事の時間を2、3日頂いてもいいですか?」
すると、美香子さんは「分かりました」と笑顔で答えたようです。その日は土曜日で、翌日の日曜日には里絵さんと会うことになっていたので、真剣交際の話をそれとなくしてみて、里絵さんの反応次第で、美香子さんとの真剣交際に入るかどうかを決めようと思ったのでした。
日曜日、里絵さんと自然公園を散歩していたとき、秋山さんは言いました。
「僕は里絵さんといるとすごく自然でいられるし、安心できるので、この交際を大切に考えています。里絵さんの気持ち次第ですが、真剣交際に入れたらいいなと思っているんです」
そんな秋山さんに里絵さんは言いました。
「ありがとうございます。結婚相談所のお付き合いなのだから、交際も時期が来たら、先に進めないといけないんですよね」
その言葉を聞いて、とてもいい感触を得た気がしていました。そのため、美香子さんと真剣交際に進むのはお断りしようと思って帰宅しました。
ところがその夜、美香子さんの相談室から、「交際終了」の連絡が先に来ていました。断る前に断られてしまったのです。終了の理由は「真剣交際の打診にすぐに答えられないのは私との結婚を迷っているから。今、出せない答えは、待ったところでいいお返事は来ないと思います」というものでした。
秋山さんは驚きましたが、美香子さんと真剣交際に入るのはお断りするつもりでいたので、気持ちのどこかで少しホッとしました。
ところが翌日、今度は里絵さんの相談室からも「交際終了」の連絡が来たのです。
「デートで真剣交際という言葉を出されたとき、私には秋山さんとの結婚がイメージできませんでした」
“二兎を追う者は一兎をも得ず”ということわざがありますが、秋山さんは判断を誤ったため、2人の女性を逃してしまったのです。
たくさんの選択肢の中から、何を判断して、どう決断を下していくか。人生はその繰り返しだと思います。慎重に考えることも大切ですが、そこで行動を止めてしまったためにチャンスを逃すこともあります。婚活も人生も、よい結果を導き出せる人というのは、判断力と決断力のある人ではないでしょうか。
仲人・ライター 鎌田れい