まいにちニュース ニュースを読んでいいねして、毎日たのしくポイントゲット!

まいにちニュース > 「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」東京都知事選挙で印象に残った演説

「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」東京都知事選挙で印象に残った演説

P R
P R
「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」東京都知事選挙で印象に残った演説

「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」東京都知事選挙で印象に残った演説

畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」著者が質問した「カイロ大学の卒業証書」を報道陣に公開する記者会見に著者は呼ばれず。後日閲覧できたが小池百合子への質問機会は失われた。抽象的な言葉のフリップは毎回提示。(撮影/畠山理仁)著者が質問した「カイロ大学の卒業証書」を報道陣に公開する記者会見に著者は呼ばれず。後日閲覧できたが小池百合子への質問機会は失われた。抽象的な言葉のフリップは毎回提示。(撮影/畠山理仁)

総額約55億円の経費をかけた東京都知事選挙が終わった

 心にぽっかり穴が開く「選挙ロス」の季節がやってきた。
 総額55億1117万6千円もの経費をかけた東京都知事選挙(6月18日告示・7月5日投開票)が終わってしまったからだ。

 私は4年に1度の都知事選を「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」と勝手に呼んでいる。都民以外も立候補できる都知事選には全国から人材が集まるからだ。
 今回の都知事選は告示前に「盛り上がらないのではないか」と言われた。新型コロナウイルス感染症により、街頭や屋内での選挙運動が通常通りとはいかないからだ。
 だからメディアは現職が出馬表明をする前から「現職圧勝か」「危機下では現職有利」と盛んに報じた。そのため「現職の他に候補者が出ないのではないか」とまで言われた。

 しかし、私は全く別の予想をしていた。新型コロナ禍にある今ほど、政治の力が求められる時はないからだ。
 負け戦をしたくない政党は独自の候補を立てなかった。当選のしやすさで別の選挙を選んだ人もいた。しかし、私は必ず「自分がこの危機を救う」という気概をもった人たちが多数立候補してくれると信じていた。
 実際、今回の候補者は史上最多の22名となった。いずれも強い危機感を持っていた。
 山口県(竹本秀之)、愛知県(牛尾和恵)、石川県(押越清悦)、神奈川県(後藤輝樹)、千葉県(平塚正幸、内藤ひさお)からもエントリーがあった。
 一人ひとりが真剣に考えた政策を世の中に正々堂々と問い、それぞれが真剣に17日間の選挙戦を、駆けて、駆けて、駆け抜けたのだった。

 「当選」という金メダルを手にするのは、たった一人だ。しかし、結果が出るまでの戦いには、心を揺さぶる数々の好プレーがあった。忘れられない言葉があった。
 結果として、彼・彼女たちは選挙で負けたかもしれない。しかし、私は選挙期間中、「その瞬間」を見逃すまいと走り回った。

「主要候補」のひとりとされた宇都宮健児の演説。コロナ禍での選挙の様子もみえた。(撮影/畠山理仁)「主要候補」のひとりとされた宇都宮健児の演説。コロナ禍での選挙の様子もみえた。(撮影/畠山理仁)

多くのメディアは候補者22名を「主要5候補」「その他の候補」として扱っていた

 今回も私は都知事選告示日(6月18日)のずっと前から取材を進めてきた。そうしなければ全候補者に出会うことが難しいからだ。

 最初に都知事選の出馬表明記者会見を取材したのは4月1日。「伝説の都知事候補」「政見放送芸人」とも呼ばれたマック赤坂(現・東京都港区議会議員)の後継者であり、マック赤坂の付き人を3年半も務めた込山洋の出馬表明だった。
 翌週にはNHKから国民を守る党党首である立花孝志の出馬表明があった。立花はこのときから「定数1の都知事選に同じ党から複数の候補者を立てる」と宣言していた。

 5月18日からは、立候補に必要な書類が東京都の選挙管理委員会で配布され始めた。そこから次第に都知事選に向けての動きは慌ただしくなっていった。
 都庁の記者会見室に通い、次々と出馬表明をする候補予定者を取材する日々が続いた。ここで接触したのを最後に、あとの連絡は電話とメールだけになる人もいた。電話すら通じなくなる人もいた。17日間ずっと私からの電話を無視し続ける人もいた。鋼のように堅い意思がなければ、決してそのようなことはできないだろう。

