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東急「新空港線」に勝ち目はあるのか “羽田アクセス線”に宣戦布告? 蒲蒲接続の熱意を探る

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東急電鉄が国に対し、「新空港線」の営業構想の認定を申請しました。東急多摩川線を途中から地下化して京急蒲田駅付近まで延伸する計画です。しかしそこには、東横線直通の課題やJR東日本が構想する強大なライバルも存在。東急新空港線に「勝ち目」はあるのでしょうか。

東横線の列車を東急多摩川線に入れるには

 東急電鉄は2025年1月17日、新空港線の整備に向けて「営業構想の認定」を国土交通省に申請したと発表しました。新空港線とは、東急多摩川線矢口渡~蒲田間の地下化と、地下新駅から京急蒲田駅付近までの新線、計1.7kmを整備する構想です。

Large figure1 gallery7蒲田~多摩川間を結ぶ東急多摩川線(大藤碩哉撮影)

 総事業費は約1250億円と見込まれており、整備は上下分離方式で行われます。営業主体は東急、整備主体は大田区と東急電鉄が出資する第3セクター「羽田エアポートライン」で、同社は同日に「整備構想の認定」を申請しています。

 しかし新空港線を名乗りながら空港には到達せず、京急蒲田で乗り換えが必要です。京急線と直通する「第二期整備」構想も存在しますが、線路幅や車両規格の違いから実現の目途は立っていません。つまり実態は「空港アクセス路線」ではなく、「京急空港線アクセス路線」というべき路線なのです。

 東急が想定する羽田アクセスは、どのようなものになるのでしょうか。蒲田~京急蒲田間の鉄道整備構想がかつて「蒲蒲線」と呼ばれていたように、新空港線は蒲田中心部の東西アクセス向上という役割も担うことから、基本的には東急多摩川線の全列車が京急蒲田駅直下まで延長運転すると思われます。

 問題は東横線直通列車です。今回のプレスリリースには、中目黒~京急蒲田駅付近間の所要時間が約36分から約23分、自由が丘~京急蒲田駅付近間が約37分から約15分にそれぞれ短縮するとの記載があります。京急蒲田~羽田空港(第1・第2ターミナル)駅間が約10分、乗り換え時間を5分とすると、中目黒~羽田空港間が40分程度となる計算です。

 東横線中目黒~多摩川間は現在、各駅停車で12~14分程度、急行で10分程度です。蒲田~京急蒲田駅付近間(800m)を停車時間も含めて2分と仮定すると、東横線急行が乗り入れた場合、東急多摩川線内の所要時間は11分となります。

 現在の多摩川~蒲田間各駅停車は11~12分程度なので時短効果がありませんが、東急多摩川線には待避設備がないため、日中毎時8本運転する各駅停車に東横線直通急行を挟み込んでも、速度を出せないのです(これは京急空港線も同様)。しかし各駅に停車するわけにもいきません。

 また東急多摩川駅は東横線と異なる短い18m車両3両編成で、ホームも最大4両分しかありません。渋谷方から同線に乗り入れる場合、多摩川駅の手前で分岐し、東急多摩川線専用の地下ホームに入りますが、こちらもホームは4両分。新空港線のために地下の多摩川駅を拡幅する大工事を行うとは思えません。

 とはいえ3両編成を東横線に直通させるのは輸送力の観点から非現実的です。東横線には10両編成と8両編成がありますが、誤乗を避けるために他の優等列車と同じ10両を直通列車に使用し、多摩川~蒲田間の全駅を通過とした上で、地下化した蒲田駅と終点のみ10両分のホームを用意するのかもしれません。

新空港線が太刀打ちできない「強大なライバル」構想

 新空港線には、JR東日本羽田空港アクセス線の西山手ルートという強大なライバルがいます。現在建設中の東山手ルートと臨海部ルートは2031年度の開業を予定していますが、連絡線整備が必要な西山手ルートの見通しは立っていません。ただ新空港線はさらに先、2040年度開業予定なので、そう変わらない可能性もあります。

 JR東日本の構想では、新宿~羽田空港間は東京モノレール経由で46分、京急経由で41分のところ西山手ルートは23分で結ぶとしており、渋谷であれば20分を割るでしょう。京急蒲田で乗り換えが必要な新空港線では太刀打ちできません。

 では、どの区間であれば西山手ルートに勝てるでしょうか。前述の自由が丘駅は羽田空港まで約30分です。自由が丘~渋谷駅間は特急で約11分ですから、JRへの乗り換え時間を考慮すると、西山手ルートに勝てそうです。

 同様に田園調布や武蔵小杉、元住吉といった拠点駅も新空港線経由が優位です。つまり東急は渋谷、新宿、池袋からの空港アクセス需要ではなく、あくまで自社線からのアクセス向上を狙っていると言えるでしょう。

 なお、構想の前提となる2016年の交通政策審議会答申第198号は、新空港線について「東急東横線、東京メトロ副都心線、東武東上本線、西武池袋線との広域鉄道ネットワークを通じて、国際競争力強化の拠点である新宿、渋谷、池袋等や東京都北西部・埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上に寄与する」としています。

 つまり、今回の営業構想には明記されていませんが、新空港線の東横線直通列車は渋谷止まりではなく、副都心線、東武線、西武線方面への直通を視野に入れています。しかし、広域鉄道ネットワークの観点では西山手ルートへの対抗は困難と思われます。

 開業時の運行形態がどうなるのか、開業は15年も先の話であり、西山手ルートの見通しが立っていない以上、現時点では何とも言えません。それでも今回の営業構想からは、東急が東急新横浜線による東海道新幹線との接続に続き、羽田空港アクセスを改善することで、沿線価値を向上させたいという熱意が伝わってきます。

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