手のひらや足の裏などに「たこ」「まめ」ができたことのある人は多いのではないでしょうか。皮膚の一部分が硬くなって痛みを伴うこともあり、日常生活の何気ない癖や習慣が原因でできる「ペンだこ」「座りだこ」などはよく知られています。ただ「たこ」「まめ」の他、同様に皮膚上に現れて痛みを伴う「うおのめ」や「いぼ」がそれぞれどう違うのか分からない人も少なくないようです。
ネット上では「どれもよく似ていて見分けがつかない」「痛みがなければ放置してもいいのかな」「治療は同じ?」など、さまざまな疑問の声があります。見分けることが難しいこれらの皮膚疾患について、アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。
まめ以外は皮膚科受診がおすすめ
Q.「たこ」「まめ」「うおのめ」「いぼ」はそれぞれ、どのような症状が出るのでしょうか。
佐藤さん「医学的に、『たこ』は『胼胝(べんち)』、『まめ』は『外傷性水疱(がいしょうせいすいほう)』、『うおのめ』は『鶏眼(けいがん)』、『いぼ』は『疣贅(ゆうぜい)』といいます。それぞれの症状は次の通りです」
【うおのめ・たこ】
どちらも、皮膚に部分的に一定の圧力や摩擦が加わった結果、角質が硬く、厚くなってできたものです。主に、足の親指や人さし指、小指、足の裏の突出したところにできやすく、足の形に合わない靴を履いていたり、足の一部に局所的に圧力がかかるような歩き方をしていたりするとできます。
うおのめは中央に角質の塊である硬い芯ができ、真皮(皮膚の深い層)へ深く入り込むため、圧痛(圧迫されたときの痛み)を伴います。一方、たこには芯がなく、角質が均等に厚くなっているのでそれほど圧痛はありません。
【まめ】
急激な摩擦が皮膚に加わってできる水疱のことで、靴擦れ、テニスやゴルフなどのスイングでできることがあります。水疱が破れて皮膚がめくれると真皮がむき出しになり、痛みを伴います。手のひらの指の付け根や足の裏、かかとにできやすいです。
【いぼ】
いぼにはさまざまな種類がありますが、手足にできやすく、たこ・うおのめと区別がつきにくいものは「尋常性疣贅」といいます。これは、ヒトパピローマウイルスの感染が原因で体中どこにでもできます。手足に炎症が生じたり、微細な傷ができて皮膚のバリアー機能が低下したりすると、ウイルスが皮膚の奥に侵入して増殖し、いぼができます。
角質が盛り上がって小さな『できもの』ができますが、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
Q.これら4つの見分け方はありますか。
佐藤さん「うおのめ・たこは芯の有無で区別がつきます。どちらも皮膚の角質が厚く硬くなりますが、先述の通り、うおのめは中央に芯があり、そこが最も厚くなっていることが多いです。一方、たこは芯がなく、一様に厚くなっています。うおのめは押さえると芯が真皮に当たって痛みがありますが、たこはそれほど痛みがありません。
いぼは部位に関係なく生じ、多発化する傾向があります。部分的に角質が厚くなりますが、よく見ると表面は一様ではなく、ザラザラした印象で黒い点々が見えることもあります。これは、厚くなった角質に毛細血管が入り込んでいるためで、角層を少し削っただけで出血することがあります。通常は無症状で、痛みも伴いません。
しかし、全てがそのような外観というわけではなく、実際は、いぼとうおのめ、たこの区別が難しいことも多く、皮膚科医の診断が必要になります。まめは水泡があることと原因がはっきりしている点で、他と区別しやすいです」
Q.これら4つの症状は自然治癒するのでしょうか。また、自己流で除去してもよいのでしょうか。
佐藤さん「たこ・うおのめは痛みがなければ放置しても問題はありませんが、慢性的な圧迫が原因なので、原因が除去できない限り自然治癒はありません。痛みが出てくるようなら、厚くなった角質を少し削っても構いませんが、皮膚科の受診をおすすめします。
まめは、水疱の部分をばんそうこうなどで固定しておけば自然に治ります。いぼは自然治癒することがありますが、放置すると数が増えたり、他の部位にうつったり、他人にうつしたりする可能性もあります。また、いぼをたこ・うおのめと思って自分で削ろうとすると、出血して傷をつけることがあるので、自己判断で削るのはNGです。
いぼを見つけたら皮膚科を受診して、治療を受けた方がよいでしょう」
Q.皮膚科での治療方法や、再発の有無を教えてください。
佐藤さん「たこは、厚くなった角質をメスやカミソリなどで薄く削ります。うおのめも厚い角質を削り、芯をくりぬきます。芯を取りやすくするために、あらかじめ角質を軟化させる貼り薬などを貼っておいて処置することもあります。手術で切除する選択肢もありますが、慢性的な圧迫が続く限りほとんどの例で再発してしまいます。
まめはばんそうこうなどで固定し、水疱の中の液が吸収されるのを待ちます。水疱が破れた場合も、皮膚が再生するまではばんそうこうなどで保護します。化膿することもあるので、よく洗って清潔を保つことが重要です。
いぼには、特効薬や特別な治療法はありません。液体窒素で冷凍凝固する方法や電気メスで焼いて取る方法、ウイルスを殺す薬品を塗布する方法、漢方薬の『ヨクイニン』の内服などがあります。治療して一度小さくなっても再発することがあり、継続的な治療が必要なことが多いです」
それぞれの予防法は?
Q.予防法を教えてください。
佐藤さん「先述の通り、たこ・うおのめは慢性的な圧迫が原因なので、それを可能な限り取り除くことが大切です。自分の足に合っていない靴が原因のことが多いため、適正な靴に変えることや、正しい歩行・姿勢を身に付けることも必要です。
職業上の理由で靴が変えられないなど、原因を除去できない場合、角質軟化剤や保湿剤でのスキンケアやパッドなどで局所の刺激を少なくする工夫が必要です。まめは急激に圧迫や摩擦などの負荷で生じるので、起こりそうな箇所をあらかじめ保護するなどの対策をしましょう。
いぼは小さな傷からウイルスが皮膚や粘膜に入り込み、表皮の深くまで到達することで生じますが、医学的に、いぼのウイルスは正常な皮膚には感染できないとされます。第一の予防法は、傷や皮膚の炎症に注意することです。傷ができやすい手足や肘、膝、ひげそり後、手荒れなどのスキンケアを行い、炎症を起こさないようにすることが大事です。
また、いぼが広がるのを防ぐため、こまめな手洗い▽傷を作らない▽傷口を触らないこと――を心掛けましょう。家族で発症している人がいれば、タオルやバスマットの共用はなるべく避けましょう。免疫低下やストレスも、いぼを悪化させる要因になるので体調を整えることも大切です」
オトナンサー編集部