 多くのメディアは今回の候補者22名のうち、山本太郎、小池百合子、宇都宮健児、小野泰輔、立花孝志を「主要5候補」として扱った。それ以外の候補者は、いつものように「その他の候補」として扱われた。
 選挙中の6月25日には、こうしたメディアによる差別に抗議する形で七海ひろこが都知事選からの「撤退」を表明した。公職選挙法上、立候補の取り下げが認められるのは告示日の17時までだ。撤退の意思表示は自由だが、公選法上は候補者のままである。そのためメディアは七海の「撤退宣言」すらほとんど無視していた。
 メディアがあらかじめ候補者を「選別」するのは「報道の自由」として認められている。一方で、「あらかじめ選別しないメディア」が一つくらいはあってもいいと私は思っている。有権者には「入れたくない候補には入れない権利」があるからだ。

 しかし、残念ながら日本にはそういったメディアがない。そのため私は自分自身のスタイルとして、すべての候補者に声をかけて報道することを心がけてきた。
 この考えを他人に強要するつもりはない。しかし、こうした私の考えを尊重して選挙取材のサポートをしてくれたのが「ニコニコ生放送」(ドワンゴ)だった。
 今回、私はニコニコ生放送の都知事選企画の一部をお手伝いしている。最初の企画は全候補者に登壇依頼をし、告示日夜に18名の候補者が参加した「ネット演説」だ。

【都知事選2020】ネット演説

 選挙戦中盤の6月28日には「東京都知事選挙 討論会2.5【主催:畠山理仁ch】」(全候補者22名に参加依頼。7名は同日行われた東京JC主催の討論会への出席を選択したため、『討論会2.5』にはそれ以外の候補から8名が参加)を開いた。

東京都知事選挙 討論会2.5【主催:畠山理仁ch】

 そして投開票日の夜には開票特番として「候補者たずねて夜の街LIVE」を行った。

【都知事選2020】もう1つの開票特番 候補者たずねて夜の街LIVE(畠山理仁ch)【主催:畠山理仁ch】

 いずれも「ニコニコ生放送」の理解と協力がなければできなかった。すべての候補者と視聴者にも心から感謝したい。
 一方で、「『その他の候補』に政策なんてあるの?」と偉そうに言う人たちに聞きたい。

「あなたは選挙公報も読まずに投票したのですか?」

「その他の候補者」とされた中で一番の得票を集めたのは全体5位、日本第一党の桜井誠。立候補会見では自分を取り上げない既存メディアを大批判。(撮影/畠山理仁)「その他の候補者」とされた中で一番の得票を集めたのは全体5位、日本第一党の桜井誠。立候補会見では自分を取り上げない既存メディアを大批判。(撮影/畠山理仁)西本誠の選挙カーは黒塗りのベンツ。自らハンドルを握り、時には別の候補者の後を追いかけた。(撮影/畠山理仁)西本誠の選挙カーは黒塗りのベンツ。自らハンドルを握り、時には別の候補者の後を追いかけた。(撮影/畠山理仁)

「7回の逮捕歴」「全身に入れ墨」「最初は売名のつもりで立候補」を正直に語った西本誠

 一人で22名の候補者を取材した上で書く。

 22名の候補者を「ネタ」的に扱う風潮には異議を唱えたい。
 この連載では何度も繰り返してきたが、選挙に出るのはとても大変だ。すべての候補者は金銭的にも精神的にも高いハードルを飛び超えてきたアスリートだと思ってほしい。

 今回の都知事選では西本誠(33歳)という新星が現れた。こうした新しい出会いが私をまた選挙取材へと向かわせる。
 西本は「スーパークレイジー君」という名前で歌手として活動をしている。最初はこの名前を「通称」使用して選挙を戦おうとしたのだが、「世間で認知されていない」という悲しい理由で選挙管理委員会に却下された。
 しかし、西本は通称認定を受けられる前提でポスターを印刷していた。困った西本は苦肉の策で「スーパークレイジー君」という政治団体を立ち上げて立候補した。

