車両基地内で有料の撮影会が行われる機会が増えています。ところが、ある撮影会では「逆光」により、車両を綺麗に撮影できない事態が発生しました。何があったのでしょうか。
有料撮影会のメリット
鉄道会社が主催する有料撮影会では、普段は立ち入ることのできない基地などで車両を撮影することができ、また三脚の使用が許可されるなど、比較的良い条件であるのがメリットです。障害物が少ない状態で、車両を綺麗に撮影することが期待できます。
車両基地の一般公開の例。車両に太陽光が当たった順光の状態(2018年11月、柴田東吾撮影)
ところが、ある有料撮影会では条件が悪く、目当ての車両が綺麗に撮影できない事態が発生しました。「逆光」が原因だったのですが、なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
そもそも営業運転を行っている列車では、走行している状態か、駅に停車している短い時間のなかで撮影することになります。また、車両を綺麗に撮影できる場所も、意外と限られています。「撮り鉄」と呼ばれる、鉄道撮影を趣味とする人達が特定の場所に固まっているのはそのためです。
商品のカタログや、人物であればタレントやモデルを撮影するように、鉄道車両を綺麗に撮影するのは意外と難しいもの。その点、有料撮影会は決まった日時に足を運ぶ必要がありますが、一瞬で列車が去ってしまう状況とは違って、参加者どうしで譲り合いながら、じっくりと時間をかけて撮影できるメリットがあります。
逆光って何? どういう状態をいう?
スマートフォン全盛の現代では、「写真なんて、簡単に撮れるじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、試しにお気に入りのグッズや食事などを撮影してみると、綺麗に撮影したつもりでも、それらに影ができてしまったり、逆に光が入り込んで見えづらかったりすることがあります。
逆光の状態で撮影した例。全体的に車両が黒ずんだ状態で写っている(2018年12月、柴田東吾撮影)
鉄道車両を撮影する場合は、車両に陽が当たるような光線状態にすると、綺麗に撮影することができます。車両に対して光が当たる光線状態を「順光」と呼びます。
一方で、撮りたい車両の側から陽が差したり、光が当たったりする状態を「逆光」と呼んでいます。この場合は、車両に影ができたように黒ずんだり、全体的に黄色がかったりした写真になってしまうのです。何を撮影したのか、一見しただけではわかりません。撮影位置と日差しの組み合わせを調整することがカギになります。
ところが、冒頭の有料撮影会では撮影位置と光線状態が悪く、逆光のなかで撮影することになってしまいました。このため、参加者から不満が出てしまったのです。
車両基地での撮影は、車両を留め置く位置や撮影する時間帯によって撮れ方が変わります。たとえば、車両基地の敷地が東西に延びている場合は、車両も東西方向に置かれることになります。この場合は、午前中には東側から撮影し、午後からは西側から撮影すると、どちらも順光の状態で撮影することができます。これを反対にしてしまうと逆光となり、せっかく手間ひまかけてお披露目した車両が綺麗に撮影できなくなってしまいます。
厄介な「影」の存在
また、車両に当たるのが太陽光であるため、車両に影がかかってしまうのも困ったところです。最も影になりやすいものが架線柱で、電車に供給する電線の柱が車両の前面にかかってしまうことがよくあります。人物であれば、タレントやモデルの顔に斑模様の影ができるようなもので、せっかくの綺麗な顔が台無しになってしまうのです。
順光の状態で、列車の先頭部に架線柱の影が落ちてしまった例。影によっては斑になっている(2018年12月、柴田東吾撮影)
さらに、夏場と冬場で太陽の高さが違うため、夏場は綺麗に撮影できるのに、冬になると近所の建物の影が車両に写り込んでしまい、車両が綺麗に撮影できないということもあります。この場合は時間帯を変えるか、影がかからない場所に車両を移動させる必要があります。
主催者も参加者の意見を次に生かしている
実のところ、コツさえ掴んでしまえば、良い状態での撮影は比較的楽にできます。新型車両のお披露目などで頻繁に撮影会を実施していると、基地内のこの場所に車両を置き、車両の周辺はこれだけ場所を開けて撮影場所を確保したうえ、何時から何時まで撮影する時間帯を設ける、といった具合に、パターン化が可能です。
しかし実際には、予期せぬハプニングを含め、会場での来場者の誘導は思ったようにいかないのが実情です。ひょっとしたら、撮影中の事故防止や、撮影会を滞りなく進めることに担当者が手一杯となってしまい、車両を綺麗に撮影してもらうことまで手が回らないのかもしれません。
ただ、撮影会では参加者へアンケートを実施する場合が多くあります。首都圏の大手私鉄では、その貴重な意見を集約し、次回以降の改善につなげていると話していました。