小林製薬(大阪市)の鼻用洗浄料「ケアナボン ひたし洗い液」(以下、ケアナボン)が、SNSなどで「アイボンの小林製薬がケアナボンを投入」「毛穴汚れは崩壊されてツルツルに」「使った後、鼻がツルツルになった」「即効性というより長期的かも」といった声が挙がるなど、注目を集めています。そこで、ケアナボンを開発した小林製薬・研究開発担当の山本航平さんとマーケティング担当の片桐百恵さんに発売に至るまでの経緯などについて聞きました。
社長は「面白い」と太鼓判も…
ケアナボンは、洗顔やクレンジングで落としきれない毛穴汚れを、肌を傷つけずに洗う鼻用の洗浄料です。洗浄料を入れた付属の専用カップを鼻に密着させ、カップをもんで水流をつくると鼻の毛穴汚れが洗えるようになっています。毎日使えるよう肌に優しい低刺激設計がなされていて、毛穴の黒ずみの元になる角栓汚れのデイリーケアにお勧めということです。
小林製薬の社員が、大浴場で鼻だけをゴシゴシと洗っている男性を見て、「毛穴はキレイになるが肌にはダメージが伴うため、洗顔料などで念入りに洗う以外の肌に優しい方法はないか」と模索したのが、ケアナボン誕生へのきっかけでした。
Q.当初は男性向け、女性向け、どちらを想定して起案したのでしょうか?
片桐さん「男女共にニーズはあると思っていましたが、どちらかといえば女性がメインターゲットになると想定していました。」
Q.なぜ鼻の毛穴汚れに着目したのでしょうか? おでこや頬の毛穴汚れも気になっている人はいると思います。
片桐さん「同社の調査で、特に『鼻』の『毛穴の汚れ』を気にしているというデータがあったことから、『あったらいいな』に応えられる製品を作りたいと思いました」
Q.起案・開発にあたり、社長および社内で賛否両論はありましたか。
山本さん「小林章浩社長は『面白いので進めよう』という反応でした。しかしながら、これまでにないユニークな製品ですので、『実現(開発)できるのか?』『本当に使ってもらえるのか?』といった声も少なからずありました。開発を進めていき、モニター評価でモノの良さがしっかりと評価され始めると、『これは世に出すべき商品だ』と社内も盛り上がり、応援してくれる声も次第に増えていったように感じます」
試作…洗浄料は500以上、カップは100以上 100人の鼻を測定し平均算出
角栓汚れに着目し肌への負担を抑える現在の洗浄料に至るまで、試作は 500 処方以上。鼻カップの試作も100個超。100 人の社員の鼻を測定し、平均値を鼻カップに採用するなど、試行錯誤を重ねて完成に至ったということです。
Q.洗浄料と鼻カップの制作、どちらが苦労されたのでしょうか。また、試行錯誤を重ねていく経緯の中で、どの時点で「製品化できる!」と思ったのでしょうか。きっかけや決定機があったら教えてください。
山本さん「開発に時間を要したのは洗浄液です。実は、ケアナボンの開発の前にある研究がされていたのですが、敏感肌用の洗顔料が『液体皮膚洗浄料(液体で肌を洗う技術)』開発の発端となっており、その洗浄研究成果があったからこそ『ひたして洗えば毛穴汚れが落ちそう』というケアナボンの発想につながりました。前身の研究から逆算すると6年以上もの開発期間がかかったことになります。
進捗が最も危ぶまれたのは鼻カップの形状でした。『鼻の穴を外に出す』という現在の鼻カップの形状にたどり着かなければ、その時点で開発中止になっていたと思います。その点で大きな転機となったのは『鼻カップの開発』かと思います。当初は医療用の酸素を吸入するカップを参考にして試作品を製作していましたが、液が鼻や目に入ったり、息を止めて洗うと苦しくて数秒しか洗えなかったり、社内のモニター評価で散々な結果になりました。鼻栓型付きのカップなどいろいろと検討しましたが、ふと『鼻の穴は洗わないから外に出せばいいのでは?』と気付き、ブレイクスルーできた結果、現在の形状にたどり着きました。息ができ、楽に洗えるようになったことで、鼻を洗浄する時間も長くなり、毛穴への効果もアップすることができました。モニター結果が大きく改善されたことで全社的に盛り上がり、一気に開発が加速しました」