 西本の選挙カーは黒塗りのベンツだった。髪は金髪。衣装はまるで暴走族のメンバーが着るような文字入りの白い特攻服だった。
 選挙の候補者でなければこちらから話しかけることはなかっただろう。目も合わせにくい。しかし、それでは仕事にならないので声をかけると、西本は見た目からは想像できないような柔らかい語り口で話をしてくれた。

「元暴走族で7回の逮捕歴(すべて「共同危険行為」)があります」
「中学校から少年院に5年入っていました」
「全身に入れ墨が入っています」
「銀座の高級クラブで雇われ社長をやっていました」
「百合子か、俺か」

 素直で素朴な語り口と語られる内容の間には大きなギャップがあった。
 西本は選挙演説で自身の複雑な生い立ちや最初は売名のつもりで立候補したことを正直に語った。一方で、仲間とともに自分の曲「てんてんむし」を歌って踊る活動もした。「女性の家を転々とする」という歌詞の歌だ。
 派手なのか。真面目なのか。どちらが本当の西本なのかと戸惑うが、どちらも西本だ。

「僕はこれまで1回しか選挙にいったことがなかった。それもお店のお客さんに『今度娘が選挙に出るから』と頼まれて」
 その選挙で、西本はお店で働いていた女の子たちに声をかけ、約200人を投票所に連れて行ったという。彼女たちはこれまで誰一人として選挙に行った経験はなかった。西本が会ったこともないのに応援したその候補者はわずか180票差で当選したという。
「これ、行けんじゃねーの?」
 西本はそう思ったという。その一方で、社会のおかしさも指摘する。

「投票率が低い。投票所がエベレストの上や富士山の上にあるなら投票率が低いのもわかるけど、実際には近い。それなのになぜ投票に行かないのか。僕は選挙に行ったことがない若者に選挙に行ってほしいと思ってます。400万〜600万人いると言われる『選挙に行かない人たち』の票を動かしたい。僕に入れなくてもいい」
 西本は「アメリカ大統領選挙を見るのが好きだ」と言った。理由は「見ていて楽しいから」。日本の選挙を「渋谷のハロウィンのように楽しいものにしたい」とも言っていた。

印象に残った中野駅北口での演説。西本誠はこれからも選挙に出続けるつもりだ。(撮影/畠山理仁)印象に残った中野駅北口での演説。西本誠はこれからも選挙に出続けるつもりだ。(撮影/畠山理仁)

中野駅北口での西本の演説は忘れられないものだった

 西本の外見と演説のギャップに人々は驚いて足を止めた。ところどころ言葉に詰まる彼の素朴な語り口に、次はどんな言葉が飛び出すのかと注目した。

 この都知事選で忘れられない演説がある。それは中野駅北口での演説だ。西本は白い特攻服姿で白い手袋をし、黒塗りのベンツの前でマイクを握って静かに語りかけた。
「『オリンピックで一番覚えてるの何?』って言われた時、僕が思い出すのは日本人じゃないんです。ある外国の国で、泳いだこともないのにオリンピックに出された選手のことを唯一覚えているんです」

 聴衆は立ち止まって次の言葉を待つ。

「バカじゃないのかって、最初思ったんです。その国にプールもないし。バカか、みたいな。でも、その人は初めて……。練習は25mプールでしかできていないけど、オリンピックで100m泳ぎきった。その時に、金メダル取った時よりも周りの人が『ウォーッ』てなってて……。最初はバカにしてたのに……」

