このたび英空軍がF-35戦闘機に「ミーティア」ミサイルを搭載し、初の試験飛行を実施しました。これは欧州共同開発のミサイルで、イギリスやイタリアなどで運用されています。ゆえに、日英伊で開発中のGCAPにも搭載されるかもしれません。
F-35×欧州製の新型ミサイル=最強?
2025年2月28日、イギリス空軍はF-35戦闘機に「ミーティア」空対空ミサイルを搭載し、初の試験飛行を実施しました。この歴史的な飛行は、アメリカ東海岸のメリーランド州にあるパタクセント・リバー海軍航空基地で実施され、英米双方の政府機関、国防省、防衛装備支援省、さらにはMBDAやロッキード・マーティンといった産業パートナーの協力によって実現したとのこと。今回のF-35と「ミーティア」の統合は、航空戦闘能力の増強に繋がる画期的な一歩となると考えられます。
「ミーティア」空対空ミサイルを搭載するウェポンベイを開いた状態で飛行するF-35B。(写真:イギリス空軍)。
「ミーティア」は、イギリス空軍および欧州諸国が運用するユーロファイター「タイフーン」、ダッソー「ラファール」、サーブ「グリペン」などといった戦闘機で運用されている新鋭の空対空ミサイルです。
最大の特徴は、従来の固体燃料ロケットブースターとは異なり、酸素を空気中から吸気し燃料と混合し燃焼させる「ダクテッドロケット推進方式」を採用している点にあります。「ミーティア」は「酸化剤」を必要としない分、より多くの燃料を搭載可能であり、また燃焼スピードを調整するスロットル機能を備えることで、長時間持続的な推力を生み出し続けることが可能です。
既存の固体燃料ロケットを使用するAIM-120「アムラーム」空対空ミサイルは数秒間という短時間で燃焼し、ミサイルが目標に到達する前に推力を失います。そのためトップスピードに到達した後は滑空しますが、「ミーティア」は燃焼スピードを調整することで推力の発生を持続させることができるため、加速力や最高速度という点では「アムラーム」に劣るものの飛翔中の平均速度を高いまま維持しやすく、より長距離を飛翔することが可能となります。
ミサイルの機動性は速度エネルギーに依存するため、「ミーティア」は「アムラーム」の2倍もの「ノーエスケープゾーン(必中射程)」を実現するといわれています。この特性がF-35に組み合わせられることで、同機はステルス戦闘機として空対空戦闘能力が飛躍的に向上すると見込まれます。
日本も将来「ミーティア」を導入するかも
今回の試験飛行は、短距離離陸・垂直着陸型のF-35Bへの統合を進めるイギリスによって行われましたが、イタリアは通常離着陸型F-35Aへの「ミーティア」統合を進めており、両国が協力することで両機種での「ミーティア」搭載が現実のものとなるでしょう。
F-35A「ライトニングII」とともに展示される「ミーティア」ミサイル(画像:MBDA)。
加えて、イギリスやイタリアは、日英伊による次世代戦闘機開発プロジェクト「GCAP(グローバル・コンバット・エア・プログラム)」においてもミーティアの統合を視野に入れると考えられます。この計画は、2040年代の空戦環境に対応するための新世代戦闘機を開発するものであり、ミーティアの長射程はGCAPの主要兵装としても適合します。
GCAPを導入する日本も、必然的に「ミーティア」の運用能力を獲得することになると考えられるため、日本においてもF-35への搭載を目的に「ミーティア」を導入するかもしれません。
現在、日本はF-35AおよびF-35Bの導入を進めており、防空能力の強化が進んでいます。F-35A/Bの両方で「ミーティア」の運用が可能になれば、航空自衛隊はより高度な視程距離外戦闘能力を獲得することに繋がり、地域における航空優勢を維持するうえで大きなアドバンテージとなるでしょう。
特に中国やロシアはAIM-120「アムラーム」の射程を上回る大型の空対空ミサイルを装備しており、長距離戦闘能力に優れています。また、中国は非常に充実した空中早期警戒機や電子偵察機を保有します。こうした高価値目標を迎撃するミッションなどにおいても「ミーティア」は有効であることから、近い将来、自衛隊の戦闘機も同ミサイルが搭載されているかもしれません。