鼻カップには「右」「左」「モミモミスポット」など、ユーザーが分かりやすく、使いやすい工夫が施されています。
Q.ユーザーが使いやすいようにするために、着目したポイントはあったのでしょうか。
山本さん「鼻の形が千差万別である中で、できるだけ安全に多くの方が使える形状を目指して設計しました。例えば、目の方に飛散しづらいようにカップの上側は特に密着するよう設計しています。使用中に薬液が多少こぼれてしまう前提で設計しておりますが、こぼれる際はできるだけ下側や横側から漏れるように工夫しています。また、目と鼻の距離が近い方でもお使いいただけるように上側の接触面積は極力少なくしています。カップの硬さについては、水流が生じやすく、かつ指が疲れないことを狙って設計しています。カップの底には自立するように小さな足も付けています。使用される際は、こぼれるぐらい揉んで洗っていただく方が良いので、お風呂場や洗面所でご使用いただくことをお勧めしております」
Q.業界初となる「ひたし洗いの仕方」を伝える説明書の作成にも苦労されたということですが、どのような点で苦労されたのか、詳しく教えてください。
片桐さん「当初『カップから液がこぼれてしまうので不具合ではないか』というご意見がありました。液がこぼれないように気を付けて洗うと水流が弱くなって効果が落ちてしまうので、逆にこぼれても良いので『ジャバジャバ洗ってください』という記載に変更しました。また、毛穴製品というと『一回でごっそり落とす』というイメージがありますが、ケアナボンは『やさしく洗って、毎日少しずつ落としていく』というコンセプトの製品です。しかし、残念ながら、そこが伝わらずに、1 回使って『効果がない』と思ってしまうお客様もいらっしゃいましたので、『1日最低でも30秒を、まずは1カ月毎日使ってください』というご説明もしております。
想定10倍ペースの売上げ 今後、どんな「〇〇ボン」が登場?
Q.アイボンに続くケアナボンとして、ネーミングセンスについても SNS を沸かせていますね。
片桐さん「『「アイボンのいとこ』などネーミングについて SNS で話題にしていただき、担当者で大変うれしく拝見しておりました。カップで洗浄する形式が似ていることから、弊社のアイボンの『ボン』を継承したネーミングにすることで、もしかしたらネーミングでも話題になるのではないかという話も出てはいたのですが、想定以上に話題となったので驚いております。また商品の売れ行きについても想定以上に好調で、あるドラッグストアでは想定の10倍ペースで売れていると聞いております」
Q.SNSでは「角栓が落ちるのか」という声が最も多くありました。角栓の除去に対しても効果はありそうですか?
山本さん「『ひたして洗うだけで落ちるの?』といった声が挙がっている点、承知しております。当処方については500パターンほど試作をし、自信を持って発売いたしましたのでぜひお試しいただきたいと感じております。ご注意いただきたい点としては、決して『一度に角栓がごっそり取れるものではない』ということ。肌負担を最優先に考えて開発しておりますので、最低でも毎日30秒のひたし洗いを続けていただきたいです。角栓の頑固さにもよりますが、2週間ほどで角栓が徐々にほぐれていき、角栓詰まりなどに変化を感じる方が多くいらっしゃいます。早めに効果を実感したい方は、朝晩1日2回ご使用いただくとより効果的です」
Q.最後に、今後、どんな「〇〇ボン」を発売したいなどの構想がありましたら教えてください。
片桐さん「『○○ボン』についてはまだ構想はございませんが、『ケアナボン』については『肌にも毛穴にもやさしい』という思いから生まれたブランドですので、肌のキメを乱すことなく毛穴ケアの新しい手段を提案し続けるブランドにしていきたいと考えております」
オトナンサー編集部