 西本は絞り出すように言葉を続けた。

「自分も絶対、『あの時、あいつはああ言ってたよな』とか『学歴ないけどちゃんとやってるな』と言われる人になりたい」

 西本はこれからも選挙に出続けるつもりだという。
 最初の選挙での得票は11,887票。西本の初めての「オリンピック」は22名中10位という結果に終わった。

選挙が持つ大きな役割の一つは「よい政策」を社会が共有すること

 選挙を単なる勝ち負けの場で終わらせてしまうのはもったいない。

 実は今回の都知事選で22名の候補者が訴えた政策の中には、主張が重なる公約も少なくない。政策が重なるということは、社会的なニーズが高い問題だといえる。
 たとえば、江戸城再建、ベーシックインカムの導入、動物殺処分ゼロ、アニマルポリスの設置などは複数の候補が掲げていた。
 また、通勤ラッシュを解消するための首都高速のダイナミックプライシング(渋滞する時間帯は料金を高くするなど、時間帯によって料金を変動させる)や電車の時間帯別料金(混雑時は料金を高くする)なども複数の候補者から出ていた。

 選挙に出るすべての候補者は、心のどこかに「社会の役に立ちたい」という公共心がある。他人からは理解されづらいかもしれないが、必ずある。それゆえ、たとえ自分は落選しても、自分が提案した政策が社会の中で共有、シェア、パクられることは喜ぶ。それだけでも選挙に出た意味があるからだ。

 有権者が「選びたい候補者が立候補していない」と嘆いているだけでは、決していい候補者は出てこない。有権者の選択肢となる候補者は、社会が育てるしかないからだ。
 つまり、「選びたい候補者がいない」現状は、「今の社会に候補者を育てる力がない」ということの現れだと私は思う。
 選挙の際には、最初から「主要候補」「それ以外の候補」をわけずにフラットな目で見てほしい。そのうえで「投票してもいい候補」と「投票してはいけない候補」を自分の価値基準で選んだほうがいい。あなたの価値観は、あなただけのものだ。

 そして、自分が推す候補者以外の政策にも目を向けてほしい。自分の価値基準に照らして「これはいい」「社会でこの問題意識を共有してほしい」と思う政策があれば、それを自分が支援する候補者に伝えてほしい。
 そうすれば、たとえ候補者が落選しても政策は生き残る。落選した候補の立候補が無駄ではなくなる。
 選挙が持つ大きな役割の一つは、選挙を通して候補者と有権者がコミュニケーションを取ることだ。そうすれば、必ず「よい政策」は社会で共有されていくだろう。

(文中敬称略)

東京都知事選挙開票結果(6月18日告示・7月5日投開票・投票率55.00%・得票順)

小池ゆりこ 3,661,371 無所属
宇都宮けんじ 844,151 無所属
山本太郎 657,277 れいわ新選組
小野たいすけ 612,530 無所属
桜井誠 178,784.29 日本第一党
立花孝志 43,912 ホリエモン新党
七海ひろこ 22,003 幸福実現党
ごとうてるき 21,997 (略称)トランスヒューマニスト党
沢しおん 20,738 無所属
西本誠 11,887.70 スーパークレイジー君
込山洋 10,935.58 無所属
平塚正幸 8,997 国民主権党
服部修 5,453 ホリエモン新党
さいとう健一郎 5,114 ホリエモン新党
市川ヒロシ 4,760.41 庶民と動物の会
ないとうひさお 4,145 無所属
関口安弘 4,097 無所属
竹本秀之 3,997 無所属
石井均 3,356 無所属
長澤育弘 2,955 無所属
押越清悦 2,708 無所属
牛尾和恵 1,510 無所属

P R
P R

ポイントを獲得するには、ログインもしくは会員登録(無料)が必要です。

まいにちニュースの使い方

1.興味のある記事を選ぶ。2.記事を読む。3.いまの気分を表そう。4.ポイントゲット

まいにちニュースのルール

  • ニュース記事を読み、「いいね」「ひどいね」「かなしい」「うれしい」のうち、いずれかのボタンを押すと1ポイントが加算されます。
  • ポイントが加算されるのは、2記事目4記事目5記事目の記事となります。
  • ポイント加算は、PC版とスマホ版それぞれで1日最大3回、あわせて6回までとなります。
  • ポイントはニュース記事ページ下部にあるボタンを押した時点で加算されます。
  • 一記事でポイント加算されるのは1回1ポイントのみです。
  • 各記事ページにある「関連する記事」はポイント加算対象外です。
  • ニュース記事の更新は随時行われます。
  • ポイント獲得回数の更新は毎日午前3時に行われます。

犬がいるよ

まいにち少年